フタリボッチ

@ichiru014

第1話



死神は、真っ白なセカイで生まれた。


自分という存在が一体何なのか……それすら分からない彼にとって唯一分かる事は、自分が「ヒトリボッチ」という事だけであった。




彼の前にはいつもモニターのようなモノが置かれており、彼はソレに映るヒトの死んでいく様を見続けていた。



ヒトの死に様を見届ける事。


そう……彼は己の役割と、生まれた意味を知ったのである。




何時からだなんて、時間の感覚が無い死神には到底分かる事ではないが……いつからか、とある少女が死神に会いに来るようになった。




「……クロ、また来たよ」


『!!』




彼女は彼を【クロ】と呼び慕い、よく頭を撫でた。


いつもは無表情の彼女だが、彼の頭を撫でている時の顔は穏やかなモノだった。




言葉は分からなくとも、触れた指先から伝わる彼女の【アイ】に、死神は初めてヒトの温もりを知り、彼女という存在に恋をした。



彼女と一緒にいられる時間が、彼にとって唯一の【シアワセ】だった。



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