第四章第六話ー3

 ホントにお盆が終わってからが早かった。あっという間に前期の後半へ突入。夏休みが終了して二日目となる今日。今の今まで円芭のプロポーズ(疑似恋の範疇)は、妃奈子以外の人物の口から聞こえることはなかった。


「あたし先行くよ?」

「諒と行くのか?」

「うん。よく分かったね」

「そりゃ、お兄ちゃんだから」

「じゃあ、そゆことで」

「スルーかよっ」


 突っ込みどころを華麗にスルーして妃奈子は家を出ていった。夏休みが開けた昨日。急に今後は諒と登校すると言い出したのだ。四人で行っていたから少し寂しいが、脱兄は完全に出来たと受け取っていいらしい。


「暑いんですけど」

「いや、俺に言われても」


 中にハーフパンツを履いてるのを良いことに、スカートの裾をパタパタしている。円芭の元へ駆け寄る。やっぱあれは疑似恋の中の一貫だったんだよ。あんなことしてのけてこんな風になんて対応できないっしょ。


「で、妃奈子は登校デート?」

「あの二人隠す気ないから」

「いや、隠すことでもないけどね」

「てことは、俺らもデートになんのよね、これ」

「う、うん」


 え、うん!? おやおやおやっ。どうやら妃奈子氏が言っていたことはあながち間違ってないな。

 ――円芭の様子の変化にこっちも取り乱した朝。その後は何も変わったことはなく部活の時間。ほぼ同時に部室に入った俺と円芭を待ちわびていた二名が錯覚で見えてしまうしっぽを振って出迎えた。


「二人同時に来たっ」

「まるで、カップルみたいでしたよ!」

「まぁ、実際カップルだし」

「え、まさかの!」

「どういうことっ」


 一番俺が知りたい。どのタイミングで付き合うことになったんだ。やっぱりいつぞやの疑似恋は、疑似恋じゃなかったってことか。


「大体水野さんは、付き合ってる人いるんだから祐に執着する意味ないでしょ!」

「いとこだから知る権利あるもん」

「微妙なとこじゃん」

「どー言うことですの!」

「うわっ! いつからそこにっ」


 長田がいつの間にか円芭の隣にいた。肩で息をしていることから来て間もないようだ。


「どういうこともメールのまんまだけど」

「き、聞いてないですわっ」

「だから今さっき言ったでしょ?」

「納得できません。わたくし諦めませんわ!」

「プロポーズしたって言っても?」

「諦めませんわっ」

「いや、諦めて」

「乃愛もすきあれば寝取りますっ」

「堂々となんてこと言うの君島さん!」

「あさひはいとこという立場を行使させ――」

「だから、伊津美君を大事にしなよっ」


 デレがたまらない! 一年前の円芭ではありえない主張だね。怒りなのか照れなのか顔を真っ赤にしてるのもまた来るものがある。高校卒業したら改めて俺からプロポーズしよう。あさひ達の口撃にいつもツンツンして裏腹なことをいう円芭が、猫が威嚇するように怒っているのを見て、一生大切にしようと思う俺であった。



 ―――――


【あとがき】


 ここまで閲覧頂きありがとうございました!

 気づけば、この作品を手がけてから三年強という月日が流れていました……。あっという間でしたね。

 ここまで続けてこられたのもひとえに皆さんの応援・フォローがあってこそでした!もの凄く支えになっておりました。


 さて、この作品の今後ですが、最終話に至りましたので完結致します。長い間の閲覧等本当にありがとうございました!




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○○系女子の扱いには苦労する 黄緑優紀 @8253

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