第3話

さっきまで元気に走り回っていた犬が、ぺたん、とその辺に座り込んでしまった。


はしゃぎすぎて疲れてしまったのかな? と思ったが、苦しそうにうーうーと唸っていて、なにやら様子がおかしい。


「あれ、どうしたんだろう?」


「マナが足りなくなったんだと思いますよ?」


「マナ? 魔法に使う魔力素のこと?」


「人間はそう呼ぶのです? 我々モンスターは特技を発動するたびにマナを消費するのですよ?」


そうか、この犬の特技、舐めまわしだったもんな。

さっきから俺とインプのおっさんをぺろぺろ舐めまくってたもんな。


ひょっとしてあれ、生命力を削る行為だったのか。

しかし、カワイイ犬が苦しそうに唸っているのは見ていてしのびない。


「どうやったら治せる?」


「マナを蓄えさせる必要がありますよ? 犬が食べられる手ごろなモンスターを作るといいですよ?」


「そうか……よし、新しいモンスターを作ろう」


俺は、むーん、と唸り声をあげ、ダンジョンに魔力を送り続けた。


俺の体から漏れ出る魔力素をたっぷり体に含んだ栄養たっぷり、滋養強壮モンスター……。


爪も牙も持たない犬が食べられるような離乳食にもバッチリ、おつまみ感覚のモンスター……。


あと、エサがなくなったら困るから、大量に繁殖するモンスター……。


じわりじわり、と魔導白書に新たなページが刻まれていく。

どうやら、アリのような虫系のモンスターになるようだ。


「よし、こんなもんだろ」


そう言って、気を抜いたとたん。


どばっと、ダンジョンの一角から凄まじい勢いでアリがあふれてきた。

犬もインプもその大量のアリの波にのまれて、姿を見失ってしまった。

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