第5話
黄色と橙色の昼と、黒い夜が縞模様を織りなすようにゆっくりと通り過ぎてゆき、最後の満月の夜が近づいてきた。
そしてメアリは美しい暗殺者と化した。
豊富な食べ物のおかげで肉付きがよくなり、それでいて腰はほっそりと、脚はニンフさながらだ。
それもそのはず、毎日夜明けと共に起きだして、大鎌の素振りに余念がない。
さらに生贄が逃走した場合を考え、鎌を小脇に抱えたまま屋敷の周囲を駆け足で巡回する。
化粧の腕にも磨きがかかり、テーブルマナー、会話術、いかにも礼儀正しい善人のごとき物腰、色気や愛嬌まで身につけた。
今では百発百中で旅人を口説き落とし、何の疑いも抱かせることなく屋敷に誘い込むことができた。
そうして、彼女の中に残っていた首狩りへの躊躇は、日に日にそぎ落とされていった。
ガブリエルに大鎌を渡されたときから、彼女は知らず知らずのうちに、生贄を捧げる場面を幾度となく思い浮かべていた。
つまり心の中で予行演習を繰り返していたのだ。
その上、過去の二回は失敗したとはいえ、彼女はすでに足を踏み出してしまっていた。最初の心理的障壁はもう越えていたのだ。
種はまかれた。彼女の心は時間と共にゆっくりと変異し、新たに殺人者としての一面が芽生えたのだ。
どころがどうだろう、満月まであとわずかという頃になって、旅人がぱったりと絶えてしまった。
周辺の町では、街道沿いの廃墟に大鎌を持った女の妖怪が出る、という噂が広まりつつあった。
妙な噂ほど速く伝わるものだ。一人旅の者たちはこの道を避けるようになっていた。
商隊が通りはしたが、これを狙うのは危険すぎた。集団の中の一人を捕らえれば、残りの者が黙ってはいないだろう。
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