第ニ章第ニ話ー8

「美味しっ。祐も食べなよ」


 持っていたスプーンを引ったくられた。

 生クリームをすくって、俺の口元に近づけてくる。

 おいおい、マジかよ……。

 断ったら分かるだろうなという目線を送ってくる円芭に、なにを言っても無駄である。


「……はむ」


 差し出されたスプーンをくわえ、そこに乗っていた生クリームを味わう。


「お、確かに美味しいなっ」

「でしょ?」

「ああ」


 嘘だ。生クリームに驚くほどの美味しさはない。


「……」


 にしても、でかいパフェだな。

 これで千円しないんだからびっくりしてしまう。


「ねぇ、スプーン持ってて」

「お、おう。ごめん」

「もう……。すぐ反応してよ。あと、残り食べていいから」

「アイディア浮かんだのか?」

「そう」


 と、短く相づちを打ち、円芭は無言になった。

 あと食べていいって言ったって、ほとんど残ってるんですけど。

 つか、さっきたらふく高田先輩宅で食べたあとってこと分かってるのかな。

 ……いやまぁ、食べますけどね。残すのは店の人に失礼だし。

 あと、お金払ってるし。

 フルーツから食うか。スプーンでキウイをすくい、口に運ぶ。

 このつぶつぶと、少しついたホイップがたまらないっ。


「……·っ」


 ちょい待ち。

 このスプーン円芭もつかっ――間接キスじゃん!

 ……? あれ、さっきもしたか?


「……」


 良かった……。

 メモ用紙に書くのに夢中で、円芭は間接キスが発生したことに気づいてないようだ。

 このまましらを切ろう。

 顔が火照ってるから頬赤くなってるだろうし、バレない方がこっちとしては好都合だ

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