第26話 √9 模試の後に復習してみた。
―大宮予備校
5月の模試の成績はまぁまぁだった。
そりゃそうだ。一浪してるんだ。現役高校生と戦ったら上の方に来るに決まっている。
相変わらず物理数学はトップクラスだったけど、英語や国語が平均点の上でしかなかったのが将来性を感じさせない。
そうそう浪人してよかったことが1つある。
地学専門の教師がいるのだ。
今まで地学を教えられる人には出会えず、ずっと独学だったので基礎から教えていただけるのは本当にうれしい。
あと勉強だけしていればいい環境ってのもなかなか悪くない。
結果を求められると禿げそうになるけど。
ノープレッシャーいず最強。
「で、」
まとめよう。
僕の名前は平方究。
まだまだ18歳の浪人生だ。
月夜の晩、受験に落ちたのをいいことに春名山の湖に身投げしたところ変な夢を見た。
それから夜夢を見るたびに所謂異世界に行けるようになった。
夢の中かもしれないけど、現実のようにも感じる。
なんたって向こうの世界で見た物会った人起こったことすべておぼえているのだ。
あと向こうに行くには条件があるっぽい。
昼寝をして夢を見たことがあったけどその時は異世界には行けなかった。
多分長時間寝ないとその夢の世界に行けないらしい。
向こうの世界の経過時間はこちらと違うようだ。
夢の中の体感時間なら説明がどうとでも付く。
例えばこっちで8時間寝てると、むこうで16時間活動できる。
北海道大学のサヴァンさんだか東大理3の水上なんとかさんだかも明晰夢を見れるらしいので不思議と驚きはしなかった。
明晰夢というのは夢の中で「これは夢だ」ってわかる夢の事。
一人称視点のゲームとかをやっているとこの夢を見やすくなるらしい。
気づいた後はゲームと変わらない。好きなように動かして好きなように展開できる。
これを使ってちょっとHで楽しい夢も見られるし、解けなかった問題を夢の中に持ち込んで考えるって人もいる。それが理Ⅲだから笑う。
向こうに持っていけるのは俺の体だけではないみたいだ。
布団の上でノート開きながら一回寝落ちしたことがあったがその時はノートやシャーペンも家の枕元に落ちていた。
どうやら体に接しているものは持っていけるらしい。
それに気づいてから単語帳や参考書を枕にして寝るようになった。
おかげで夢の中にも勉強できる環境が整いつつあった。
向こうの世界でお世話になった人は4人。
もっと多くの人に関わった気もするが人の名前を覚えるのが如何せん苦手なのでこれくらいがちょうどいい。
1人目はシャーリー。
シャーリー・テンプル・チューリップ。
金髪サイドテールの中学1年生くらいの女の子だ。
親を亡くし、独り身で、家が火事になったところを助けてあげた。
それ以来兄のように慕ってくれて、今では同じ屋根の下に住んでいる。
素直な性格で、優しいところがあり、結婚して子供が生まれたらこういう子に育ってほしいなって思う。
かわいい。
2人目、フレア。
フレア・カルーア・カーネーション。
赤髪を背中まで伸ばした美人のお姉さんだ。
年齢は女子大学院生くらい。
若くして国家認定研究者について、今ではその中でも超が付くほど偉いところにいる天才だ。
僕やシャーリーを助けてくれて、独り身の僕らを一緒の家に住まわしてくれている。
あと美人だ。
3人目、メディさん。
メディ・キティ・アコナイト。
薄紫の長髪で、メガネの似合うお姉さんだ。
フレアとは友達で、お医者さんをやっており怪我した僕を看てくれた。
彼女も研究者で、医学に精通した天才級の頭脳を持っている。
こちらも美人。
4人目、セント姫。
セント・トパーズ・シンデレラ・ローズ。
暗い青、青み掛かった黒のボブに近いショートヘアで、俺のいる国のお姫様だ。
人前や公共の場では冷たい口調のいかにもお嬢様って感じだが、
姫が認めたフレアやメディなどの一部の人間に対しては友人のように接している。
彼女もまた学問の追及者で剣術も騎士級らしい。姫様すごい。
そして美人でかわいい。最強かよ。
向こうの世界では名前・父親姓・母親姓で一人のフルネームとなる。
これが女性か男性かでまた違うし、他国にいくとまた違うらしい。
セントみたいな王族貴族はさらにもう一つ称号や家名のようなものが一つつく。
基本名前+カクテル名+花の名前のようだ。
カルーアはコーヒー牛乳みたいなお酒で、キティもシャーリーテンプルもシンデレラも確かカクテルだ。シンデレラとシャーリーテンプルはノンアルらしいけど。
あとはチューリップ、カーネーション、アコナイト、ローズ、かな。アコナイトは聞き覚えがないけどトリカブトの英名らしい。
俺の名前も平方究 (ひらかたきゅう)って本名なんだけど、
きゅうの語感からクーをとってクード・ヴァン・カーネーションって名前で向こうではやっている。
名付け親はシャーリーとフレア。
クー・ド・ヴァンはフランス語で一陣の風。いや良い名前だこと。
父親が死んだときなど、片親の場合は片方の姓を変えてもいいらしいので僕の名字にはカクテル名が存在しない。
そんなところかな。
「ふぅ・・・」
と、一息つくと「ゆめにっき」と表紙に書かれたノートを閉じだ。
さて次は何の勉強をしようかな。
そして今度はどんな夢を見ようか。
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