第7話 王女と街探索③

 俺達は、武器屋にたどり着く。ガラス越しから見えるのは、純金で出来た剣や槍弓短刀等が一際目立っている。値札がないためいくするかは計り知れないが高いのは確かだろう。


「いらっしゃい!」


 元気のいい、おっちゃんがこちらを見るなり吐き捨てるように言う。商売用語って感じがして俺は好まない。お店の中は至ってシンプルな作りでカウンターの前にはショーケースがあり、たくさんの武器がある。


「あの、お店に入る前に見えた展示してある金の武器は売り物ですか?」

「あー、あれか。あれは客引きの物だからね。悪いけど売りものではないな」

「そうですか」


 売り物だったら、いくらするか知りたかった。


「武器を買いにきました。品物を見せてください」


おっちゃんは、手を差し出すと。


「その前にお前さんのステータスを見せてもらえるか?」


 俺は、ステータスの書かれた紙をおっちゃんに渡す。


「んー。力、速さ、体力供に一か……」


 困ったご様子のおっちゃんは唸りながら、答える。


「お前さんに合う武器はあまりない様だな」

「どういうことですか?」


 武器を付けるのに、能力が関係しているんだろうか。


「それはな。ステータスに応じて、着けれる装備は決まっている。無論レベルを上げればつけれる装備も増える物だがな」


 困った顔をして答える。


「レベルをあげればいいんですか。なら、簡単ですよ。まだこちらの世界に入ってきて日は浅いですし。レベルなんかすぐ上がりますよ」


 なんだ、そんなことか。店主の不安をそっちのけで、俺は安堵の表情を見せる。


「そのことなんだが……」


 言葉を詰まらせつつ話す。


「お前さんの職業は、ニートだろ。レベルというのが存在しない。だから、木でできた物しか着けれない」


 (嘘だろ、つまりこれ以上は俺のステータスは上がらないということか。なんと絶望的状況だろうか)

 俺の沈黙を絶つかの様に、セリナは話し始める。


「よかったね。二斗は、現時点で最強なんだよ」


 レベルが、上がらないという点ではあながち間違っていない。だが俺はどうにも納得がいかない。


「ほら、早く買い物を済ませましょう。」


 そういうと、彼女は、木でできた剣を取りお店のカウンターへと向かう。


「500GCだな。まいどあり」

「ちょっと、二斗何放心してるの。さっさといきましょ」

「お、おまえなぁ少しは気遣ってくれてもいいんじゃないか」

「何を気遣って言うの。意味が分からないわ」


 あきれた表情を見せる。少しでも期待した俺が浅はかだった。


「ああ、何でもない。次は防具だな」


 そういい武器屋を後にする。


ーー

 しばらく、歩いただろうか。防具屋に着いた。

 防具屋では、これまた木で出来た鎧やらを買うことに。


「全部で1500GCです」


 残りの所持金は3000GCか。装備を一式揃えるのに、けっこうなお金がかかるのな。

 セリナはお店の周りをぐるぐるするも、何か買おうとはしない。


「セリナは、何も買わないのか?」

「私は、自分の部屋に装備があるから必要ないわ。それに、父上がたくさん買ってくるから、困らないわ」


 国王の娘ともあれば当然のことなのかもしれない。俺自身あまり驚かなかった。


「これで揃ったわね、陽も沈んできたことだし王宮へもどりましょ」


 気づけば、とっくに夜になっていた。街には街灯が灯り、幻想的な風景を見せている。


ーー

「セリナ、二斗よ。帰ってきたか」


 王様は、待ちくたびれたといわんばかりの顔で言う。


「はい、父上。クエストをしていたこともあり遅くなりました」

「構わんよ、セリナよこれからお前は二斗と共に行動する事を命じる」


 突拍子もない言葉が連なるように聞こえた。ふと、彼女の様子を伺う。

 凛とした表情をしていて、焦っているようではない。


「なぜですか? 父上」


 話がうまく噛み合っていない様に思われる。王様は何をお考えになっているのだえおうか。さっぱり分からない。


「それはな。二斗の職業はニートであろう。珍しい職業でな。お前には是非一緒に行動して記録をとって欲しい」


 困惑ぎみの彼女は口を開ける。


「わかりました、父上の頼みですもの」


 あまり乗り気ではないようだ。まぁそうだよな、会ってまだ一日しか経っていないそれに何処の馬の骨とも分からない奴と行動を共にするのだから。


「セリナ、嫌じゃないの?」

「仕方ないわ」


 深いため息を吐いた。嫌々ながらも妥協してくれている辺りを見ると、どうも

やるせない気持ちになってしまう。


「明日から......よろしくね」


発する声にはいつもの元気さがない。


「ああ」


 俺たちとの関係がわるくなったような、そんな気がした。俺とセリナは別れ各々自室へと向かった。

 (俺はセリナに助けってもらってばかりだ。今度はおれがあいつを助ける番なんだ。)俺はそう決心してベッドに横になり眠りについた。

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