歴史と地理
回復系魔法が使えないのは少し精神的に辛いが、鍛えてもこれに限っては強化できない。そう考えるともう諦めるしか無い。
ただし、いつか精霊に会えたらぶっ飛ばしてやる。俺に使えない魔法があるのは、俺に作れない料理があるのと同じだ。
そう言えば最近、というか転生してから料理をしていないな。腕が鈍ってなきゃいいけど……
これまで魔法関連の授業ばかり紹介していたが、この世界の地理や歴史も学んだ。この世界では初等学校が3、中等も3、高等も3年ずつなので、初等の一年目から色々学ぶ。因みに、この世界では高等学校卒業、つまり15歳になると大人扱いとなる。
まあ子供の時とあまり変わる事はないけどね。
この世界の歴史には、興味深いものがあった。
この世界の歴史は、古くから 魔王と勇者を中心に続いてきた。勇者が魔王を倒せば、その勇者が死ぬまでは世界には平和がもたらされる。勇者が死ねば新たな勇者が産まれる。が、それと同時に新たな魔王が生まれる。その度に勇者は、魔王を倒して世界の均衡を保ってきた。
恐らくこの世界の文明は地球よりも長い。と、いうのも、この世界に平和がもたらされるのは魔王を倒した時点から勇者が死ぬまでだ。そんな束の間の平和は、魔王によって破壊される。そんな無限ループの中で、文明が発達する時間など、ほとんどない。
ただ、俺が生まれてからというもの、魔王の話も勇者の話も聞いた覚えがない。
「先生。今魔王と勇者はどうしているのでしょうか?」
さりげなく聞いてみる。
「今は、魔王も勇者様もいません。どういうことかは分かりませんが、50年ほど前に、魔王と勇者が同時に息絶えたことによって、つまり相打ちとなったことによって、新たな魔王も、勇者も産まれなかったという説が一番有力だと言われています」
この世界のシステムについてはよくわからないが、少なからず魔王も、勇者も、現在この世界には居ないらしい。どういう原理で新勇者、新魔王が産まれなかったのかは未だに分からないという事だ。
この世界はここ50年でここまで成長したと言っても過言ではないらしい。
今、世界のトップ達が懸念しているのは、平和ボケしたこの世界に、いきなり魔王が現れた時の対応がしっかり出来るのかということらしい。
確かにのほほんとしたこの世界では対応する術なんてないだろう。
地理ではこの世界の驚くべき事実を知った。この世界は勿論宇宙の中の星な事に間違いは無いのだろうが、先生の話を聞くと、どうも球体の形では無いらしいのだ。
ほら……なんて言ったかな……昔地球でも言われていた、なんちゃら説って言うやつ。
海の先はいきなり消えて海がそこから滝のように宇宙空間へ落ちて消える。その先は何も無い宇宙空間。
正にそう言うやつらしい。にわかには信じられ無いが、実際に勇者が見たらしい。相当昔の勇者が。
まあ見て見ないことにはさっぱり分からないからこの話は終わりにしよう。
この世界には現在4の大陸があり、普段は第〇大陸と呼ばれる。因みにここは第4大陸だ。
だが、それぞれの大陸には一応正式名称があるので、覚えておくと良いとのこと。第1大陸がシャングリラ、第2大陸がアヴァロン、第3大陸はユートピア、そして俺達が生きるこの大陸、第4大陸がエルドラドとなっている。
それぞれの大陸には未開の地と呼ばれる荒地と、開拓地と呼ばれ、王が治める国が存在する。大陸によって国の数は違うものの、王という共通の頂点に立つ者がいる。その上にはさらに、大陸の頂上に立つ者、通称 覇者がいる。現状、国民は王に逆らえず、王もまた、覇者に逆らうことはできない。
だがしかし、王が国民を虐殺するなどの王としてしてはいけない事をした時、覇王は王を止める義務があり、その逆の場合はすべての王が覇王を止める義務がある。
これだけ政治において王達が好き勝手できないのは、いざと言う時に魔王に対応出来ないことを避ける為にある。
これによって地球で起きていた市民革命のような事は、起きることがなかったという。
実に平和に出来た仕組みだ。
また、未開の地には、その塔を制覇することでその地の王となる事が出来る王の器という物が手に入るらしい。それを手に入れた途端、荒地はその新たな王の思い通りの新たな土地へ変わるのだという。あまり良くわからないが、それがこの世界のシステムなんだという。
さらに王の器には、謎の力が込められていて、その器を持つものは新たな力を手に入れるという。
それを狙った数々の実力者が、その塔、通称 王への階段 で命を落としているという。新たな王が生まれる度にその塔の難易度は上がり、より王への道は厳しい物となる。
難しくなるに連れて、つまり王が増えるにつれ、王の増加は低迷、今はもう130年は新たな王が生まれていない。とのこと。
今は2世3世が……まあ古い国だと10何世が国を治めている。
次の世代の王は、その代の王が選ぶことが出来る。自分の子供でも、仲間でも、弟子でも、好きな人を選んで次の王に出来る。
王が次期の王を決める前に死んでしまった場合は、原則その国のある大陸の覇王が選ぶことになっている。
まあ王になっても、なんだかんだで好き勝手出来る訳では無いので、進んで王になろうという猛者もなかなかいないらしい。
王になって手に入るのは、富と名声……そして謎の力。果たしてその為に超激ムズな塔を制覇したいかどうかの話だ。賭けるのは……命。
まあ今の俺としては正直どうでもいいかな。て言うか、俺みたいな7級魔力の奴が行けるような所じゃないはずだしね。
(ふん。ずいぶんと弱虫のな男だな)
ん?今なにか聞こえたような……?
気のせいかな?
ーーー夜ーーー
(俺は運の悪い奴だなぁ。人の魂と結合した時点でもう俺は負け組でしかない。クソが。これだから精霊は……もう少しましなヤツに付いていければ、冒険もできたろうに……復讐だって……)
「んん……うう……」
ーーー朝ーーー
「眠そうだね〜。ガリュー君」
「今日はよく眠れなかった……みたいだ」
全然眠った気になれないんだけど、なんでだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます