第16話
路地を抜けて、先へと進んで行く。途中、木々やゴミが散乱しており活気のあってきれいな街の雰囲気とは打って変わり、どんよりとしている。
「街の外れがこんなことになっていたなんて」
セリナは、唖然として声を詰まらせる。
「誰もがいい暮らしをしている訳ではないからね。表立っては、見えてこない現実もある。ここに存在するように。だからこそガルカス軍が存在している要因にもなっている」
これが、裏の世界か。鼻をツンとさせる匂いが漂ってくる。
「ここらでは、見ない顔だな」
ボロボロの服を着た男が話しかけてくる。
「すまない。ガルカス軍のアジトを知らないか?」
キグナスはアジトの場所を詳しく知っている訳ではないようだ。
「もし知っていても、あんたらに言う義理はない」
どうやらアジトを知っているらしいが、向こうに利益がなければ教えてくれないみたいだ。
「私たちは、あなたたちを救いたいの」
セリナは自分の義務を果たせていなかった事を反省して、語気を弱くして言う。
「救うだと。あんた王女さんだな。何も救えてはいない。わかっていないんだよ。困っている人を王宮で預かり、一定期間訓練を行わせ野に放つ。それでその後どうなったか知っているか? 実戦経験が乏しい奴らはみんなクエスト中に死んじまった。 王女さんはその責任をとることができるのかい?」
困惑した表情を浮かべるセリナを余所に話続ける。
「就く仕事もなくて、お金を稼ぐことすらできやしない。遂には死に至るやつも出ている。結局あんたがやっていることは、自己満足にすぎないのさ」
彼女は一言も発することはできず、立ち尽くしている。
「俺はセリナのやっている事を正しいと思う。ただ、お金を稼ぐプロセスまで持っていかなった事が問題ではあるがしかしいくら何でも押し付けがましい言い方だな」
正直コイツの言い分には半分同意するところは、無くもないがセリナの全ての責任を押しつけているところがかんに障った
「なんだと。お前は王女さんの肩を持つのか!」
怒り狂った男がこちらに向けて突撃してくる。
「まぁまぁ」
割って入ったのはキグナスだった。
そして落ち着きを取り戻した男にこう提案を続けた。
「こうしないか?ガルカス軍のメンバー全員を俺たちセイント軍が雇う。そしたらお前たちが生活に苦しむことはもうあるまい」
「それはありがたいが、ボスが納得しなければ俺達は動けない」
「ボスの居場所を教えてくれ。俺たちが何とかする」
「すまない......ボスの名はギザル。この一本道を進んで行き突き当たりを左に曲がり右側の大きい建物だ。建物の前には(ガルカス軍本拠地)と書かれている看板がある」
「ありがとう、助かった」
俺達は、歩き始める。セリナはだいぶショックに受けてるように伺える。
「私のやっていた事は、無駄だったと言うの」
それはまるで自分自身に問いかけている様な、かすれた声で言う。
「気に過ぎてはいけない。行動することにこそ意味がある。していない奴に限って文句ばっかりはいっちょ前に言う輩はどこにでもいる。だから落ち込む必要はないんだよ」
元引きこもりの俺がいっても説得力に欠けているのは言われるまでもない。彼女の事を思うと言わざる終えない。
「ありがとう、二斗」
良かった。いつもの元気な姫様に戻っていく。笑顔は彼女に似合う、俺はそんなことをふと考えてしまう
「つきましたよ。二斗君。セリナ姫様」
ついにガルカス軍のボスのお出ましか。葉が生い茂っている扉をガタンと開ける。ほこりが舞い武器や防具やらがたくさん飾ってある。少し薄暗いな。
「ギザルはいるか?」
帰ってくる返事はない―その時、奥から一人の女性が歩いてくる。
「ギザル様なら、出かけております」
「いつ戻ってくる?」
俺は女性に問う。
「今日いっぱいは帰ってきません。お引取りを」
居ないのなら仕方ない。また日を改めて出直すとしようか。
「どこにいるのですか?」
キグナスはギザルの場所を聞き出そうと試みる。
「それは言えませんね。見知らぬ奴が着たら俺のことは何も話すなと硬く言いつけられてますので」
ボスだけあって、なかなか守りが堅いな。
「ここは、一旦引き返すほうがよさそうだな」
「そうですね」
「そうね」
「街で何か起きていなければいいのだが」
「そうだな」
キグナス、フラグを立てるんじゃない。街戻れば分かること。
「ありがとう。お姉さん」
女性の方にお礼を言いここを後にする。
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