第4話 暗闇を抜けた先に広がる楽園
扉を抜けた先は、レンガで出来た部屋だった。
ランタンに炎が灯り、闇を優しく払っている。
壁には幻想的な風景や、悪魔が人間を虐げている様子を描いた絵画がかかっている。そのほかにも、華美な宝飾が施された剣や鎧などが飾られていた。
どうやら宝物庫のようだ。
だが、長年使われていないのだろう。
カビのにおいが室内に充満し、歩くたびに埃が舞う。風が漏れるように抜けている扉を開ける。その瞬間、強烈な光が差し込み、一瞬にして視界を奪われ、耐えきれない眩暈に襲われる。
やがて光に慣れると、目の前には楽園が広がっていた。大きな池を囲むようにクローバーが咲き乱れ、美しい蝶が飛び交う。木々には鳥が羽を休めており、思い思いに囀っている。
ファウストのように「時よ止まれ 。お前は美しい」と、気障なことを思わず言ってしまいたくなるような、そんな光景だった。
一度落ち着いてみると、急激な喉の渇きを覚えた。
眼の前の池は、澄み切った青を湛えている。それを手で掬い、口に運ぶ。
今まで経験をしたことがないくらいの甘味と、のど越しの良さを感じた。俺はうずくまり、水面に直接口をつけて飲み続ける。心ゆくまで甘露な水を味わうと、目の前に建物が見えた。全面をなにか蔦のようなものに覆われ、天井部分や、壁などが部分的に崩れ落ちている廃墟。
そこから、女性の歌声が聞こえた。
その声に誘われるように、フラフラと廃墟に向う。
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