第12話 【求めるもの】エピソード11

83. ののみの夢 クリスマスイブイブ 

   サンタ帽の愁。

夢の中の愁 「頑張った君にプレゼント・・・」

   と、宝石箱を開ける。上半身が人間で下半身が牛。

夢の中の愁 「さあ、背中に乗って・・・」

   ののみ、愁の首につかまって、背中に乗る。

   締め付けるののみ、苦しがる愁、ののみを振り落とそうと

   暴れる。必死につかまるののみ。


84. 愁の家 薄暗い玄関 クリスマスイブ 早朝 

   クリスマスリーフの飾られた玄関。荷物を担いで出ていく愁。


85. 愁の家 点描 クリスマスイブ 12月 高2 1回目

   廃材で作られたクリスマスツリーに飾り付けるののみと愁妹。

   クリスマスの御馳走をキッチンで作るののみ。


86. 同 居間 夕方

   居間のテーブルに料理やケーキを並べるののみ。

   るり子が来る。

ののみ「あっ、るり子さん(居た居た)、愁君知らない?」

るり子「出かけたよ」

    XXX

   愁に電話するののみ。

電話 「電源がはいってないか・・・」

   スマホを操作するののみ。

ののみ「GPSも駄目だ・・・健君に電話してみよ」

   電話するののみ。

健の声「チョッと行って来る・・・って言ってたよ」

ののみ「あっそ、ちょっと出かけたんだね・・」


87. 同 キッチン 点描 夜

   イブの音楽が流れるキッチン、洗い物をするののみ。

   余ったチキンにかじりつき、炭酸ジュースをがぶ飲みする

   ののみ。


88. 同 居間 翌日 朝 

   居間に来た愁父、ソファーにののみ。

愁父 「あぁ、久々、二日酔い・・・」

ののみ「あぁ!愁君、大学見学とか?」

愁父 「はっ(頭に響く)、聞いてない?、職人見習いで、ドイツ

   から来ている、ミハエルっているだろ・・・」

    XXX

   フラッシュ 作業場 

   職人達が材木加工作業している。

   金髪の外人と話している愁。

    XXX

愁父 「そのミハエルが、帰るんで、愁も一緒に行ったよ」

ののみ「一緒に行ったって・・・」

   ののみ、スマホを操作し、話しかける。

ののみ「ドイツって大学・・どこ?」

   スマホ画面を凝視するののみ。

ののみ「ちぇっ、あいつ・・・」

    XXX

   荷物を抱えるののみ。ソファーにるり子。

ののみ「るり子さん、私行ってくる」

るり子「どこへ?(お茶を飲みつつ)」

ののみ「ドイツって国!」

るり子「・・・パスポート持ってるのかい?」

   開けかけたドアをそっと閉め、居間に戻るののみ。

ののみ「・・・もらうよ、だから、これから市役所に寄ってくん

   だよ」

るり子「(せんべいを割りながら)そんなに早くもらえるのかね」

    XXX

   テーブルに顔をうずめるののみ。

ののみ「るり子さんの言うと通り、パスポート、すぐには貰え

   なかった・・・愁君」

   愁父、居間に来て。

愁父 「ののみちゃん、連絡先って言われても、住所読めないし、

   電話も通じないし・・・、そのうち連絡してくるよ」




89. 正月 お寺の賽銭箱の前 1月 高2 

   三が日の年賀客でにぎわう中で祈り続けるののみ。

   殺気づいていて、誰も近づかない。

   寺の外、ライトが、降る雪を輝かしている。


90. ドイツ郊外 古城 二週間後 1月 高2

   田園風景の中、走る車、森の中に吸い込まれる道。

   車から降りる3人の影。

ガイド「ここです・・」

   ののみとみみん、ガイドの手の方向の城を見上げる。

ののみ、みみん 「す、すごい・・・」

   石造りの古城が、そびえたっている。


91. 古城城内 大広間 

   執事に案内される、ののみとみみん。

   クラシカルな大きなテーブルに座る、ミハエル。

ミハエル「の、ののみ・・?」

   ののみ、ミハエルに詰め寄り、首根っこをつかむ。

ののみ「愁君どこ!」

ミハエル「行きましたで(苦しい)・・・」

    XXX

   フラッシュ 回想 霧の中の古城前 早朝

   荷物を背負って出発する愁。

    XXX

   ののみの携帯が響き渡る(ダークな着信音)。

   ポシェットからスマホを取り出すののみ

ののみ「(愁父)お父さん!、愁君が居ない!、もう出発し

   たって」

愁父の声「愁から連絡あったよ、ウィーンの日本料理店テングに

   いるって・・・」


92. 舞踏会 会場 ののみの妄想

   正装の愁と白いドレスのののみ、ワルツ、回る二人。


93. ウィーン 日本料理店「テング」 翌日

   高さの揃った建物が続く通り。

   車が到着する。ののみとみみんが飛び降りる。

   ののみとみみん、店内に入ると、愁が働いている。

   ののみ、愁に突進、頭突きをくらわす。

愁  「痛てて・・・」

    XXX

   店のテーブル、愁とののみ、みみん。

愁  「バックパッカーして、ここで働いて金貯めてて帰ろ

   うと・・・」

みみん「・・・(はぁ?)」

ののみ「帰りの飛行機代ないって・・・牛の一散」




94. 地元 駅 翌々日 1月 高2

   改札前。

   ののみとみみん、愁の腕をそれぞれ抱え、改札から出てくる。

ののみパパ 「お帰り、やぁ、おっきな、みやげだな」


95. ののみ家 その後

   食卓に豪華な食事が用意されている。

   猛烈に掻きこむ愁、見つめるののみパパ、ママ、みみん、

   妹とののみ。

愁  「日本料理店でも味微妙だった、この味付け懐かしい、

   うま・・・」

みみん「よかったよ、見つかって!、ののみったら、死霊に

   魂抜かれた岩、お岩のようだったんだから・・」

   ののみ、愁の顔を見つめる。

ののみ「生きてた、亡霊じゃないよね」


96. 愁の家 愁の部屋 その後

   机の椅子に愁、座布団に座るののみ。

愁  「ヨーロッパの家って、石だけで出来てるんだ、見たろ

   ミハエルの城」

ののみ「すごかったよね、重厚で濃厚な存在感」

愁  「(?)いろんな建物見たんだ。いい経験できた」

   スマホの画面、写真をめくる愁。

ののみ「私もヨーロッパ旅行出来ちゃった、今度は二人きりで

   ゆっくり行きたいね」

愁  「旅行代は、きっちりパパに返せよ」

ののみ「君もでしょ!」

   ののみの手をトリ、手のひらに、石を握らせる。

愁  「これミハエルの城で拾った石、もってきちゃた」

ののみ「なんだろ?」

   半透明で凸凹している石を光に透かして見るののみ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る