かな漢字7:3の法則
お久しぶりなので、ちょっと真面目に小説執筆の技術論などを書いてみる。
わたしは書く人である。マグロが泳いでいないと死ぬように、私は書いていないと死ぬ。
ジェームズ・ブラウン風に表現するなら「Get Up (I Feel Like Being Like A) Writing Machine」といったところ。
なので、役に立つもの立たないもの、面白いものくだらないもの、お金になるものならないもの、何でもかんでもとにかく書き散らかしてきた。
大量に書いた結果として経験則でわかってきたことはいくつかあるが、定量的に説明できるわかりやすい法則がひとつある。それが【かな漢字7:3の法則】である。
文章を書く上で、どの言葉を漢字にして、どの言葉をかなで書くべきか。悩む人も多いのではないか。
すくなくとも私は悩んできたし、今この瞬間も「すくなくとも」は漢字にすべきだったろうか? と悩んでいる。
この悩みを解決に導く重要な指針が、かなと漢字の比率なのだ。
端的に言えば「文章内における漢字の比率は30%を超えると急激に読みにくくなる」ということである。
以下の3つの文章は、小説のワンシーンである。まったく同じ言葉を書き連ねており、かなで書くか漢字で書くかのみを変えている。
一目瞭然、ぜひ読んでみてほしい。
◎漢字過剰文
私が目覚めた時、身の周りでは多くの硬質な靴音が響いていた。咄嗟に自分が何処に居るのか分からず、顔を上げる。目の前をスーツ姿の男女が早足で行き交いながら、私に短く冷たい視線を投げ掛けている。鋭い頭痛と共に、私は自分が昨夜飲み過ぎて道端で眠り込んでしまった事を思い出した。
(134字、漢字比率42%)
◎漢字過少文
わたしが目ざめたとき、身のまわりではおおくの硬質な靴音が響いていた。とっさに自分がどこにいるのかわからず、顔をあげる。目のまえをスーツ姿の男女が早足で行きかいながら、わたしにみじかく冷たい視線を投げかけている。するどい頭痛とともに、わたしは自分が昨夜飲みすぎて道ばたで眠りこんでしまったことを思いだした。
(152字、漢字比率20%)
◎個人的な適正文
わたしが目ざめたとき、身のまわりでは多くの硬質な靴音が響いていた。とっさに自分がどこにいるのか分からず、顔を上げる。目の前をスーツ姿の男女が早足で行き交いながら、わたしに短く冷たい視線を投げかけている。鋭い頭痛とともに、わたしは自分が昨夜飲み過ぎて道ばたで眠りこんでしまったことを思いだした。
(147字、漢字比率27%)
漢字が多いと読みにくい。かといって少なくても読みにくい。
とくに、今は機械が漢字に変換してくれるので、ついつい漢字の比率が増えがちになる。
そこをうまいことコントロールして、30%弱になるようにするのがコツだ。
たとえば「私」はかなで書くほうが良い。小説では人称代名詞が頻出するので、これだけでもかなり漢字比率を下げられる。また、「私」の読みが「わたくし」「わたし」「あたし」など複数あるので、話者の個性をわかりやすく表現するためにも、その違いを書き分けることは重要になる。
「込む」という言葉も頻出するので「こむ」のほうがいい。
「咄嗟に」「確かに」「決して」といった副詞のたぐいも、かなで書くほうがいい。
むろん、最終的には書き手の好みの問題になるので絶対ではない。それでも【かな漢字7:3の法則】はほとんどの場合に有効である。ぜひ試してみてほしい。
それではみなさん、良い創作を!
素晴らしき哉、妄想 滝澤真実 @MasamiTakizawa
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