第一章第七話ー3

「そ、そうですか」

「一緒に見よっ」

「……分かりました」


 どうせ断ったところで、丸め込まれてしまうだろうから肯定しておいた。

 左耳用のイヤホンを受け取り、高田先輩にマウスとキーボードを受け渡す。

 ポンポンと手慣れた動作でホラー専門サイトへパソコンの画面を持ってきた。


 はぁ……。嫌だな。

 ホラー実は苦手。

 つか、得意な人なんてほとんどいないだろ。


「っ!」


 びっくりした~。

 映像が動き出した途端心霊映像とか止めてほしい。

 ビクッてなっちゃったよっ。


 ……ちょっと待て。

 俺でこれということは。


「怖い、怖いねっ」


 やっぱりかー!

 くっついてきたっ。

 さては、これが目的だったな。


「キャッ」


 悲鳴をあげるの遅すぎだろ。

 あと、いくらクーラーついてても人の体温というのは熱い。


「高田先輩、暑いです」

「だってだって、怖かったじゃん!」

「そうでしたけど」

「だから、祐君パワーでいやさ――プラマイゼロにしたの」

「どういう意味ですか」

「え、そのままの意味だよ?」


 いや、さも当然のように言われても。


 ガタッ!


「ちょ、何してるんですか!」


 ギャー!

 気づいてほしくない人にバレたっ。

 荒々しく席を立ち、大声をあげる円芭。


 つか、気づくの遅い!

 矛盾してるけど、早く気づいてくれれば抱きつかれずに済んだ。


「不可抗力だよ、円ちゃん」

「だったら、すぐ離れてくださいっ」

「ヤダ」

「た、高田先輩。離れてください」

「祐君から言われたらしょうがない」


 そう言って、高田先輩は俺から離れていった。

 まるで、ゲリラ豪雨みたいな人だな。

 去り行く先輩を見送り、激おこな幼なじみに目を向ける。


「……」

「……」


 親指をドアの方へ立てる。

 外へ出ろということらしい。

 指示された通り部室を出ると、円芭もついてきた。

 まずは、とりあえず謝罪をしよう。


「すまん」

「……」


 はい、シカトいただきましたっ。

 俺は諦めないぜ。


「すいませんでした」

「じゃあ、クレープ」

「え、クレープ?」

「おごれ」

「はい」


 反論の余地はまったくない。

 というわけで、あっという間に部活が終わり放課後。

 クレープ屋のある毎度お馴染みなデパート二階。

 円芭の好みのクレープを購入し、フードコート内のイスに腰を下ろす。


「疑似恋愛やるから」

「こ、ここでっ」

「そう」

「マジで……」


 超公衆の面前なんですけど。

 まぁ、俺が思うほど誰もこっちを見てる人はいないと思うけどな。


「へぇ……」

「な、なんだよ」

「高田先輩には拒まないくせに私には断るんだ~」

「分かりました。やりましょう!」

「じゃあ、私のクレープ食べて」

「お、おう」


 間接キスきたー!

 受け取ったクレープを一口食べる。

 うーん、甘い!

 これは多分、円芭が口つけたところというのも甘さをプラスさせてるねっ。


「……」

「……」


 凄い顔真っ赤ですけど。


「と、というわけで、解散っ」

「えーーーー!!」


 俺の叫び声がフードコートに木霊した。

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