第5話 王女と街探索①

「いつまで寝てるの、早く起きなさい」


 扉越しに、セリナさんの声が聞こえる。


「ごめん、すぐ支度するよ!」


 どうやら、起きるのが遅かったみたいだ。(ニートのしすぎだったから仕方ない)と自分に言い聞かせながら荷物をまとめる。


「それじゃ、父上のとこにいくわよ」


 王様は、玄関の前で待ってくださっていたようだ。


「待たせてしまい、すみませんでした」


「いや、こちらもいってなかったからね。そんなに気にすることはないぞ」


 お気に入りの髭を触る。何年もかけて蓄えたのだろうか。


「それでだな。昨日言っていた紋章についてなのだが、私にしか紋章をつけることができないのだ。二斗よ。右腕をこちらに」


 紋章がないと、民として認められないんだったな。指示通りに右腕を見せる。


「((二斗))汝を、グランド王国の民としてここに誓う!」


 王様の周りには、魔方陣が描かれており俺の右腕に手をかざす。強い光がぱっと、広がる。


「まぶしっ」


 俺はおどろいて、目を瞑ってしまった。


「二斗、目を開けても大丈夫よ」


 セリナさんの声で、少しずつ目を開け視界を確認する。よかった。失明していなかったみたいだ。俺の右腕には、くっきりと鳳凰の描かれた紋章があった。


「二斗よ。君は今から我々の国の民となった。これからよろしく頼むぞ」

「ありがとうございます!王様」


 感謝の意を述べる


「それでは、父上言って参ります」

「セリナよ、気をつけて行ってくるのだぞ」


俺たちは、王宮をでて街を回ることに。


ーー


「セリナさん、今日はどこに行くの?」


 具体的なことは、何も聞かせれていないので、聞いてみる。


「堅苦しいわね、セリナでいいわ。そうね。前にも話したとおりお金を稼ぐにはクエストを受ける必要があるといったわよね。クエスト受付にいきしょう」


「わかったよ」


クエスト受け付けか、一体どんな場所何だ。


そういえば.....と俺はセリナに質問を切り出す。


「なにかしら」


「王女ってことは、王様と結婚しているということか」


俺は物分りが悪いし、要領もまぁ良くないけど普通に考えるとおのずとこの結論に至る。


「父上と私が言っている理由を考えて見なさい」


彼女は振り返る事もなくただその一言を投げかけた。


「ということは、元王女。母上の娘......」


「貴方が軽々しく母上というのは如何なものかしら。でも当たりだわ。私は2代目王女ということになるわね」


俺のはやとちりだったか。好きになった女性が結婚していたなんて縁起でもない。

道行く人が俺たちをやけに見ているような気がする。


「なぁ、俺たちって、そんなに目立つのか?」

「当たり前でしょう。私この国の王女なのよ。それに、普段は一人で行動すことの方が多いし」


 ふと今の状況を確認する。俺は、王女さんと二人きりで街を歩いている。街案内とは言え、これはデートじゃないのか?


「セリナ、この状況ってデー」


 言い切る前に、何を言うか察したのか割り込むように彼女は話す。


「そんなわけないじゃない! 殺すわよ」


 動揺した様子な彼女の目は、それ以上言ったら本当に殺しそうな鋭い目をしていた。


「ご、ごめん、そんなわけないよね」


(冗談でもこんなこと言うべきではないな)俺は何とか殺されることは免れた。


ーー

 セリナの足が止まる。どうやら着いたみたいだ。看板にはPUBと書かれている。お酒飲むところだったような気がするが。


「ここよ。PUBの中にクエスト受付所もあるのよ」

「へぇ~。そうなんだ」


 この国のことはよくわからいため生返事をする。


「早速クエスト受付所に行くわよ」


 俺たちはクエスト受付所に行くことに。


「この人、新人なので説明を頼むわ」

「姫様のご依頼とあれば、ご説明したします」


 二十代くらいだろうか、若いお姉さんは答える。


「それでは、ジョブについて説明致します。この国では、民一人一人の能力に応じて就けるジョブが決まっています。例えば、騎士・聖騎士・冒険家・盗賊その他たくさんあるので割愛しますね。それでは、あなたの能力を見ます。こちらへどうぞ」


 俺は、案内された通り店の奥へと入る。


「ここは?」


 床には、六芒星がでかでかと描かれている。儀式の生贄にされてしまうのか。何が起きるのかが分からない。それが楽しいんだろそう自分に言い聞かせる。


「では、六芒星の真ん中に立ってください」


 言われたとおり、真ん中に立つ。


「それでは、はじめます」


 そういうと、壁にあるスイッチを押す―すると六芒星が七色に光りだす。


「これ、大丈夫なの!?」


 怖くなった俺は、声を荒げる。絶対大丈夫じゃない奴でしょう。


「大丈夫です」


 笑顔でお姉さんを返す。なに、なんか逆に怖いんだけど―しばらくすると、光は徐々に弱まり、すっと消えた。


「終わりました。では、結果の方はこちらにはありませんので、受付所までお越しください」


 能力は最弱とかやめてくれよ。俺が最強のステータスだったらどうしよう。そんな淡い期待を込めつつ結果を待つ。


「こちらが、結果です」


 現実はそんなに甘くなかった(異世界でも)

 一枚の紙が渡される。力・速さ・体力そして適正ジョブが書かれている。

 1~5段階評価が書かれており、中学生の時の成績表を思い出す。

((力 ① 速さ ① 体力 ① 適正ジョブ ニート))

 え、ニートってジョブ存在するの。ステータスの低さよりもそこに驚いた。


「ニートってちなみにどんなジョブですか?」

「基本的には適正のジョブがなかったと、考えていただければよいかと思います。あなたが使える能力は自分を透明に出来る能力のみとなっております」


 なんだと......俺は石の様に固まってしまった。


「クスクス」


 隣から、笑いを堪えるようにしているセリナの声が聞こえる。


「笑うことないだろ!」


 いくら、かわいいからって何でも許されると思うなよ。今までの怒りが込み上げてきた。


「だって、今までにジョブに就けなかった人なんて見たことがないから」


 なんて仕打ちだ。異世界でやっとまじめな職に就けると考えたいたのに、ジョブに就けないなんて。顔を埋め終始頭が挙がらない。それを見かねたお姉さんがすかさずフォローに入る。


「ジョブに就けないとは言いましたが、あなたはどのジョブにも属さない非常にまれな方ですよ」


 ありがとう、お姉さん。やさしいお姉さんでよかった。追い討ちを駆けられていたら俺は、もう生きていけない所だった。


「まぁ、お姉さんもああいっていることだし気にすることないわ」


(それを、お前が言うのか。)くそ、ニートでも本気だせばすごいって所を絶対みせてやる。俺はこの日を境にセリナを見返してやることを心に決めた。


「セリナは、どんなジョブなの?」

「私?私はクイーンよ」


 そのままんじゃねーか。ずるくないそれ。生まれた境遇でジョブが決まってるじゃないか。そこら辺はもといた世界と変わらないな。


「クイーンは、何が出来る?」

「そうね。回復魔法に関しては全部詠唱できるわ。でも、攻撃魔法は使えないわ」

「はぁ......回復専門ジョブかよ。それでどうやってモンスター倒すんだよ」


俺は、彼女を煽る。


「私、モンスター討伐クエストは受けないから」


 涼しげな顔で答える。畜生が。

 俺の思っていた異世界と違う。こんなはずでは......


「それよりクエスト受けましょうよ。ニート君」

「いや、それ俺の名前じゃないからね」


 クエスト案内掲示板に向かう。んーとどれどれ。モンスター討伐クエストを受けても武器がないから、無理だろう。となると無難な奴はと。

((         家事のお手伝い             ))

   依頼内容:家事全般(昼・夕食作り、洗濯・掃除・その他     

   報酬  :一万GC


「これにしようぜ」


 セリナに紙を渡す。


「そうね、あなたの得意分野だわね」


 ニートだから、家事を全てこなせるとは限らないのだが。後、さらっと人を傷つけるのはやめていただけませんかね。


「よし、じゃあ決まりだな」


 俺はクエスト受付のお姉さんに話に行く。


「はい、このクエストですね。では今から依頼主の人に連絡をとってみますので少々おまちください」


 黒電話で依頼主と連絡を取っている。変な所で一昔の前の物を使っているな。懐かしい。


「依頼主と連絡取れました。今からでも結構だそうなので、こちらの地図を元に依頼主の家まで向かってください」


 お姉さんから地図を受け取る。それから、地図を元に依頼主へと向かった。道に迷わないように気をつけよう。

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