最終話
『英雄』レオンによるセレナ公女救出の一報は、瞬く間に『公国』全土へと伝わり、それまで沈みきっていた軍全体の士気が跳ね上がった。
その上、公爵による大規模な補給が、再び開始されたために戦線の後退が止まり、およそ10時間後には一部戦域で反転攻勢に移った。
連絡を入れてから少しもしないうちに、レオン達がいる基地に公爵がやってきて、娘との感動の再会を果たした後、彼はレオンにこれ以上に無いほど感謝の言葉を贈った。
「レオンさーん」
夕暮れのオレンジ色に染まる裏の庭園で、噴水の前にたたずんで空を見ていたレオンに、『聖女』用の修道服を着たセレナとマリーが駆け寄ってきた。
「やあ公女殿下」
レオンは
入国管理局に行ったジョン以外の3人は、カノプス中心部にある公爵の執務用の邸宅に移動していた。
マスコミ各社への会見や勲章の授与式に追われ、レオンとセレナが解放されたのは、それからおおよそ3時間後だった。
「今まで通りで結構ですよ。レオンさん」
そんな彼の様子を見たセレナは、口元に手を当て、クスリ、と小さく笑ってそう答える。
「れおんー」
マリーは頭を上げたレオンの太腿に、先ほどと同じように抱きついた。
「二人とも、その服が良く似合ってるね」
「ありがとうございますっ!」
「んふー」
レオンが彼女の頭を撫でると、小さな『聖女』は気持ちよさそうに目を閉じて、彼の右脇腹に頬ずりした。
「ところでセレナ。さっき言ってた僕への用ってなんだい?」
そんな彼女を撫でながら、にこやかな表情でレオンはそう訊ねた。
身寄りがないマリーはひとまず、キャクストン家が預かることになった。
「はい……」
緊張した面持ちで返事をしたセレナは、マリーがいる方の反対側に立ち、
「あのっ、レオンさん! その、私に雇われてはいただけませんか……っ」
レオンの顔を見上げてその手を握り、単刀直入にそう願い出た。
「マリーも、れおんといっしょがいい」
その場でぴょんぴょんと跳ねながら、マリーもその援護射撃とばかりにそう言う。
「公女殿下からの直々のお願いとあれば、断る訳にはいかないね」
レオンは二つ返事で快諾し、よろしく、とセレナの手を握り返した。
「はい! よろしくお願いします!」
「やったー」
両サイドから美少女2人に抱きつかれ、彼はまんざらでもなさそうな困った顔をしていた。
*
それから2ヶ月後。レオンのたぐいまれなる指揮能力と、息を吹き返した軍の奮闘により、『公国』は緒戦にことごとく勝利していった。
その結果、残る失地は南西部に位置する、国境の町ロトスのみとなっていた。
『レプリカ』182機と『神機』2機を擁する『公国』軍と、『レプリカ』97機と『神機』1機を擁する『王国』軍が、ロトスの西にある大草原にて対峙していた。
「さあ行くよ、セレナ」
「はいっ」
セレナの返事を聞いたレオンは、機体の腰にマウントされた得物を構える。
「全軍、突撃!」
指揮下の全機に向けて彼がそう命令すると、すぐさま号砲が鳴り響いて戦闘が開始された。
後に『232年7ノ月戦争』と呼ばれるこの戦いの勝利は、『英雄』レオンが成し遂げた偉業の1つとなった。
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