11月9日
【解説】
粗筋が決まったので、ひたすら頭から書いていく。メモが複数在るのは、多分、朝と昼、もしくは、昼と、夜(帰宅後、翌日作業のため)
こだまちゃんがここでオトちゃんになりました。
初期案の『こだま』は、もののけ姫のこだまのようになんとなくいるイメージから(多分)
オトは、正式名称です。
そうそう。細かいネタを。
○お父さんの『餃子みたいな耳』:柔道の『餃子耳』です。寝技の練習で傷ついた耳に雑菌が入って、餃子みたいなカタチになってしまうとか。柔道家の離婚騒動に不機嫌なのも、柔道を特別に思っているからです。
○男性アイドルグループのCDランキング一位:事務所が大量に買い取り、操作している、という噂があります。噂です。真相は存じません。
○政治家:(^^)♪
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【メモ1】
テレビの血液型占いは、軽快な音楽と共にO型の四位とAB型の二位を告げる。
突然の電話に思いっきり渋面になった父さんが出る。俺はフライパンから手が離せない。
フラッシュの中で大臣は就任前と見事に変わった意見を言い。おえらい大学教授はさも当然と口を挟む。
電話を置いた父さんは仏頂面のままスーツの上着をつかむ。コーナー変わってにぎやかに流れ始めた柔道家の離婚騒動に餃子みたいな耳の先まで不機嫌面して、破きそうな勢いでスーツへ腕を押し込んだ。
「どいつもこいつも愛だの恋だの、甘っちょろい嘘に浮かれやがって」
半分ほどに減った茶碗と味噌汁の椀を一瞥し、目玉焼きを持ってきた俺を見ることもなくかばんをその手に取り上げた。
「急用が出来た。行って来る」
はっきりした眉を思いっきり寄せた様子はまるで仁王像のよう。ぱんぱんなスーツからはみ出た首も手の甲も、木材のように焼けている。
太ったな。いや太ったってよりは筋肉か? 父さんが食べなかった熱々の目玉焼きを頬張りながら俺は思う。事務職って大変なんだな。
CDの売り上げランキングは男性アイドルグループの新曲が安定の一位を勝ち取った。天気コーナーはかわいいおねーさんが天気図を流しながら、降雨確率を予報する。
珍しく落ち着きなく表を裏を走り回っていたオトが、くっきりした眉の頭を寄せながら、俺と時計を見比べた。
「やべ」
番組が変わる。ドラマの挿入歌が流れ出す。
食器を洗って水きり台の上に並べ。俺はかばんを引っつかむ。
「か……」
「ごめんなさい!」
門を出掛けに自転車へとぶつかりそうになりながら狭い道を走り出す。
生垣に身を寄せタクシーをやり過ごし、門前にちょいとお邪魔し三軒隣の軽自動車を見送った。
いつもならはしゃいで先行くはずのオトが、なぜだか今日は俺のはみ出たシャツの裾をつかもうとする。後ろが気になるらしかったが、実際に引っ張れるわけでもないし、俺はただ先だけを急いでいく。
学校へ向かう道の角に立つ。見回せば、ちょうどあの子がやってきた。
「おはよう、宇津木くん」
「お、はよう。中野さん」
中野はすぐに女子の会話へ戻っていく。
俺は側に仲の良い野郎を見つけて輪に加わる。
オトは中野を見て顔を輝かせる。今まで見せていた不安顔などどこへやら、スカートの裾を追うように歩いた。
オトの姿が見られないのを良いことに。
*
何が本当で何が嘘か、僕は時々わからなくなる。
*
学校を終えてバイト先へ直行する。四時間働いて夜の時間に突入する頃、交代が来て解放される。
まだ暑さの抜けきらない空気に伸びをしながら、いつもの道をのんびり辿る。街頭の灯りに一人遊びを繰り返すオトは、ふと、足を止めた。
「オト?」
【メモ2】
学校を終えてバイト先へ直行する。四時間働いて夜の時間に突入する頃、交代が来て解放される。
まだ暑さの抜けきらない空気に伸びをしながら、けばけばしいネオンと嘘が溢れる近道を行く。
父さんからは残業の連絡があった。近所のスーパーには間に合う時間だ。
「オト、何食べたい」
本当に食べるわけでもないオトだったが、それでも好き嫌いがなぜかあった。考える仕草でパッと笑う。と。足を止めた。
「オト?」
俺の背後を凝視する。カラカラと自転車の立てる音がする。
つられて振り返った俺の前には。
「香苗!」
俺が、いた。
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