11月11日

【解説】

 この辺のメモが断片で短いのは、職場で書いて、書いた部分だけメモしていたから。ちょっとずつ地道に書いている(笑)

 前版で粗筋だった部分も、こうして少しずつ身になっていきます。


 あ、『ランマ』はたしか、アスファルトを固めるやつです。音がでかい。

 

-----------------------------------------------


【メモ】

 光は、突然だった。

「歩行者はこちらを」

 道路工事現場だった。幾つもの投光器がむき出しの土に、スコップの機材の重車両の、作業者達の影を作る。

 警備員が腕を掴んだ。掴んで。

「正人?」

 いぶかしげな、聞き慣れた声がした。

「父さん!?」

「なん……」

「ごめん、あとで!」

 手を振り切って作業の中へ飛び込んだ。なんだなんだと慌てる作業員の合間を縫う。

「かなえっ」

「ちょ、君、それは!」

 捲れたアスファルトに躓いた。手を突き転がり顔を上げたその先で。出会いがしらの一本背負いでナイフと共に見事に宙を舞う『俺』の姿を捉えていた。


 *




 *


 伯父さんだ、と。

 柔道有段者の父さんと実用的な筋肉を身につけた工事作業者たちにとっ捕まえられ、ナイフを取り上げられ、黄色と黒のナイロンロープでグルグルに巻かれた『俺』をあごで示して父さんは言った。

 どこへか消えていたオトはいつの間にか父さんの後ろにいた。父さんの大きな背中から、恐々『俺』を覗いていた。

 父さんはどこかへ電話をかけたようだった。工事が再開されて父さんも仕事に戻った。

『俺』は片隅に座らされ項垂れていた。何かを言っているようにも思ったが、ランマの音にまぎれて俺へは届かなかった。

 俺は、工事現場の端っこから『俺』を見ていた。俺は母親似だと言われていた。残っていた写真からも伺えた。



タクシーが停まった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る