第11話 ジルクニス討伐③

 まともにやりあったところで、おそらく勝ち目はない。俺がおとりになる間に、キグナスが瞬間移動してあいつの背後に回りこむ。これしかない。我ながら名案ではないか。

 俺は、二人に作戦の内容を伝える。


「二斗、大丈夫なの」


 セリナは心配そうにこちらを見つめる。


「大丈夫だよ。それに俺にできるのはこれくらいだから」


 強い技とか使える訳ではないからおとりになるのが一番の仕事だ。無能は無能なりにチームの和を乱さず自分をいかに殺せるかが肝であり使命である。


「引き付けた後はキグナスに任せる」

「りょうかいした」


ーー


 俺は、普段使っていないだろう筋肉を使い走り抜ける。ほとばしった全身の筋肉が悲鳴をあげる。ニートでも、運動はしてないといけないよ。


「ジルクニス! 俺が相手だ。うおおおおおおお」

「ふっ。でしゃばりおって。まずはお前から狩らせてもらう」


 まがまがしい巨体が急降下を始め、こちらへと距離を詰めてくる―かかった。人間よりは賢くないみたいで冷や汗もんだぜ。


「今だ、キグナス」

「おう!」


 杖を持ち詠唱する。キグナスの周りには無数の白い泡が浮き出る。魔法を使う準備中みたいだ。


「空間移動(テレポテーション)!」


 キグナスは、ジルクニスの背後へと一瞬で回り込む。


「冷気刃斬(フリーズバースト)」


 無数の氷の結晶がジルクニスの背後から襲い掛かる。巨体に突き刺さり赤い血がダラダラと垂れていく。


「ぐおおおお、おのれ。ユルサンゾ」


 尻尾を上へと振りかざしている。まずいこのままでは彼が危ない。


「でやぁ」


 俺の剣は、ジルクニスの目に刺さる。やったこれでまともに動くことは出来まい。弱っている今ならできるかもしれない。


「キグナス、次元閉鎖(ロックド・ディメンション)だ」

「でも、あの技は効かないはず」

「弱っている今なら効くかもしれない」


 確証はないが、賭けるしかないっ。


「わかった。次元閉鎖(ロックド・ディメンション)」


 ジルクニスは、別次元へと吸い込まれていく。


「おのれ、ニンゲンども。次会う時はただでは済まさんぞ!」


 捨て台詞を吐き捨てたドラゴンはブラックホールへと姿を消した。

俺達はこうしてジルクニスの討伐を達成したのだった。


ーー


「冒険者のみなさん。本当にありがとうございました。これは、お礼の気持ちです、受け取ってください」


 渡されたのは、15万GCの入った袋だった。


「こんなに受け取ることはできません。10万GCで結構です」


 報酬を余分にもらうことに後ろめたさを感じ言う。


「いえいえ、いいんです。受け取ってください」


 一歩も引かない彼女をみて、受け取ることにした。


「それでは、遠慮なくいただきます」

「感謝する」

「ありがとね」


 感謝の気持ちを伝えて洞窟を後にする。


「これからどうする」

「街にかえりましょ」

「そうだな」 


 クエストを済ませた俺達は、街に戻ることにした。

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