第ニ章第三話ー5
俺がフランクフルトをゲットしたのを見るや否や高田先輩が出口へ歩き始めた。
慌ててその背中を追いかける。
もう、自分さえよければいいのかよ。
そう文句を心中で吐きながら、廊下へ出る。
うわ、凄い人。
一般公開もしてるから見知らぬ制服を着た若い男女がいっぱいだ。
「フランクフルト正解かもね」
周りを見渡していたら、高田先輩がそう言った。
ずいぶん染々としたトーンだな。
「夏祭りの屋台系は外れないですから」
「そうだよね。それに比べてウチは劇だから」
「劇良いじゃないですか」
それはそれで需要あると思う。
フランクフルト屋よりは劣るかもしれないけど。
「大変だったんだよ······。ヒロイン役だったから」
「お、ヒロイン役だったんですね。それは確かに台詞覚えるの大変かもですね」
「う、うん」
「······?」
反応鈍いな。
おかしなこと言ったか、俺。
「······」
高田先輩の表情を見るに、なにかを言ってしまったのかもしれない。
浮かない顔をしている。
「さ、さて、次お化け屋敷行こうっ」
「いいですよ」
☆☆☆
「「······」」
というわけで、お化け屋敷前。
に来たは良いが、いっこうに足を動かそうとしない高田先輩。
「どうしたんですか?」
「やっぱり入るの止めとこうかな」
「え?」
ここまで来てそれはないでしょ。
思わずタメ語になっちゃったよ。
「なんかリアルすぎじゃない?」
「確かに想像していたより本格的だと思います」
どうやら怖じ気づいてしまったらしい。
心なしかさっきより距離が近い。
手と手がぶつかるほどだ。
「やっぱそうだよね」
「俺はどっちでもいいですよ」
「······よし、入ろう!」
「分かりました」
考えがコロコロ変わる人だな。まぁ、いつものことだけど。
高田先輩の気分が変わらない内に屋敷内に入ることにした。
「雰囲気ありますね」
「う、うん」
高校生が作ったとは思えないほど怖そうな内装。
三年生ともなるとやることが違うわ。
「そう言えば、お化け屋敷入るの高校生になってから初めてです」
「そうなんだ」
「高田先輩はいつぶりですか?」
「しょ、小学校。ねぇ、祐君。手繋いで」
「いいですよ」
「あ、ありがとう」
ご要望通り手を握る。
高田先輩最後の文化祭だからな。今日は特別である。
「手冷たいですね」
「葉瑠冷え症なの」
「ああーーーー!!」
「······っ······!」
「······っ」
びっくりした! オバケが現れ、抱きつかれた。
先輩はオバケに驚いたんだろうけど、俺は先輩が抱きついてきたことに驚いたわっ。
正直高田先輩が円芭だったら良かったな。
「ひ、祐君。怖くないの?」
「怖いって言うよりびっくりですね」
「びっくり?」
「いや、人間がオバケやってるって分かってるので、怖く思えないです」
「祐君、それを言ったらお終いじゃんっ」
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