第2話 喫茶店

 中に入ってみると高そうなハト時計が置いてあったり、木製の椅子や机が所狭しと並んでいる。お客さんの数は疎らで落ち着いた雰囲気のお店だ。決して空いている人気の無いお店だとは思っていませんよ。カウンター席の奥にはマスターらしい人が一人でコーヒーの準備をしている。


「どうだい、いい雰囲気のお店だろ」


 彼は鼻を尖らせ自慢気に語る。確かに雰囲気は良いと思うけど、高そうだし俺の格好とはミスマッチも良いところである。


「行きつけのお店なんですか?」

「ああ、お店の帰りにいつも寄っているんだ。ここのコーヒーは絶品でね、私は常連客の一人なんだ」


 常連客と自分で言ってしまう辺りをみると、この人見かけに寄らず痛い人何だなと思ってしまう。


「マスター、コーヒー二つ」


 席へ移動して、早速彼は注文をする。


「ホットでいいかい?」

「はい」

「マスターホット二つ!」

 (先に聞いた方が良かったのでは)

「あいよ!」


 白髪でオールバックのマスターは、コーヒーを淹れる準備をする。コーヒーの香りがカウンター席まで漂ってくる。


「じゃあ、早速だけどグランド王国について簡単に説明するよ。国を治めているのはマルベス国王。王女はセリナ姫。街の人々はそれぞれ職業に就いている。自分の職業にあった仕事をしている訳さ。俺だったら商人。だからニート君はまずクエスト受付所にいく事をおすすめするよ。それからGCコインを稼ぐには、クエストを受ける必要がある。クエストの内容はモンスター討伐とか、赤ちゃんのお守りなど多種多様存在するんだ。まぁ手っ取り早く稼ぐんだったらモンスター討伐をオススメするよ。リスクも高いけどGCコインが、がっぽりもらえる。ここまででわからないところあるかい?」


 一通り話し終えると、コーヒーをすする。


よく噛まずに話せるな。違う意味での驚きを隠せなかった。


「GCコインの稼ぎ方とクエストの事についてわかりました。モンスターは因みにどんなのですか?」


 モンスターって字から察するに怪物だろ。なんだか怖くなってきた。


「んー教えるより、クエスト受付まで行った方が早そうだね。ごめんそろそろお店に戻らないといけないから、これ渡しておくよ。」


 そう言うと、白い紙に現在地と目的地と書かれている簡略的な地図を渡された。


「ありがとうございます」

「その地図通りに行けば、クエスト受付の所につけるから。お代は払っておくからね。それじゃあ」


 席から立ち上がり、足早にお店に向かっていった。


ーー


 さてどうするかな。とりあえずクエスト受付に行ってみるか。外に出て地図通りに進み始める。やっぱ俺と似た様な格好の人はいないよなぁ。


10分ぐらい歩いただろうか。方角が書かれていないため自分がどこにいるのか分からなくなってきた。おまけに、土地勘なんて者は最初からないときた。


最初に聞いておくべきだった。

 この地図の方角はどうなってるんだ。どうやら道に迷ってしまったようだ。


「暑いな」


 日陰の所に移動しよう。路地の日陰に腰掛けて座った。俺と似た様な考えをする輩もいるみたいで、3人ほどグッスリと座ったまま寝ている。


俺この先やっていけるんだろうか?異世界に来て見たが思っていたのとは違っていた。一文無しで、このままだとクエスト受付所の場所にもたどり着けずに、最悪餓死も視野に入れておかなければ......


「ねぇ。あなた大丈夫?」


 知らないうちに寝てしまったみたいだ。どのくらい時間が経ったのだろう。辺りの人の影が疎らになっていた。さっきまで日光がガンガン照っていたのに。肩に柔らかい感触を感じる。俺は誰かに肩を揺さぶられていた。


 顔を挙げるとそこには、透き通った蒼色の目をした銀髪の美少女がいた。白いローブを着ていてどこか気品ささえ感じる。膝を曲げて緊迫とした表情でこちらを見ていた。


「かわいい」


(何言ってんだ俺!?)


 寝ぼけていたせいか、遂思っていたことをそのまま口走ってしまう。


「いきなり何言い出すのよ!」


 頬を真っ赤に染めている彼女は、俺の顔を見るや否や何の前触れもなく右手でビンタしてきた。俺は抵抗する余裕もなく辺りには鈍器のような鈍い音が響いた。俺の首が半回転するほどの力の勢いだった。


俺は引張叩かれた頬をさすりながら、


「いってぇ。ごめん、俺が悪かったよ。でもかわいかったのは本当だから」


指をパチンと鳴らす。

 何かいいたげそうな彼女だったが、胸に手を当て深呼吸をし落ち着かせている。しかし見かけに寄らずすごい力だな。魔法か何かか?


「その話は一旦置いておくわ。私は、セリナ・メーニュ・ディアナていうの、街ではセリナって呼ばれてる。あなたの名前は?」


「新居等二斗だ。あ、ニートって呼んでくれて構わない」


「へぇ〜変わった名前ね」


 そう言うと軽く頷き、長い髪を捲り上げる仕草を見せる。


「二斗君ねよろしく。」


 彼女は満面の笑みで言う。しばし彼女に俺は見惚れてしまっていた。これが俗に言う一目惚れという奴なのか。目を逸らすことで精一杯だった。


 (でもおかしいな。ニートってよんでくれって言ったんだけどな。そんなことはかわいいからどうでもいいや。カワイイは正義なんです)


俺の待ち望んでいた美少女。やっぱり異世界はこうでなくちゃな)


 口に出すのは、さすがに憚られたので心の中で留めておくことにした。

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