第ニ章第三話ー4
「円芭も奢ってやるよ」
「べ、別に私はいい」
なんだよ、欲しかったんじゃないのかよ。
言い方からして欲しそうな感じだったのに。
「そろそろ行こうか」
「う、うん」
「それじゃ、祐君。家でね」
「じゃあな」
俺からフランクフルトを受け取り、もうこの店には用がないとばかりに、妃奈子は出口へ歩き出した。
その後を円芭が追う。ということはである。
例の方が近寄ってくるに違いない。
「練本君」
ほら来た。
どうせまた“どっちが彼女?”と聞いてくるんだ。
「そろそろ交代だから上がっていいよ」
「さ、サンキュ」
あれ? 聞いてこなかった。
いや、別に聞いて欲しいわけじゃないけどさ。
ここは、ありがたく上がりましょうかね。
☆☆☆
宮城先輩に伝言を依頼した通り高田先輩と自由時間を共にすることにした。
「ありがとう、祐君」
「いえいえ」
「早速だけど行こうか」
「そうですね」
「祐君のところ行きたいっ」
「え、それはちょっと······」
この人円芭がいること分かって言ってるのかな。
「優莉愛はいいのに、葉瑠はダメなの?」
「······分かりました。行きましょう」
その件を出されたら断れないわ。
円芭となにがあっても知らないけど。
「わーい!」
ホントこの人喜び方が犬っぽいな。
見えない尻尾が見えてしまいそうだ。
「······」
いざ我がクラスに入ると、しらけた視線を寄こす円芭がいた。
ほら、絶対これ円芭と高田先輩口げんかになるやつだよ。
「一本ください」
「百円になります」
「はーい」
まさかの普通に会話してる!
もっともこの二人は、距離を縮めて欲しくないのにっ。
取り乱してるのをバレないように俺も注文しよう。
「俺は引換券で」
「······分かった」
と言って、円芭はクーラーボックスから出したフランクフルトを――って
「これ生ですけど」
「ごめん、間違えた」
「お、おう」
どんな間違いだよっ。
「高田先輩焼けました」
「ありがとっ」
「いえいえ」
ホント鳥肌もんだわ。あ、あれか。
行事のときは、無礼講的なやつ。
だとしたら、是非ともやめて欲しい。
「こっち焼けたよ?」
ついにクラスメイト(女)の知り合いがいる最中に話しかけてきた!
まぁ、俺にじゃないけど。
······。············ちょっと待て。
なんでこの人まだ店番してんの?
「それもらう」
「りょーかい」
「祐、焼けた」
「さ、サンキュ」
これは酷い······。
新手のバケツリレーかよ。
円芭からフランクフルトを受け取る。
「それじゃ、そろそろ行こうか」
「え、わ、分かりました」
ケチャップはいいかっ。
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