司馬遼太郎『花神』を読む。

 久々に更新する。そして読むのに一ヶ月もかかってしまった。遅読はつらい。

 最近、幕末〜から明治大正が自分の中でかなりホットです。大学では国文学にいたくせに、高校では世界史選択してて、日本史に関する知識が皆無だった(大学4年のときに現存する日本最古の作り物語はなにか、って問題に『源氏物語』って書いてましたからね。タイムスリップできるのであればあの時の自分に「まぁでも教員になれるから大丈夫だよ」って言ってあげたい。叱れよ)。

 だから、最近山川出版の『詳説日本史研究』を使いながら日本史のやり直しをしている。読みながら、ノートを作って総おさらい。それも古代からやるのではなく、近代から遡る方式。最初は満州事変〜戦後改革、次は民選議員設立の建白書〜張作霖爆殺事件、まで終わって、今はペリー来航から始まって、公武合体論のあたりまできました。先にオチを知っておいて、それまでの論理を後からみていくという流れですね。これが結構おもしろい。初めて半年くらいでやっと180ページ消化。あと300ページくらい。辛い。辛いけど楽しい。

 そんなわけで、最近幕末〜明治くらいが最もアツいわけですね。え、これなんの記事? そうだ、読書感想文だ。僕の近況なんて知らねーよ。なんだっけ、あぁそうです『花神』ですよ。大村益次郎くんです。

 

 蘭方医として出発した大村益次郎が、なぜ長州藩お抱えの大参謀になったのか。そして、激しく渦巻く攘夷の渦の中で彼が何をし、何を遺したのか。司馬遼太郎の類稀なる資料収集力、かつ虚構と実体を巧みに交えた語り口で見事に村田蔵六、もとい大村益次郎の生涯を描ききっているのがこの『花神』でございます。

 僕はやっぱり上巻の適塾でのエピソードが好きですね。緒方洪庵の元で蘭学・医学を学ぶ。ただ、この大村益次郎は非常にぶっきらぼうな人間で、みんなからはかなり煙たがられた。有名な話だと、村人とすれ違って「暑いですね」と挨拶されると「夏は暑いものです」と真顔で返してしまうという堅物というか人間味がないというかそんな人。だから、村で医院を開業しても村人は寄ってこない。でも、そのことを当の本人はさして気にせずに暮らしていく。

 蘭学を学んだり、シーボルトの愛娘イネとの交流の中で、西洋諸国(というかオランダ)と日本の違いを痛感しながら、蘭学によって身につけた技術によって宇和島藩では巨大な船をこしらえ、長州藩に召抱えられてからは軍の参謀として四境戦争、そして戊辰戦争を戦い抜いた。戊辰戦争に関しては戦地が奥羽、箱館まで及んだにも関わらず、大村は江戸城の中に居続け、そこから指令を飛ばし数多の戦いに勝利していった。

 身分制度、階級制度を破棄し、明治維新の礎を築いたうちの一人であるにも関わらず、やはり西郷隆盛、大久保利通、木戸孝允などに比べれば知名度や人気は低い。しかし、大村が明治維新という大輪の花を咲かせたという事実は確実に遺っている。

 日本国民は幕末から始まった西洋諸国との交流と軋轢によって形成されていった。今日僕たちが当たり前に享受している(?)「日本国民」という観念も、やっと日清戦争を経て形成されてきた。その端緒となったのが四境戦争に始まった「庶民の戦争参加」であり、また徴兵制であった。戦争によって国民国家は形成されたとするならば、その影には必ず大村益次郎がいたのだ。

 もちろん、現代において戦争の社会的役割などというものは皆無に等しい。戦争で形成される観念など現代には必要ないかもしれない。しかし、「日本国民」(かっこつきね)がどのように形成されていったかということを学ぶためには、大村益次郎の足跡をあたってみるのも損はない。


 という荒唐無稽な感想文。むやみやたらに書いてみたよ! また何かあれば更新するっすな〜〜。

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