第18話 This triggered the riot …and war.

城下町―


2人の少女が古びた店から出てきた。

程よく古びた木造の建物。

掘り出し物のある武器屋か、絶滅危惧種の駄菓子屋か、そんな外見をしている。


町中を歩く2人の少女。

それはセント姫とシャーリーだった。


「セントさん、今日はありがとう!これでクーやフレアは喜んでくれるかな?」

「うん、シャーリーが選んだんだもの。きっと二人とも喜ぶわよ。」


彼女らとすれ違う多くの人は二人を姉妹と見間違うだろう。

2人の接点は勉強であり、1人の男の子であった。


シャーリーがフレアやクーと出会って今日で2か月たつ。

火事で死にかけて、命がけで命を助けられて、新しい家族ができて2か月だ。


フレアやクーにはいろんなものを貰った。

勉強を教えてもらった。

衣服や食べ物を貰った。

居場所をくれた。

メディやセントや、色んな人に出会えた。

私も何かお返しができないかなって思った。


「でもさ、セントさん。お金出してもらってごめんね。私がこういうの出さなきゃ意味ないのに・・・」

「いいのよ。シャーリーはまだ子供だし。シャーリーが選んだってだけで2人は嬉しいって。」

「そっかなー?えへへ、今日ウチに帰るの楽しみだなぁー」


「あ、そだ。ごめんちょっと用事あるからお城に帰っててもらっていい?」

セントが思い出したかのようにシャーリーに言う。


「えー、一緒に行くよ?」

「ほんと?ちょっと・・・うーん・・・まぁ大丈夫かな。行く?」

「うん!」



郊外―


小国νίκη―ニキ―との国境の見える地へと来ていた。

小国と言えど隣接国、郊外と言えど城下町から歩いて10分程度で見えるこの地は多少の危険地帯であった。


セント・トパーズ・シンデレラ・ブラックローズ王女の国は弱小国であったが学術の発達に伴い戦争に勝利し続け国土を拡大してきた。

おそらく小国のニキ程度なら国家をあげて侵攻すれば1年程度で征服できるだろう。

だがこれも国政。

小国があまりに力をつけすぎると大国に攻め入られてしまう。

かといって国土を広げなければ大国に対抗することができない。

故に今は小国同士で同盟を結んで連合国家を作ろうと試みてるのだが…

ここニキ国は後ろにヴィンチェーレという大国の存在がある。

この後ろ盾が強力で協力でどうしようもなく手が出せず、外交もにっちもさっちもいかない状況下にあった。


「あいかわらずいい場所では、無いな・・・これが我が国の末端だというのか。」

セントが町を見つめながらつぶやく。

「ねーセントさん・・・」

袖をくいくいと引っ張って小声でシャーリーが言った。

「大丈夫かな、人が倒れてるけど。」

「シャーリー、砦の向こうには行っちゃだめなんだよ。ここは治安が悪すぎる。昔は普通の田舎でこんなんじゃなかったんだけど、向こうの国に砦ができて、ウチも国境に砦を置いたらこんな風になってしまったんだ。」

心配そうな声でシャーリーが続ける。

「でも・・・あの人はそんなの関係なく倒れてるよ?どうにかして・・・」

その優しさ、純真無垢な言葉に心が揺らいだが、すぐに踏みとどまった。

「それでもダメだよシャーリー。あの人を助けたからと言って、ここにいる人全員を私たちは助けられない。それに、今日助けたとしても明日も明後日も助けてはあげられないんだよ。」

「・・・うん。分かった。」

落ち込ませてしまっただろうか。まだ幼い彼女にこんな現実を知ってもらうのは酷だっただろうか。

その時だった。

「うわっ!」

シャーリーが後ろから男の子に突き飛ばされた。

10歳くらいか、それよりももっと幼い男の子だった。

風呂にいつから入ってないだろうかボロボロの服と髪と肌。

「わあっ!シャーリー大丈夫か?」

「う、うん。びっくりしただけ。」

私はシャーリーの手をつかみその男の子をにらみつけたが、男の子はそれでも無言でこちらをじっと見つめ両手を突き出していた。

にらみつけたままポケットに片手を突っ込み小銭をいくつかつかんだ。

それを男の子の手に乗せた。

男の子はぱあっと表情が明るくなり、両手にコインを握りしめてそのまま走り去ってしまった。

「大丈夫?怪我なかった?」

シャーリーに話しかける。

「うん。ごめんねセントさん。」

「いいよ。もう帰ろうか。」

「うん・・・」

2人はスラム街を後にしようとした。

そのとき、

「待ってください!!」

先ほどの男の子に呼び止められた。

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