第五話
「貴殿らは……、正気か……?」
現場指揮官の『神機』パイロットが言うのと同じ、捕虜虐殺以外の何物でもない提案をアメリアも受け、他の『レプリカ』パイロットへ、彼女は目を剥いてそう言う。
「おいおい、何を言ってるんだ。お前は」
「アレは『帝国』の敵ですぜ?」
「敵とはいえ、それは正義ではないだろう!?」
アメリアは、なんとか考えを改めさせようとするが、
「貴様はっ! 『帝国』に剣を向けた外道共に味方するのか!」
「正気で無いのはマドック軍曹の方では?」
彼らは自分たちの考えが正しい、と思っているので、耳を貸すはずも無かった。
それでもなお、アメリアが同僚達を説得していると、パニックを起こした捕虜の何人かが、集団で人の塊から飛び出した。
「ちっ」
アメリアの左にいる『レプリカ』のパイロットが、舌打ちをしてその人々へ機関銃で弾を浴びせる。銃撃を受けた彼らは、瞬時に赤い霧となって消えた。
その光景を目の当たりにして激昂したアメリアは、
「――ッ。貴様ら……ッ! それでも人の子かああああ!」
そう叫ぶと同時に、捕虜を銃撃した『レプリカ』を実弾砲で砲撃して破壊した。
「何をす――」
彼女は間髪を入れず、機体上部の砲塔を旋回させて、反対側の上官の機体を砲撃して破壊した。
「血迷ったかマドックゥ!」
顔を真っ赤にする『神機』のパイロットは、口から泡を飛ばしてアメリアへそう叫ぶ。
「黙れッ! この外道が!」
意味が無いのは分かっていたが、アメリアは『神機』に向けて砲撃をし、彼に向かってそう叫んだ。
「なっ、なんと
完全にヒステリーを起こしたパイロットは、エレアノールに自分の言う事を聞け、と目を血走らせて
「私は己の良心に従って、あなたの言葉を拒絶します」
パイロットのがなり声にも一切怯えず、エレアノールは堂々とそう言い放った。
「ち、調子に乗るなああああ! この『起動キー』がああああ! 言う事をきけええええ!」
狂ったように喚き散らすパイロットは、シートベルトを外して立ち上がると、腰のレーザー式拳銃抜いてエレアノールに向けた。
その瞬間、突然『神機』が機体のスラスターを吹かし、上空へと飛び上がった。
「なっ、なんだあ!?」
高度が数十メートルに達したところで、重力にしたがって落下を始めた。『神機』は落ちながらスラスターを前後左右に吹かし、コクピット内を嵐に遭遇した船の様に揺らす。
「うわああああ! グゲッ!」
パイロットはバランスを崩して転倒し、コクピットの床で頭を打った
機体はホバリング状態でゆっくりと前進し、捕虜に銃を向ける歩兵達の少し後ろに降り立った。
「なに……、が……?」
『神機』が勝手に動き出した事に理解が追いつかず、エレアノールが呆然としていると、正面のモニター以外の明かりがいきなり消えた。
コクピット内にパイロットの
『聖なる巫女よ、己が正義を貫け』
その画面に古代文字でそう表示された。
しばらくするとその画面も電源が落ち、座席の後ろにあるハッチが開いた。上がったゲート部分から、籠をワイヤーで吊す形状の昇降装置が展開する。
「感謝いたしますわ」
シートから立ち上がったエレアノールは、『神機』に向かってそう言うと、迷うこと無くそれで地面に降り立った。
被っていたヘルメットを脱ぎ捨てた彼女は、捕虜達の前へと全速力で向かう。
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