第10話 ジルクニス討伐②

地図どおりに歩いていくと、山に穴の空いた洞窟にたどり着いた。


「ここで、あっているのか。キグナス?」

「地図を見る限り、ここで間違いは内容だな」

「とりあえず中に入ってみようか」


キグナスを先頭に、俺とセリナは後を追う形で入ることに。


---


 洞窟の中は、壁にたいまつが掲げてあるものの数が少ないため薄暗い。歪な形をしていることから、依頼主が掘ったものと思われる。


「きゃっ」


 後ろから、セリナの悲鳴が聞こえた。


「セリナ、大丈夫か?」


 どうやら、ここにはコウモリが潜んでいるらしく俺たちのことに驚いて、飛び立ったのだろう。


「ええ、いきなり黒い物体が飛んできたから驚いただけよ」


 セリナは落ち着きを取り戻す。

 奥に進んでいくと、依頼主の家だろうか。頑丈な扉が見えた。


「飛竜討伐クエストで来ました。誰か居ませんか?」


 扉を叩いて、誰かいないか確かめる。

 がたがたと音を立てて、扉が開けられる。


「待っていました、さぁこちらへ」


 眼鏡をかけた若い女性が、顔を出す。


「おじゃまします」


 俺たちは家の中に入ることにした。


「依頼の前に一つお聞きしたいことがあるのですが」


 キグナスが、先陣を切って問う。


「はい、なんでしょう?」

「それでは.......貴方は一人で住んでいるのですか?」

「ええ」

「ではもう一つ伺います。 どうしてここに住もうと思ったのですか?」


 俺も気になっていたことを聞いてくれた。街から外れたとこに住めば生活もしずらいはず。


「それはですね……元々は街に住んでいたのですが、農薬の開発をしている時に薬品が爆発しまして家が全焼してしまったんです。それで、王様からのお願いもありまして、ここに住んでくれといわれ、それから、ずっと住んでいるんです。

ここなら、燃えたとしても街の人に迷惑をかけることもありませんから」


 科学者ということでいいのだろうか。一人で町の人のために研究をしているのか。少し気の毒な気もする。


「私の話はここまでにして、依頼の件について説明しますね。この山マウントギガースの裏には、オーリズ森林という森があります。そこに潜んでいる飛竜を討伐して欲しいのです」


 マウントギガース・オーリズ森林。初めて聞く名前だな。おぼえておいて損はないはず。頭の記憶の片隅に置いておくことにした。


「わかりました。早速向かいます」


---

地図をたびたび広げながら進んでいく。

 こうして、無事オーリズ森林へとたどり着いた。


「着いたな」


 これから、俺達は飛竜と戦うことになる。覚悟は決めている。が体の震えが止まらない。


「どこから、襲ってくるか分からない。慎重に行動しよう」

「そうね」


 二人は落ち着いている。二人の様子を見て、少し心が落ち着いた。

 一瞬木々が揺れたかと思うと、空高くなにかが上がった。


 黒い翼に、漆黒の瞳。ごつごつとした身体。こいつが、ジルクニスなのか。


「俺の眠りを妨げるとは。久しいな人間ども。また俺の餌食にされたいのか」


 竜が喋っているだと。どすの利いた声が空から反響して聞こえる。


「おい、ジルクニス。作物を荒らすのはやめろ。こまっているひとがいるんだ!」

「人間如きが、俺に指図だと。久しぶりに面白い奴にあったな。俺に指図するとどうなるかお前らは身をもってしるがいい」


 ジルクニスの口には、赤い炎が見える。ゲームをやっていた俺には分かる。まずい、来るっ


「みんな、避けろ!」

飛竜の吐いた炎はあっという間に森全域に広がっていく。

 数秒で炎が森を焼き尽くした。たちまち森は火の海へと化した。木々の燃えカスが散乱しており、耐えきれなくなり倒れてくる木がたくさんある。


「みんな無事か」


 二人の安否を確認する。


「私は、大丈夫。でもキグナスが……」

 キグナスは倒れた木の下敷きになっており身動きがとれない。脚を思い切り挟み込んでしまっている。


「キグナス、待ってろ今助ける。」


 俺は剣で倒れた木を切る。キグナスの脚に細心の注意を払って。


「セリナ、回復魔法を」


「ええ、わかったわ。超級回復グレイテストヒール!」


 純白色の光がキグナスを全身から包み込む。見る見るうちに怪我が治っていく。


「セリナ、やるなぁ」

「当然だわ、私はクイーンですもの」


クイーンはすべての回復魔法を使える。援護職としては右に出る者は居ない。


「ここにいると危険だ。森の外に出よう」


 一目散に走り回り飛竜の近くからは逃れる事ができた。


「さて、ここからどうする」


 空っぽの頭をフル回転させて考える。俺たちがジルクニスにどう勝つのかを。

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