11月8日
【解説】
分量の調整をして、粗筋がおおよそ固まる。
伯父さんがどう主人公に目を付けるかの辺りがぼやかされている。
女装:
学校祭のネタが地方新聞に取り上げられ、伯父さんはそれを見たという方向へ。
そのため、再女装はなしに。
※写真だけ出回るとか、週刊誌のネタになるとか、いくつか案がでたが、最も自然と思われる形へ。
※主人公がそもそも少女、という案も考えたが、叔父とそっくり、とするには無理があると断念。
恋愛:
片思いに降格。とはいえ、『恋に恋する』を見てきた結果、消極的になっている。
どうでも良いが、これ、会社で書いてるな…。(始業前&昼休み。エディタが9point設定なので、真剣に見ないとまず覗き込まれても小さすぎて内容判断できない)
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宇津木正人
こだま
香苗:母
光樹:叔父
俊治:父
憧れの少女:中野文香
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血液型占いが始まった。
O型は四位。AB型は二位。
隣のばーちゃんを呼ぶ声が聞こえる。
ニュースでは大臣がコロコロと意見を変え。
芸能コーナーでは有名人の離婚が話題になり。
「すぐに別れると思ったんだ」
柔道界の醜聞嘆かわしいと溜息をこぼし。
日焼けした顔のぶっとい眉を思い切りしかめてスーツの上着を手に取った。
うだつの上がらないサラリーマンは占いすらも悪いらしい。
母さんが見限るのもわかる気がする。
俺は朝食を片付ける。
テレビがドラマを始める頃、まとわりつくこだまと一緒に家を出る。
通学路、僕へ笑顔を向けてくる老夫妻に会釈した。
さて、誰だったか。
こだまがいつものように飛び跳ねる角を曲がる。
学校へ向かう中、あの子の笑顔が飛び込んできた。
「おはよう、宇津木くん」
「おはよう。中野さん」
中野は直ぐにクラスメイトとの会話へ戻る。
俺は側に仲の良い野郎を見つけて輪に加わる。
こだまははっきりした眉をだらしなく下げたまま
中野さんの周りをぐるぐる。
*
何が本当で何が嘘か、僕は時々わからなくなる。
*
バイトを終えて日の落ちた道を急ぐ。
こだまは街灯をイルミネーションを辿ってははしゃぐ。
透き通った身体がほんのり浮かび上がる。
びくり、肩が動いた。慌てたように俺の後ろへ回り込み。
逃げようとでも言うように俺の手を掴もうとした。
「香苗……!」
あたりに人の気配はなく、何だろうと見上げて凍り付いた。
俺が、いた。
いや。俺じゃない。俺はここに居る。
「香苗。探したんだ」
だれだ、これは。
俺そっくりの、コイツは。
俺を母さんの名前で呼ぶ、こいつは。
「髪を切ったんだね。俺そっくりだ」
手が伸びてきて、頭に乗った。その手が頬へと下りてくる。
あごに。
鳥肌が立った。反射的に飛び退いた。
「どうして」
何を言ってる? 見上げる俺へ『俺』はふわりと笑いかけた。
「逆らったらお仕置きしないと」
銀色が、街灯を冷たく、反射した。
『まさと!』
暗い道の角、浮かび上がるようなこだまが手招く。
俺は全速力でそちらへ向かう。
『俺』が走り出す気配がした。
足音が。
こだまが招く。角を曲がる。一つ、二つ。
突然照らされて目が眩む。夜間工事の、投光器。
「歩行者は……正人?」
父さん? 警備員が目を瞬いた。
考える暇はなかった。
顔を上げる工事のおっちゃん達の合間へ入った時、
「きみは!」
父さんの悲鳴のような声が聞こえたと思えば。
『俺』の身体は手に持ったナイフと共に見事に宙を一回転した。
『俺』は黄色と黒のナイロンロープでグルグルに巻かれていた。
父さんはリストラされていたんだとぼそりぼそりと呟いた。
こだまは透き通る顔に父さんとよく似た笑顔を浮かべている。
朝見かけた、小さい頃一度会ったきりだったという、
俺の祖父さんと祖母さんは、ごめんねごめんねとしきりに俺に謝った。
*
母さんは父さんに愛想を尽かして出て行ったのだ。
だから何時か、戻ってくる。
*
O型は一位。AB型は三位だった。
裏金疑惑の政治家は、額に汗して弁明し、
父さんは熱愛報道に不機嫌顔で、楽な格好で出て行った。
こだまは父さんによく似た笑顔で俺を見上げ、
ドラマが始まる前に、俺は学校へと出掛けていく。
*
俺は俺の現実(ほんとう)を生きている。
多分それで、いいんだ。
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