第四章第六話ー2
これは完全にバレてる。つか、なんで妃奈子にそこまで干渉されなきゃならない。車から降りて水野家へ向かう中話す内容ではなかったかと後悔をしつつ、妹からの縛りに不満に思う。庭が広いから中々の距離駐車スペースから歩く。
「中入ったら今の話禁止」
「言われなくてもしないって。そんなリスキーな話」
「あ、ヤッホー。祐君っ」
ピョンピョンと跳ね、玄関先で俺らに手を振るあさひ。わざと跳ねてるじゃねぇだろうな。俺にはその攻撃効かないっていい加減気づけよ。
「……よ」
「あたしいるからね」
「ごめん、つい」
「ついつい人を空気扱いするっ?」
「暑いでしょ。さ、入って」
「あさひが足止めしたんだろ」
お袋と親父は、ニコニコして先に中に入っていったし。容赦なく背中に直射日光が当たってる。汗が噴き出して顔を垂れていくのが分かるくらい。
「そのつもりはなかったの」
「ホントかよ」
「あたしはどっちでもいい」
と吐き捨てて、妃奈子は奥へ消える。あー、まだ暑い。身体に熱がこもってるよ。着ているTシャツの首回りで顔を垂れる汗を拭う。
「タオルで拭きなよ」
「持ってるわけないだろ。親の実家に連れてこられたんだから」
「それはそれは、ご苦労さまですね〜」
「せめてお疲れ様と言ってくれ」
上から目線で言われる筋合いない。ましてあさひに言われるのはなおのこと気に入らないのよ。
「でさ、祐。ちょっと聞きたいことがあるの」
「聞きたいこと?」
いやにトーンを落として言うんじゃないか。心なしか空気悪くなったような。
「そう。夏祭りどこにいた?」
ヤバい。この言い回し的にどうやらウソがバレてるようだ。実は、あの日あさひの誘いを蹴っている。
「家にいたよ」
「須藤さんとまた疎遠になりたいの?」
「……なにが望みだ?」
悪役の笑みと例えるのがピッタリな表情をして、あさひがもはや脅迫と言っても良いそれに、俺は半分なにがしたいのか分かった上で問を問いで返してやった。多分夏祭りのことなどどうでも良くて、それをネタに俺とくっつく口実を作ったに過ぎない。と思う。
「帰るまで手繋いで。もちろんトイレにもついてきてもらうから」
「はいはい」
大正解! むしろ不正解が良かった。ていうか、なんで俺が夏祭り外にいたこと知ってるんだろ。はっぱをかけてみよ。
「え、いいの?」
「ところで、円芭の浴衣攻めてたよな」
「凄いと思った。あさひもあんなに冒険出来ない」
「……後つけてたな」
「祐君趣味悪いよ!」
「まったく言えた口かっての。ほら、手」
「やった! 許してくれるんだね」
「それとこれとは話が別」
「え〜」
あさひの手も小さなと悠長なことを思いつつ、妃奈子が消えていった廊下の奥。水野家リビングへ入る。入室してきた俺達の異変に真っ先に妃奈子が気がついた。
「祐君!?」
「なんで一番に俺っ」
「いつからそんなに女子をコロコロするようになったのだって!」
「相手は、付き合ってる奴いるしっ」
「なおのこと悪いわっ」
あ、そっか。俺としたことがポンコツ発言だったぜ。どうせ寝取るならこんな堂々とはやらない。
「付き合ってる人いなかったら?」
「言葉のあやだ」
「むぅ……」
「大体あさひちゃんには伊津美君がいるでしょ」
「いとこだから祐君はノーカウント」
「あさひちゃんからその言葉を聞くとは思わなかった」
「諦めてはいないよ?」
「さっきの言葉返して……」
額に手を当て、妹はため息混じりに脱力している。他人事のようにしてるけど妃奈子もあながちあさひのこと言えないんだよね。血繋がってるって凄いわ。
「なんだあさひ。お前付き合ってる人いるのか」
「別に言う必要ないかと思って」
「……酷い娘っ」
「はいはい、酷いですよ」
ヤバい、あさひがまともに見える。あさひの父が分かりやすくショックを受けて奥さんに抱きついた。……あさひ。親父さん似なんだ。
「相手は?」
「女子みたいな男子」
「今度家に連れて――」
「断る」
なんか客観的に俺を見てるようだ。こうして新たなあさひの一面を見れた実に有意義なお盆帰省だった。
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