11月7日

【解説】


 良い案が浮かばない、さりとて、小学生Verも進まない。ひとまず、要素が多すぎる高校生Verで、粗筋を書いてみた。

 粗筋と行っても、表現に凝らない状態でほぼそのまま書く。表現を工夫すればそのまま完成するレベル。

 だいたい、清書すると10倍になる(過去実績)

 で。

 長すぎて断念した。


 ちなみに、伯父さんとはこのVerではまともに2回会ってる。主人公も学校祭だけでなく女装させられたりしていて、仕掛けとして分かり易い。

 お父さんはこの版の前まで『情けなくて振られた』気の弱い人だったが、伯父さんを投げてもらう関係で柔道黒帯に変更。イメージのすりあわせに若干苦労(笑)


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正人


こだま


香苗:母

俊治:父

悠花:幽霊が見えるクラスメイト


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父が持ってきた地方紙の投稿写真は正人の学祭の時の悪のり女装写真だった。

笑いながら出社する父。随分焼けたなとぼんやり思う正人。

ニュースでは大臣がコロコロと意見を変え。

芸能コーナーでは有名人の離婚が話題になり。

隣のばーちゃんを呼ぶ声が聞こえ。

ドラマが始まり、テレビを消した。


朝食を片付け、こだまと一緒に学校へ向かう。


 *


何が本当で何が嘘か、時々わからなくなる。


 *


学校へ行く途中、クラスメイトが声をかけてくる。

クラスで一番人気のある子に声をかけられれば嬉しい。

女の子達はきゃらきゃらと笑いながら、こだまを追いかけ透かして行く。

ふと角から出てきた違う制服の少女が、何もないところで躓きかけた。

ごめんなさいと謝って、ハッと気付くと、何事もなかったかのように歩き出した。

ぶつかられかけたこだまと目が合う。二人揃って少女の背へと目をやった。

『見えてたね』

声をかけようとして、後ろから追突される。

「正人、もう一回、女装しろ!」

「先輩がご所望だ!」


 *


せめて学内の先輩にして欲しかった。

着替えさせられ、連れて行かれたのはファミレス。

喝采からそのままカラオケ。

顔は良いかもしれないがニセモノの女なんて何処が良いんだ。

『だってまさと、かーいーし!』

トイレと言って抜け出して一息。そこへ男がやってくる。

「香苗」

あたりに人の気配はなく、何だろうと見上げて凍り付いた。

俺が、いた。

いや。俺じゃない。俺はここに居る。

「香苗。探したんだ」

だれだ、これは。

俺そっくりの、コイツは。

「君はずっと変わらない」

頬に手を当ててきた。思わず下がって、壁に当たった。

どうしよう。

俺の顔が、近づいてくる。

「正人君! 先輩が呼んでるよ!」

びくりと、目の前の『俺』の肩が震えて、俺は脇をすり抜けた。

「さぁ、行こう!」

声と一緒に走り出す。しばらく走って『俺』はもう追ってこなくて。

「正人君、大丈夫?」

こだまを足元に貼り付けた、悠花が覗き込んできた。


 *


父親は妙に上機嫌で帰ってきた。

母さんが帰ってくるかも知れないと。

俺が三歳の頃家出してしまった母さんが。

返ってくるかも知れないと。

「お風呂先に貰っちゃって良いかな」

上機嫌のまま、風呂に向かう。俺は夕飯の準備をする。

前は、食後だったけど。ぼんやり想いながら、テレビを付ける。

大げさなリアリティショウに、大言壮語な政治家の演説。

天気予報を外して謝るお天気おねーさん。

ラインでは気になるあの子からデートのお誘い。

父さんが風呂から上がってきて、味噌汁をよそい始める。

「正人は本当に母さんそっくりになったなぁ」

『俺』の顔が浮かんだけれど、俺は言うべき言葉を見つけられなかった。


 *


好きとか嫌いとかよくわからない。

恋愛は嘘だと思っている。

それでも彼女は可愛いし、その彼女に好きだと言ってもらうのはまんざらでもない。

彼女はいつもはこだまがじゃれつく位置から、俺に腕を絡ませる。

放課後待ち合わせて学校を出る。ねだられて、気前よくアイスクリームを奢ってみた。

「あれ、正人君のお父さん……?」

『俺』だった。

「違う。父さんはサラリーマンで、まだ仕事してるはず」

「なんで、でも、そっくり」

近づいてくる。何かその手に持っている。

ナイフだと気付いて。

「逃げろ」

彼女の背を強く押した。

「知らない人と遊んじゃダメだって言ってるだろ。なぁ、香苗」

「あんた、誰だよ」

「男みたいな格好して、香苗は可愛い格好をしなきゃ」

「香苗香苗って、俺は母さんじゃない!」

「嘘つきには、お仕置きだね」

「息子に何をする!」

『俺』が消えた。いや、派手に横に飛ばされていた。

工事現場の警備員のおっちゃんだった……ちがう。父さん。

「光樹君、香苗は、き、君がっ」

起き上がろうとした『俺』へ父さんは馬乗りになっていた。

ナイフを持つ手を左手で押さえ、大きく手を振りかぶり。

わらわらとやってきた大人達の手で、傷害事件は未遂に終わった。

ナイフを取り上げられ、抑え込まれた俺は、錯乱しながら、いずこかへと連れて行かれた。


 *


父さんはぽつりぽつりと騒がしいファミレスで聞き取れないほどの小声で言った。

母さんにはそっくりな双子の兄がいたのだという。

父さんの部下だった母さんは、ある日倒れて病院に運ばれた。

妊娠、三ヶ月。

父親の名を決して明かさなかった、けれど、下ろすことも決断できなかった母さんを説き伏せ、父さんは籍を入れたという。

愛想を尽かされて、結局出て行ってしまったけど。

僕は口を開けかけて。父さんとよく似た顔したこだまに裾を引かれて、呑み込んだ。


 *


「だって見えるものは見えるし。他の人が見えなくても、見えるんだし」

こだまが遊ぶ様子を、楽しげに見守る。

なぜだかその表情が、とても眩しく見えた。




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