第7話
そこへガブリエルがあらわれた。
今日の彼はオペラでも見に来たように、いつにもまして豪華絢爛な衣装に身を包み、その顔は意気揚々と輝いている。
しかも、数人の天使仲間まで引き連れていた。
友人たちは、翼をはやしているもの、角をはやしているもの、姿や性別はさまざまだが、いずれもガブリエルと同じ年頃に――つまりとてつもなく長い少年期の最中に見えた。
「だから、ぼくが最初におすすめしたあの脱獄囚を生贄にしておけばよかったのにねえ。それとも、二番目の男をね。最初の男ほどには誰もが認める悪人じゃないけど、とにかく一人身だったしね」
「ほらメアリ、おまえの乗り越えるべき課題は、ぐずぐずすればするほど、どんどん難しくなっていくよ。今回成功するとしても、この儀式はおまえにとって最も過酷な試練になるだろう。おまえに乗り越えられるかな?」
ガブリエルがこう言うと、彼の友人たちまでもがいっせいに、それぞれ意見を述べ始めた。
息子を生贄にし、母親には事情を説明せよ、うまく同情をひいて告発されないよう説き伏せろと言う者。
または息子にわからないように母親を始末し、息子は父の元に送り届けてやるがいい。ついでにやもめとなったその男の後妻におさまれ、とすすめる者。
また別の者は、二人とも殺すのがせめてもの親切だ、残された父親の方なら心配いらない。最初こそ妻子の行方不明を気に病むが、一年もすれば別の女とねんごろになっている、と請合った。
「同感だね」とガブリエル。「ほらメアリ、おまえの元夫の行動を思い出してごらんよ。いつまでも喪に服していたおまえに嫌気がさして、ごきげんな若い女にのりかえたんだっけね」
「うるさいね!」メアリはわめいた。「ちょっとは黙っていられないの? ここは不良のたまり場かい!」
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