第12話 平穏な日常①


  街へと戻ってきた俺たち。かと言って王宮に戻るわけにも行かないし。考えた挙句宿を探すことにした。


「キグナスは、これからどうする?」

「私は、宿を見つけて一服する予定だ。これからも同行させてもらうよ」

「クエストはもう終わったぞ」


 ついてきてもらうのは、ありがたいが向うにメリットがある様には思えない。


「前も話したとおもうけど、君達に興味があるんだ。一緒に居させてもらうよ」


そこまで言われては仕方ない。


「セリナは、良いのか?」

「私も構わないわ。二斗と2人きりなんて不安で仕方ないのよ」


 俺がセリナに何か変な事をするとでも—いや違うか。弱いし役に立たないからということか。落ち着け俺。イライラしてはいけない。自分もの弱さを肯定出来ない悪い癖だ。


「宿を探そうよ」


 宿を探しに街を歩き回る。


「私気になってたんですけど、キグナスさんって何者なんですか?」


  実の所俺も気になっていたところだ。キグナスからは、何も語ってはくれないからな。


「私は...裏の人間ともで言っておこうか。グランド共和国で陰で支えている。セイント軍のボスさ」


セイント軍...裏で支えている?ますます分からなくなってきた。


「え、あのセイント軍のボスだったのですか」


セリナはセイント軍の事を知っているみたいだ。


「んで、セイント軍は具体的に何をするところなんだ?」

「まぁ一言で言うのであれば、治安維持をしている。君の世界にもいなかったか?」


 警察とかが存在しているが。


「いない事はないですが、表立って活動しているので」

「そっか、いるのであれば大体イメージは付くだろう」

「はぁ」


 強いて言うのであればこの町の警察というところだろう。

ーー

  宿らしいところ発見!hotelと書かれた看板が立ててある家が見えた。ここに泊まる事にしょう。


「おーいみんな、ここに泊まろう」

「ええ。構わないわ」


彼女はこくりと頷いた。


「 はい、私も良いですよ」

「じゃあ、決まりだな」


 宿に入ることになった。中は整備されており、綺麗な室内空間だった。


「3人泊まりたいんだけど、空いてますか?」

「一部屋なら空いてるんだけどどうするかね」


キグナスはともかく、セリナは女の子だし相部屋っていうのはまずいだろう。


「セリナは、大丈夫?」

「嫌だけど、この際仕方ないわ。ただし......」


上半身をかがめるようにし俺を睨み付ける。


「私が着替える時は、外に出て行ってもらうわ。もし覗いたりでもして見なさい。その時は分かるわよね。もちろんキグナスさんもですからね」


 俺ってそんなに信用がないやつなのか。そりゃぁ、健全な男であれば女の子の着替えを見てみたいものだろ普通。俺とキグナスに対する対応が全く違うのだが。


 何はともあれ、宿に泊まる事が出来るみたいだ。


「じゃあ、3人で」

「1万GCね。」


 支払いを済ませて、部屋へと向かう。


「はぁ、疲れたわ」


 部屋に着くやいなや、大きくため息がこぼれる。

 お前ほとんど何もやってないだろ。何仕事終わりのおっさんみたいなこと言ってるんだよ。


「お前、離れたところで見てただけだろ」

「何いってるの。回復専門なんだから普通でしょ」


(こいつ)俺の努力も知らないで。


「まぁまぁ。2人ともケンカは良くない。3人でクエストをこなした、それで良いんじゃない」


  キグナスが止めに入ったお陰で、喧嘩にまで発展することはなかった。


「そうだな」


  荷物を置いて、風呂場へと向かう。


「さて風呂でも入るか」

「私も行くわ」

「私は後からで良い」

「そっか。キグナス部屋の鍵を渡しておくよ」

「ありがとう」


 男湯と女湯に分かれているので、混浴は無さそうだ。


「二斗、覗いたら殺すわ」


 こっわ。王女さんこっわ。あれは人を殺っている目をしてますね〜。いや知らないんだけどね。


「分かってるよ、気にし過ぎだよ」

「わかれば良いのよ」


  なんか、こいつと入るとやけに疲れるなぁ。俺のストレスがマッハな勢いだ。


 俺たちは別れてそれぞれ入る。

 あー気持ち良いなぁ。仕事終わりの風呂はこんなに気持ちが良いものなんだな。現世では味わえなかった感覚が味わえた気がする。


「二斗ーいる?」


木柵の向こうから声が聞こえる。


「ああ、何か用か?」

「なんていうかさっきは言いすぎたわ。あなたのおとり作戦が無ければ今私たちはここにいないわ。そのあごめんなさい」


 表情を窺うことはできないが、まさかあの王女さんが謝るとはな。以外だった。


「俺もそんなに気にしていないから」

「そう。よかった」


 なんだろう。すごく今いい雰囲気なきがするのは俺だけだろうか。


「セリナ、もしよかったら俺と友達になってくれないか?」

「......はぁ?」


 冷たい声が聞こえてくる。つい調子に乗って変なこと聞いちまった。訂正しなければ。


「俺、どうかしてたみたいだ。ごめん忘れてくれ」

「そう」


 友達になるのはいったいいつになるのやら。


ーーー


「キグナス、お待たせ」

「ああ、別に構えわないよ」


 ベッドで寝転がって休んでいたみたいだ。

 キグナスも風呂に入り、3人揃ったところで俺達は眠りに着く。


「キグナス、セリナおやすみ」

「二斗君、おやすみ」

「二斗、おやすみ」


 今日は、いろいろな事があったな。何はともあれ、こうして3人が無事で帰ってきたことは奇跡に近い。

 神様ありがとう。

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