第4話 外より来るもの
◯注意事項
・今回はなんとなしに書いてる伏線回です。読まなくてもキャンペーン等には影響は出ない、幕間の物語。
・キャラはお借りしてますが、お借りしたキャラは話の後のほうになってからの登場となります。
・思い切り内輪ネタ。さぁ、嫌悪感のある人は迷わず戻るボタンをクリックしましょう。あまり面白い話でもないですしね。
◯登場人物
NPC
・ケイゼン[夢魔・男]
・ウェゲス[ナイトメア(?)・男]
PC
・ケイラーン・トレファーラ[ルーンフォーク・女]
・フェルドナルド[エルフ・男]
・イングリット[ルーンフォーク・女]
〈夢現の幻亭・集会所〉[tb:昼]
昼食の時刻が少し過ぎた頃。手頃な依頼があったものは店主に話を通して依頼の紹介先へと転移していき、無かったものは一息を吐いている店内の一角で、新品の剣を磨く少女が1人。
短く作られた刀身に、片手でも両手でも握れるように作られた柄。刀身は短いものの、それは確かにバスタードソードと呼ばれる類の剣だった。刃を鋭さを感じさせる光を返し、全長50cmと明らかに短いはずの剣でありながら、ずしりと重さを感じさせる。
「狭いところで振り回すことを考えると、こっちのほうが小回りきくから良いよねぇ」
どこかご満悦な様子で剣を見ながら、少女――ケイラーンはそうつぶやく。
-カラン……-
「んー? ……あ、いらっしゃい」
「おぅ、邪魔するぜ店主さんよ」
出入りを転移陣による転移でまかなっている夢現の幻亭の、めったに開いたことのない扉に付いた鈴が鳴り、1人の男が入ってくる。腰には剣を提げ、動きやすそうな服の要所要所に縫い付けられた硬化革、背中にはフード付きのマントという出で立ちの彼は、慣れた様子でカウンターの方まで歩いて行くと、席に座って店主であるケイゼンに食事を頼む。
ドアの鈴が鳴るのが珍しいため、ケイラーンもその男の方に目を向けていると、視線に気付いたのか彼が彼女の方へと振り返る。
「ん?」
「あ、どうも、こんにちは」
「あぁ、こんにちは。何か用か?」
首を傾げる男に、特に用事はないと答えるケイラーンだが、その手元にあるものに目を向けて彼が立ち上がる。
「それ、随分短い剣だな。ちょっと見せてもらってもいいか?」
「へ? 良いけど……」
机の方まで来てマジマジと剣を見るその顔には、楽しげな色が浮かぶ。
「へぇ! 刃は短くしてあるが、これバスタードソードだな!? 片手でも両手でも使えるから良いよなぁ、これ!」
「あ、分かるの?」
「まぁな。昔は通常のバスタードソードを振り回してたんだ。今はそれをベースにした別物使ってるけどよ」
どうしてこんな短くしてんだ? という質問に、狭所で使うには短いほうが取り回しが良いと答える。
興味深げに頷く彼の首に、ちらりとどこかで見た覚えのある聖印が跳ねるのを見とめて、神官さんなの? と彼女は問いかけると、彼の表情が引きつった。
「……あー。いや。神官じゃあねーんだわ。昔は熱心に信仰してたが、今はちょっと信仰を向けるにはな……」
「あー。聞いちゃいけない系のお話、かな?」
「できれば聞かねーでくれると嬉しいとこだな」
それに頷くと、ありがとよと言って男は安堵の息をつく。
「ところで嬢ちゃん、背中に槍を幾つか背負ってるってこたぁ、主装備は槍ってところじゃねえの?」
「そうだよー。でも、狭いところだと槍は振り回しにくくて……」
「だろうなぁ。じゃ、剣の扱いは慣れてないのか」
「だね。今度練習しようと思ってるよ」
ふむ、と顎に手を当てると、彼はこんこんと自分の剣を叩く。
「此処であって話したのも縁だ。どうだ? 食事が済んだ後なら、俺で良ければ扱い方を教えるが」
「……良いの?」
「おうよ。珍しいカスタマイズをしてるのを見せてもらった礼だ。飯が終わるまでは店の外で振って、剣の感覚に触れておくと良い」
「なら、お願いします。ファラリスさん以外の剣も見てみたいし」
「了解。あぁ、そういや名乗り遅れたな。俺は……ウェゲスとでも呼んでくれ」
「あ、わちきはケイラーンだよ」
互いに名乗りあったところで、料理ができたというケイゼンの声が男――ウェゲスにかかった。
〈夢現の幻亭・外〉[tb:昼]
上段からの振り下ろし。剣を引いて横薙ぎ。片手を離し、間髪入れずに突き。
刃を短くした分の重量比が変化しているからこその連続攻撃。槍による円よりも小さいが、速度で勝るその連撃を、目の前の男の剣は次々と弾き、流し、受け止める。
「おぉ、突きはエラく速えな。流石槍使いなだけはある」
「と、届く気がしないんだけど!?」
感嘆の声は上がるものの、まだまだ余裕な表情。対してケイラーンは既に息が上がり始めていた。
動いている量で見れば確かにこちらの方が多い。だが、それにも理由がある。
「まーだまだ槍の間合いで戦ってるぞー? 剣の間合いってのはな、もっと詰めるんだよ。特にそういう短い刃のはな」
ダンッ、と擬似的な地面を蹴って懐に飛び込まれる。剣による領域が消えた瞬間にはこうなのだ。慌てて剣を戻して振り上げられる剣を受け止めるが、ビリビリと手がしびれる。
「あと、防ぐときは谷を描くな。山を描け。自分から刃を逸らすんだ。はたき落とそうだなんて考えるな」
言われたとおりに剣を斜めに構える。直後、上段から降って来た刃が剣を沿うようにして逸れていった。
「そうだ。槍と違って剣の長さの大半は刃……つまりは金属だ。その分受け流しが出来る範囲が広い。覚えておくと便利だぞ」
「う、うん、分かった……」
「……ま。今回はここまでにしておこう。また機会があれば稽古の相手になるから、声かけてくれや。俺はちょっと向こうの方に用事があるんでな」
そう言うと、彼は店の外の領域へと歩き去っていく。それを見送り、ふらふらとケイラーンは店の中に戻るのだった。
〈夢現の幻亭・集会所〉[tb:昼]
「あれ、ケイラーンじゃないの。外で何やってたのよアンタ?」
「結構くたびれているようだけど、大丈夫かな?」
「んー、たまたま会った剣士さんに稽古つけてもらってたんだー。疲れたけど、得るものはあったかな。……あ、ケイゼンさん、カフェオレ頂戴」
「はいよー」
店の中に戻ると、青い髪のルーンフォーク――イングリットと、穏やかそうなエルフ――フェルドナルドがお茶をしているところだった。そこに混じるように席に座り、ケイラーンは大きく息を吐く。
剣士? とイングリットは怪訝そうな顔をし、フェルドナルドはおしぼりでケイラーンの顔を拭いてやる。
「剣士、ってどんな奴だったの? てか店の中に戻ってきてないじゃないそいつ」
「あ、なんだか店の外の方に用事があるって言ってたよ。で、どんな奴、ってええと……」
ふと、ケイラーンがフェルドナルドの方を見ると、ウェゲスがつけていたのと紋様が同じ聖印が目に入った。
「……あ、そうだ。ルーフェリア様の聖印つけてて、髪に隠れてたけど、頭に小さな角があったよ。神官じゃないって言ってたけど」
「ルーフェリア様の? 信徒の1人なのかな」
「頭に小さな角、ってそれナイトメアよね。他に特徴はなんか無かった?」
首を傾げるフェルドナルドをよそに、イングリットは警戒と心配の混じった声音で更に質問を重ねる。
「他の特徴……あっ」
少し考え込んでいたケイラーンだったが、何かを思い出して声を上げる。
「えっとね。両目が凄く綺麗な琥珀色してた! あんな目ってあるんだねー」
〈???〉[tb:夕]
「帰ったぞー」
「おかえりなさい。今日はどこまで行ってきたの?」
「ん、初代からの古馴染みに似た奴がやってる店まで」
「あぁ、彼のところね。食事は美味しかった?」
「まぁな。だが、食事よりも面白いものを見つけてきたぞ」
「あら、何かしら?」
「将来有望そうな……――みてぇな外見のルーンフォークだよ」
「……始末しなかったの?」
「なんとなくだが、役目については気づいてないんだろ。俺を見ても反応がなかったしな」
「もう、危ないことするわねぇ」
「ははは、大丈夫だって思ったのさ」
「根拠は?」
「不思議とダチにして後輩に似た雰囲気があった。だから大丈夫だろうって思ったのさ」
「なにそれ……」
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