第14話 平穏な日常③

 俺はセリナをおんぶして、宿に戻ることにした。宿は1泊2日にしていたためそのまま泊まることにした。


「あー楽しかったな」


 いっぱい食べてたくさん話して、身も心も満たされた。


「そうですね」


 キグナスも楽しそうにしていたから良かった。セリナをベッドにゆっくりと下ろす。


「明日からは働くぞ」

「はい。今日は疲れましたね。そろそろ寝ますか」

「そうだね、おやすみ」

「二斗君、お休み」

ーーー

 チュンチュンと小鳥の鳴き声を聞いて、目が覚める。昨日はお金を使いすぎてしまったかな。(今の所持金は5万GCまで減っていた)


 セリナはまだ寝ている。昨日飲みすぎたんだな。仕方ないな。


「おーい、セリナ起きろ」


 体を左右に揺らしながらもぞもぞしている。


「んんぅ。まだ寝ててもいいでしょう」


 何時だと思ってるんだ。時計の針は11時を指している。現世では、俺もこんな時間に起きていた訳なんだが。それとこれとは訳が違う。


「起きないんだったら......」


 窓を閉めているカーテンを広げる。神々しい程の暖かい光が部屋に入り込む。


「まぶしいな、もう。起きればいいんでしょ!」


 なんでそんなに機嫌悪いんだよ。寝起きは機嫌悪い人っているよな。起こしてと頼んでおきながら、「起きてよ!」と肩を揺らすと「ああん」って、しかめっ面するんだよな。頼まれたから起こしただけどってなる。今のこの状況とは違うのだが。やっと、起きたか。随分と時間がかかってしまった。彼女は目を擦りながら欠伸をしている。


 キグナスはと言うと、外での着替えを済ませ洗面台で髪を整えている。そのオールバックの髪はセットしていたんですね。毎日ご苦労様です。そんなねぎらいの言葉を俺はかけたくなったがやめておいた。多分彼にとっては日課であり当たり前の事をしているだけだから。


 さて、俺も着替えることにするか。キグナスと共に外で待つことに。


「セリナ。着替え終わったら外に来てくれよな」

「わかったわ」


----


「お待たせ」


 ようやく3人揃ったな。


「クエストを受けに行くか」


 向こうからいかにも、悪そうなやつががに股で歩いてくる。


「君、職業ニートなんだってね」


 柄の悪いチンピラにどうやら絡まれてしまったようだ。


「なんですか?クエスト受けに行くので暇じゃないんです」


 面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだ。丁重にお断りさせていただいた。セリナも便乗するように、


「そうよ。私たちお金を稼がないといけないの。それじゃあ」


 俺たちは何事もなかったのように通り過ぎる。


「王女さんよ、口の利き方が悪いみたいだな」


 チンピラの腕にセリナは吸い込まれるようにして、俺の隣から姿を消す。


「きゃあ」

「セリナ!」


 一体何者だ。それよりセリナを助けなければ。


「お前、いったい何者だ?」


 落ち着け冷静にならないと。呼吸が、整わず心臓がバクバクと脈を打つ。


「俺はルナファスト。革命軍の一人だ」


 革命軍だと。姫を人質に取る気ではないのか。


「革命軍?セリナを離せ!」

「悪いな。その要求は呑めない。こいつの命は俺が預かっている。生かすも殺すも気分次第だがな。お前、そこから一歩でも動いてみろ。姫様の命はないと思え。ヒャヒャヒャ」


 サバイバルナイフをセリナの首元に突き付ける。こいついかれてやがる。動くにも動けないどうすればいいんだ。


空間移動テレポテーション


 キグナスは、ルナファストの背後へと回り込む。


「爪が甘いね、ルナファスト君」

「お.....おめぇ生きてたのか」


 ルナファストが、やけに怯えている様に見えた。


「バイバイ。冷気刃斬フリーズブラスト


 ルナファストの背中には無数の氷の破片が突き刺さる。倒れた男の回りには真っ赤な血が流れている。


「セリナ姫、大丈夫だったかい」

「はい。キグナスさん」

「二斗は、本当に役に立たないわね」


 俺はただ見ていることしかできなかった。悔しさが込み上げてくる。


「ごめん」


 謝ることしかできなかった。自分の事が初めて嫌いになりそうだ。


「それより、早く手当をしてあげないと」


 襲ってきた相手とはいえ街の住人の一人だから救うのか。


「その必要はない。こいつはもう既に死んでいる」


 この威圧的な雰囲気は一体。飲み込まれてしまいそうな感じが伝わってくる。


「キグナスさん.....」


 セリナは何故か納得してしまう。

俺はキグナスが不気味に見えて仕方が無かった。

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