第ニ章第三話ー7

「そうだな」

「祐君のところのあの引替券制度来年パクっていい?」

「別に構わないぞ」

「ありがとっ。あと祐君コクられてたじゃん?」


 やっぱりこの話しはしてくるよね。

 さすがは、脱兄宣言して一ヶ月もしないうちに引っついてくるだけはある。


「きっぱり振っただろ」


 まぁ、あのあと司会者が俺が振ったことであたふたしてたけど。

 公開告白が必ずしも成功するとは限らないんだよ。

 しかも、普段から話したことないのに。


「振って良かったの?」

「良かったもなにもあまり性格とか分からないし、第一好きじゃないから」

「あの告白した子同じクラスの人なんでしょ? 気まずくない?」

「気まずいかもしれないけど、好きでもないのにオッケーする方が失礼だろ」


 そう、告白してきたのは、あのクラスメイト(女)だった。

 今思えば、度々妃奈子達を彼女かと聞いてきたのは告白するからだったのかもしれない。


「確かに」

「なぁ、この話止めないか?」

「いいよ」

「ずいぶん素直だな」

「うん。は納得したから」


 なんか含みのある言い方だな。

 そんでもって嫌な予感がしてならないのだが。


「なら、いいんだけどさ」


 ドンッ!「な、なんだ!」


「……」


 リビングのドアが開く音がしたのもつかの間衝撃音が耳に入る。

 一体何ごとだっ?

 ……。…………え、円芭!?


「円ちゃん、扉が壊れるよ」


 つか、どうしてそんな冷静でいられるの、妃奈子さん!

 ウチの鍵持ってない円芭がここにいること事態でおかしな状態だろっ。


「扉っていうよりドアノブに当たった壁の方がヘコむだろ」

「そんなことはこの際どうでもいい」

「いや、どうでもよくないでしょ。まぁ、なんで来たかは薄々分かってるけど」

「俺には、さっぱり分からん」


 まさか扉と壁壊しに来たわけじゃないだろうし。

 にしても、なぜ円芭がウチの鍵を持ってるんだろ?


「さすが祐君。今の流れで分からないとは」

「ホント察し良くなれよ」

「そう言われてもな……」


 難しい要求だ。

 分からないものは分からないっつの。

 睨みつけてくる円芭から目を逸らす。


「……」


 逸らした先で妃奈子が笑いを堪えていた。

 妃奈子め……。


「ま、どうせ無理だろうから大丈夫だよ」

「お、おう……」


 あ、あれ? バカにされてる?

 睨みをきかせていたやつから出る声じゃない。

 まるで、小さい子に語りかけるような感じ。


「と、言うわけで祐」

「なんだ?」


 今度は改まった口調になった。

 忙しいやつだな。


「振って良かったの?」

「あぁ~、その話ね。良かったもなにも相手のこと好きじゃないし」

「ふーん」


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