第2話 陽射し



「ここが大図書館……」

お白から東へ150歩ほど歩いたところに、アーチ型の建物があり、外側は大きなツタで覆われていました。お姫様と護衛の門番は、トンネルをくぐるかのように大図書館へ入っていきました。地面からは生い茂った雑草と、湿った土の臭いがしました。壁には天井までびっしりと本が整頓されています。トンネルのようなその場所の終点を見ようと2人は目を凝らしましたが、それは見えなくなるところまで続いているようでした。

門番が先を進んで歩いていると、壁の隙間から光が漏れているのがわかりました。どうやら大図書館の中を照らしている正体はこれだったのだと、門番は納得しました。昼間は太陽の光が、夜には月の光が。


「いっ……」

ふいに門番は転がっていた本に足をつまづかせて、転んでしまいました。膝をさすりながらその本を手に取ると、難しい文字が書かれていました。

「"ひと、の、イ……"?」

あまりの難しさに音をあげた門番がその本をお姫様に見せると、お姫様はなんともスラスラと読んでいきました。

「"人類の進化と衰退"」


本にはいろいろなことが書いてありました。

大昔、人々は戦争をして、何度も互いを傷つけ合ったこと。戦争は、多くの生物たちを巻き込み、大気を汚染。自然を破壊して、地球を散々荒らしたこと。それを見て怒った神さまが以前されたように3度目の罰を人間に与えたこと。神さまが人間に与えた罰は3つ。1つ、ノアの方舟。2つ、バベルの塔。3つ、モノクロの空……。

「この3つ目の罰って」

「僕らの世界そのものですね」

お姫様がページをめくると、そこにはそれぞれの罪についての詳しい記述がありました。


「"生きる者の生気を吸い取ってしまうほどの灰色の空。白黒の世界。そこに一切の温かさは無し。いつしかそれはモノクロの空と呼ばれるようになった。ーーーしかし、またもや神さまはリンゴの実を地上に置き去られた。モノクロの空が出現してからちょうど1000年経った頃に産まれてくる赤ん坊に虹色の呪いをかけたという。呪われた者は、その命をもってして世界に色を戻すことができるだろう。ーーーこの事実を知れば、呪われた者は命を狙われることだろう。しかし、それも意味は無いのだ。呪われた者が心から過ちを犯した人々を許さない限り、2度と世界に色は帰らないだろう。ーーー神さまは、今までも人間に自ずから選択させてきた。人の罪は人の血によって初めて償われる。そういう仕組みにしたいらしい。"」


ここまで聞くと、門番は口をぱくぱくさせながら言いました。

「つまり、あなたが」

「"呪われた者"」

そう一言吐き捨てると、お姫様はそそくさとお城へ帰っていきました。慌てて門番はその後を追いかけました。

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