第2話
少女の名は【
彼女は、壊れた家庭に生まれた。
アルコール中毒で暴力を振るう母と、ある日「仕事に行ってくる」と言ってそのまま姿を消した父。
今までは父が癇癪を起こす母を宥めていたから良かったものの、父が消えてから、母はやりたい放題だった。
パリーンッ!!
「何やってるの!?早く買い物に行って来なさいって言ってるでしょ!この役立たずッ」
「……ごめんなさい」
割れた皿が痣だらけの皮膚を抉り、傷口から血が流れ出る。
しかし痛みは感じない。
そういう病気だから仕方ないと言えばそれまでだが、どうやら母は私がこの病気を持って生まれた事が気に食わないらしい。
取り敢えずの応急手当として、ボロボロの服から引き千切った布を腕に巻いて、買い物に行く。
近所のヒトは見て見ぬフリで、冷たい視線の嵐が渦巻く中、ひそひそ話をする。
現実は非情である。
そんな死と隣合わせだった彼女はよく、現実と死神のいる空間の境を彷徨っていた。
初めは揺らぐ黒い塊のような姿をした死神に驚いたが、死神しかアイすべき存在がいなかった彼女は、自分と同じ【ヒトリボッチ】の彼を受け入れた。
頭を撫でる度に、気持ちよさそうにする彼を見ていると、自然に穏やかな気持ちになれて、彼女は感情を知る。
この真っ白な世界が、彼と供に過ごせる時間だけが、彼女にとって唯一の安寧の地であり、心の拠り所でもあった。
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