第6話 【貧乏神】エピソード5

30. 高校グラウンド(数日後、サッカーの試合) 7月 高2

   試合終了のホイッスル、グラウンドでがっくりする愁と

   選手たちと筒居。

筒居  「愁のミスからの失点が響いたな・・・」


31. 帰り道(夕方) 7月 高2

   愁の後ろ、よろよろ歩くののみ。

   手提げバックと愁のスポーツバックを肩から下げている。

   先に歩く愁から、少し遅れて、手の望遠鏡で愁の背中を

   覗いているののみ。


32. 河原(夕方) 7月 高2

   スポーツバックをののみから受け取り、置いて、そこに

   座る愁、バックの空いた所を叩く。

   バックに座るののみ。

   河原でボールで遊ぶ子ども達の声。

愁  「・・・(子供たちの方を向く)」

ののみ「負けちゃったね・・・」

愁  「観てただんろ!」

ののみ「うん」

愁  「応援してた?」

ののみ「もちろんだょ、体中のパワーを送ってたょ(腕を大きく

   広げる)」

愁  「それだ・・・、ミスした原因!」

    XXX

   回想 高校グラウンド 試合

   愁、ボールを蹴ろうとして一瞬判断を迷い、ボールを

   奪われる、そのまま相手チームが得点を決めてしまう。

    XXX

ののみ「・・・強すぎたかな?」

愁  「(急に立ち上がり)そう破壊的だょ!」

ののみ「・・・破壊って(微笑む)」

愁  「(ののみの顔を見て)うざいなぁ、なんで笑ってんだよ」

ののみ「だって、愁君の前ではいつも笑顔でいようって決めた

   から・・・」

愁  「・・・どっか行けよ」

   バックを引っ張っる愁、投げ出され転がるののみ。

   そのまま行ってしまう愁、立ち上がって、愁を追いかける

   ののみ、途中で転ける。

   靴が脱げて、水溜まりに落ちて濡れてしまう。

    XXX

   ののみを抱き起こして、足とかのゴミを払う愁。

   後ろを向いてしゃがむ。

愁  「ほら(背中で後ろ手を広げながら)」

   (半べそで)濡れた靴を持って、愁におんぶするののみ。

愁  「(苦しそうに)重いなあ」

ののみ「・・・重いね」

   ののみとバックを背負ってよろよろ歩く愁。

愁  「あのさ(後ろに向かって)、アスパラ・・・茎のとこ

   入れるな!先っぽはいいけど、茎のとこ嫌いなんだ」

ののみ「好き嫌いはダメでしょ」

愁  「お前だってピーマンときゅうりダメじゃん」

ののみ「・・・なんで知ってるの?」

愁  「あっ、女の子はみんな嫌いでしょ!・・大抵」

   愁にしがみ付くののみ、首を絞めるので苦しそうな愁。


33. 通学路 ハウス前~道路端 後日 夕方 7月 高2

   (夕焼け)歩く愁とののみ。

   道を曲がる愁。

ののみ「どこ行くの」

愁  「回り道」

ののみ「なんかあるの?」

愁  「気分転換・・・」

    XXX

   農業ハウスの前を歩く愁、トボトボ後を歩くののみ。

   愁振り返って・・。

愁  「なぁ、プレゼントあげようか」

ののみ「まさか?(目を閉じ)」

愁  「・・・」

   周りを気にしながら、ハウスに入っていく愁。

   ののみ、慌てて周りを警戒する。

    XXX

   薔薇の花を数輪もって愁が出てくる。

愁  「ほら逃げるぞ!」

   ののみの手を引っ張って、走り出す愁。

ののみ「待って、待ってよ、走れないよ」

   (ハウスの中に人影)

    XXX

   少し離れたところまで来た二人。

   荒い息遣いの二人

愁  「(はぁはぁ)キレイだろ・・・」

ののみ「(はぁはぁはぁ)?」

   青い薔薇をののみに差し出す。

愁  「これ!」

   愁の指から血が出ている。

ののみ「やだ、とげで(手を見回す)」

   愁の指を口に持ってきて、指を舐める。

   (血が止まってのをみて)

ののみ「傷テープ持ってるから」

   デイバックから絆創膏を取り出し、愁の指に巻くののみ。

愁  「実は・・・この薔薇・・・」

ののみ「私にあげたいって、思ったの?」

愁  「まあねぇ・・・破壊力を下げるアイテムとして」

ののみ「でもさ、泥棒はダメでしょ、育ててる人に悪いよ」

愁  「じゃ、謝るか?」

ののみ「家知ってるから、(謝り)行こう」

   ののみに付いて歩く愁。

愁  「・・・あれこっち?」


34. ある家の前 その後

愁  「ここって、お前ん家じゃ?」

ののみ「そうだよ、だってあのハウス私の家のだし、さあ謝って

   (腕組み)」

愁  「・・・薔薇を盗みました、ごめんなさい」

ののみ「好きな人にあげたのかい、じゃ仕方ないね、許しちゃる」

愁  「好きな・・・」


35. ののみの部屋 その夜

   小さな瓶に、さっきの薔薇が飾られている机。

   机の上で居眠りするののみ。

ののみ寝言「好きな人・・・」

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