第7話 【あめとむち】エピソード6

36. 生徒昇降口前 夏休み中 8月 高2

   相談している貴と久美。

   (校舎締め切られた扉に反射する光)

久美 「三角関係は・・・健は玲奈に夢中でしょ、他は・・・」

   スマホを操作する久美。

久美 「ベストテンは、みんな彼女いるかぁ・・・」

貴  「俺は、駄目だから・・・」

久美 「(貴を見て)暴漢に襲われるのは?、愁の前で!」

貴  「俺は駄目だょ!、ボコボコにされる!、吉本じゃねんだ

   からさ、やわらかい棒でたたかれるのとは違うぜ・・・」

    XXX

誰かの声「誰か校庭で、倒れたって」


37. 同校庭 同時刻 8月 高2

   急いで校庭に行く久美と貴、ののみが倒れている

   愁と筒居、玲奈、サッカー選手達が囲んでいる

筒居 「熱中症じゃないか!」

   愁がののみを抱き起こそうとするが、ののみ息が荒く

   起きれない。

   筒居コーチがペットボトルを愁に渡す。

筒居 「脇に当てろ!それからボタン外して」

   愁はののみのシャツのボタンを胸元まで外して、扇ぐ。

   玲奈がペットボトルの蓋を外し愁に渡す。

愁  「ののみ!、飲めるか(ののみの口にペットボトルを

   もっていく)」

  (意識なく)飲めないののみ。

   愁、口に水を含み、ののみに口づけして飲ます。

   取り囲む選手ざわめく、女の子たちの悲鳴。

   (救急車)校庭にサイレンが鳴り響く。

    XXX

   救急車が到着し、担架に載せられるののみ、一緒に救急車に

   乗り込む愁。

救急隊員「君は?」

愁  「彼氏です」

   救急隊員一瞬考えるが、そのまま出発する。


38. 病院の病室(夕方) 8月 高2

   ベッドで横になり、点滴受けるののみ。

   いすに座って、ののみの手を握っている愁。

   周りに筒居、久美、貴と主治医。

    XXX

   飛び込んでくる、ののみママ(42)。

ののみママ 「大丈夫?ののみ(愁を押しのけて、ののみの手を

    取りいすに座る)」

主治医「軽い熱中症です、それと貧血気味ですね、睡眠は十分

   取れてますか?、今夜は念の為入院してください」

    XXX

   眠っているののみ、残っている愁とののみママ。

ののみママ「ののみ(見つめて)、頑張ってるよ、こんなに頑張る

   子になったんだね・・・」

ののみ「うう・・(うわ言)」

愁  「・・・」

ののみママ「愁君(いい男)・・・」

愁  「はい・・・」

   立っている愁の手を取り、見つめるののみママ

ののみママ「愁君のことが好きなのに、なかなか告白できないって、

   悩んでて、ネガティブで、ほんと心配してたのよ」

愁  「はい・・・」

ののみママ「一生懸命で、生き生きしてて、わが子ながら輝いて

   まぶしく見てたのよ、ありがとうね、愁君」

愁  「いいえ・・・」

   窓の外を見る、ののみママ。

   遠くの山々、高い雲

ののみママ「愁君と、ここにいると・・・なんか不思議」


39. ののみの家 玄関前 翌日 8月 高2

   花を持って、ののみの家に入る愁。

   隠れて後をつけてきた久美。

   同じく後をつけてきた菜穂に会う。

   驚いてでこをぶつけ、照れ笑いする二人。

二人  「あっ、どうも~」

    XXX

   しばらくして、ののみの家の玄関からバックをもって出て

   くる愁。

愁  「(家になかに)それじゃお大事に!」

    XXX

   とっさに隠れる久美と菜緒。

菜穂 「親にも気に入られた」

久美 「なかなかしっぽを出さないね」

    XXX

   回想 ののみの部屋 少し前

   二段ベッドで寝ているののみ。

   ののみママと愁。

ののみママ「ののみったら、小さい頃いつも拡大ルーペで、石の

   サンプルとか、博物館から持ってきた、砂とか、視ていた

   のよ、変わってるよね」

    XXX

   フラッシュバック 博物館 昔 黒板の文字、

   「キラキラを見つけよう!」

   砂を拡大鏡で見るののみ(小学生)と他の子供たちと指導員。 

    XXX

   ののみの机の上、薔薇が飾られてる。

愁  「この薔薇・・・」

ののみママ「ののみのおじいさんが育ててるのよ、珍しいわね、

   あげるなんて・・・」

   ののみの部屋の中を見渡す愁。

   女の子らしいモノの中に、数々の石達、そして、机の上に

   お弁当ノート(2冊)と日記帳、砂時計、

   「愁君」と書かれた石がある。

愁  「確かに変人だな」

   愁の石を、指でつつく愁。


40. 橋を渡るののみ 8月 高2


41. 愁の家 リビング~愁の部屋(後日) 8月 高2

   愁の家に招待されているののみ(白いワンピース)。

   愁父(48)、愁母、妹(12)と話をしている。

    XXX

   回想 ののみの部屋。

   いくつかの服が、ベッドに広がっている。

ののみ「清楚で、清潔感が大切・・・」

   と、スマホを見ながら、選んでいる。

    XXX

   リビングのソファーに座る、ののみと愁父。

ののみ「本当ですか?お父さん!私が愁君と結婚したら、カワイイ

   家建ててくれるんですか」

愁父 「棟梁なめんなよ!あっという間に建ててやるよ」

    XXX

   建築現場 点描

   愁父や職人が働いている、手伝っている愁。

    XXX

   愁の部屋の前廊下

   ののみを愁の部屋に案内する、美眸(12、愁妹)。

妹  「そこの部屋だよ、その向こうが私、そっちは物置部屋」

    XXX

   愁の部屋 愁とののみ。

   ベッドに座る愁、床の座布団に座るののみ。

愁  「この本(分厚い本を渡す)読んで、ストーリー聞かせて

   それと・・・」

ののみの声「部屋に入れてもらえる関係だなんて、親公認ってこと

   だね、て、この本、英文ですけど・・・」

    XXX

   ののみの妄想 愁の部屋

愁  「いつもありがとう、君のおかげで僕は本当に幸せだよ、

   好きだよ」

   ののみをベッドに押し倒し、顔を近づける愁

    XXX

愁  「古文のプリントやっといて、得意だろ、じゃ下にいるから、

   あっ、丸文字は駄目だょ!角文字で!終わったら、部屋の

   掃除」

    XXX

   プリントを机に広げたまま埃トリで、本棚を掃除するののみ。

ののみ「エッチな本とかあるのかな」

   神社仏閣城の本が並んでいる。

   壁には、城や古い建物の写真が飾られている。

ののみ「なんだこらゃ!」


42. ののみの部屋 夏の夜 夏休み 8月 高2

   愁の石と薔薇を見つめるののみ

ののみ「愁の本心は解らないままだなぁ・・私を好き?、迷惑なの

   かな?嫌われたくない・・・でも・・・」


43. ののみ家 キッチン 早朝 

   パジャマで、寝ぼけ気味に弁当を造ってるののみ。

ののみの声 「お世話も苦にならなくなってきたなぁ!・・・でも

   早起きが辛い(目が半分開いていない)・・・夏休みなのに

   毎日練習試合って、あのコーチ鬼なの?」


44. 同 ののみの部屋 夜 

   机で勉強するののみ(伸びをする)。

ののみ「はぁ!そうだ!思い切って行っちゃぉぅ、飛び込んじゃぉ、

   家政婦でもいい何でもいいからそばにいたい、だから、そう

   するの・・・家も近いし、その方が楽だし!、ついでに勉強

   も教えてもらっちゃお、いいよね、愁君」

   愁の石にキスをする

    XXX

   階段を勢いよく降りるののみ

ののみ「ママー!(叫ぶ)」


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