第8話 謎の男
だいぶ、この生活にも慣れてきたようだ。朝日を浴びて一日が始まる。
セリナはおきてるかな。
「セリナ、おはよう」
少し眠たそうなのか、目を擦りながら答える。朝起きるのは苦手なのだろうか。
「お、おはよう二斗」
俺達は、王様に挨拶にいく。今日から俺とセリナは二人で行動することになるとはな。
神様いや、異世界の神様ありがとう。通じているか分からないが天井をを見上げ、感謝する。
「王様、いって参ります」
「父上、行ってきます」
「気をつけてな。セリナ、しっかり記録をとるんじゃぞ」
「わかってますわ、父上」
「ちょっと、気の抜けているところがあるから心配じゃなぁ」
セリナって、天然なのか。それも見てみたい。かわいいだろうな。
王宮を後にし、クエスト受付へと向かう。ここに帰ってくることはないんだな。居心地が良かったので、もう少し長居したかったものだ。
ーー
クエスト受付所が何か騒がしい。殺伐とした様子だ。
「俺のお金を盗んだ奴はどいつだ!」
大柄の男が、怒りを露わにしている。近くにいるのは仲間だろうか。彼の怒りを静めようとしている。しかし仲間の声をきこえてないだろうか。仲間の方もみるような、しぐさは見せない。ニートの生活の経験上これはやばいと俺の脳内に直接よびかける。
「まぁまぁ、お兄さん落ち着きなさいよ」
長い紫色の髪に、背中に杖を着けている何者かが割って入る。
「あ、なんだお前。俺はなお金を盗んだ奴がこの中にいるからさがしているだけだ。お前が盗んだのか」
どうやら男の勘に障ったようだ。むやみに声をかけるべきではないな。かわいそうに。でも助けるぎりはないからな。大柄の男は殴りにかかる。それは一瞬の出来事だった。杖を手にしたかと思うと紫色の髪の男が姿を消し大柄の男の背後に着けたかと思うと杖で一振りする。男の脳天をガツンと叩く。大柄の男はうつ伏せになり倒れていた。
「みなさん、お騒がせてしてすまなかったね。私は、キグナスと申すものです。
以後お見知りおきを」
軽くお辞儀をする。
誰も事態を把握できていないのか、騒然と立ち動くものは観られない。悲鳴やら奇声やらが飛び交っており、クエスト受付はパニック状態になっていた。
「二斗ここは一旦外に出た方がいいわ。あの男何者かは分からないけれどかかわらない方がよさそうだわ」
セリナの判断は正しいと思う。俺もあの人種にはかかわりたくない。見た目とは裏腹にすごい凶悪な奴なのかもしれない。現世でのトラウマが蘇りそうだった。
「ああ、そうだな」
厄介事になってからで遅い、俺達は隙を見て外に出ることに。
「待ちなさい、君たち」
声の主を探す―さっきのやばい奴だった。どうしよう、俺の体中は汗がだらだらと垂れていた。なんとか穏便に済ませる方法はないだろうか。
「何でひょうか?」
平然を装い答えるが、声は上ずっている。
「話がある」
話ってなんだ。俺はこの人を見たことがないし知らない。話をしようと言ってきたからの物理で殴る作戦なのか。たまったもんじゃない。
「セリナは、関係ないだろ。俺だけでいいか?」
彼女だけでも救わなければ。女の子を助ける。それが男の役目だと親父から教わった。
「悪いね、君たち二人に話があるんだ」
俺だけって訳にはいかないか。彼女とアイコンタクトを取る。
「私なら、大丈夫よ」
肩を震わせ答える。
「手短に頼む」
「君たちに危害を加えたい訳ではない。こっちにきてくれるか?」
どうも信じがたい。おそるおそる男の方へと向かう。
「やっぱり」
目をきらきらさせて、こちらを見つめる。
「君が、職業ニートの二斗君だね。となりにいるのは、セリナ王女様ですね」
「なぜ、俺の名前を知っている?」
「裏では君の名前は有名さ。なにせ街の中で君しかその職業になっていないからね。君に興味がある。私も一緒に同行させてくれないか?」
さっきの怖い雰囲気とは打って変わり。子供の様に無邪気にはしゃいでいる。
「仕方ない、いいですよ」
「二斗、この人大丈夫なの?」
「PTは多いに越したことはない。それにさっきの戦闘を見ただろ。こいつは只者じゃない」
こんなに強い人が入ってくれるのは心強いしこちらとしても助かる。
お互いに自己紹介を交わしたところで、本題に入る。
「キグナスさん。話というのは」
「キグナスと呼んでくれて構わない。このクエストを一緒に受けて欲しい」
ポケットからぼろぼろになった紙を取り出す。
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飛竜ジルクニス討伐
難易度:激ムズ
内容;飛竜のおかげで、私の生活が苦しい。作物を荒らされて大変なんだ。
俺こそはという冒険者にお願いしたい。報酬はたっぷりと用意します。ただし、飛竜に食われても責任は取りかねます。
報酬;10万GC
地図;×××××××
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10万だと。これは稼ぐのにはもってこいのクエストだな。死ぬのは嫌だけどな。
「協力するよ。ちょうどお金にも困っていたところだ」
キグナスと握手を交わす。
「ちょっと、私はまだいいとは一言もいってないわよ」
納得していない、彼女は声を尖らせ言う。
「お金に困っているのは事実。受けておいた方がいいんじゃないか」
セリナに諭すように促す。
「はぁ、わかったわ」
「じゃあ、決まりだな。キグナス道案内を頼む」
「ああ、任せてくれ」
こうして、最弱の俺と回復しかできない王女さん、謎の力を持つキグナスの3人で行動することに。
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