に。



「では、今日のお昼はオムライスに決定! ところでオムライスってどういう……」

「見て見て! 変なのがいるよ?」


 恒例のジャンケン大会が終わってメニューの発表となったその時、一人の夢想童子が北の方角を指で示した。

 何事かとみんながそちらを見る。変身していない者は変身する。夢想童子の姿になっていれば、視力も劇的に強化されるのだ。


 隅田川の川面に、二人の人影が“立って”いる。一人は白い法衣に身を包んだ女の子、もう一人は大身槍を手にしたちびっ子鎧武者である。二人の足下には不自然な波が立ち、何か巨大なモノが水中を移動していることは一目瞭然だった。


「夢想童子?」

「子供の国に入りに来たのかな」

「我の新たな信者というわけじゃな!」


 新しい仲間が来たと子供たちが騒ぎ出す。一方で、険しい表情をした者が数名。

 疑り深い者、観察力に優れた者、勘が鋭い者。


「ねぇ、あの子たちどこかで見たことがあるような気がしない?」

「……なんか嫌な感じがする。ありゃ仲良くなろうって顔じゃねえな」


 と。


 川面が盛り上がり、水中に姿を隠していたものがゆっくりと浮上していく。数十メートルはあろうかという巨大ロボットだ。胸部にでっかい獅子の顔、頭部には立派な二本角。法衣の女の子と鎧武者の男の子は、この角の上に立っていたらしい。


『天! 空! 勇! 者! ギャオ、キィーングッ!』


 名乗りを上げてポージング。その全身から雷光がほとばしり、角の上の二人がちょっと慌てていた。


「うわあああっ……な、なんじゃあれは!?」

「ロボットだ!」

「知ってる! あれ、虹色童子隊のロボットだよ!?」


 子供たちが口々に叫ぶ。巨大ロボは隅田川上でホバリングすると、右腕をズシッと前に構え、左手をそこに添えた。


『ナックルバズーカァ!』


 街を震わす轟音、激震! 右腕の肘から先が撃ち出され、大気を切り裂きながらスカイツリーをかすめていった。


「「わあああっ……!?」」


 攻撃された! その事実に、その衝撃に、子供たちが慌てふためく。


『出て来い、悪者たちめ! 天空勇者ギャオキングが、お前たちの野望を砕いてやる!』


 どうやってか戻ってきたのかそれともまた生えたのか、スカイツリーに右手の人差指を突きつけて、ギャオキングが宣戦布告する。ちなみに声は女の子のものだった。


「どどっ、ど、どうしよう!?」

「なんにも悪いことしてないのに、どうして悪者っていうの!」

「そうじゃ! 神である我に対してなんたる侮辱! 許さんぞ大きいヤツ!」

「帰れ! あっち行け~!」

『出て来ないのか、弱虫め! それならもう一回ナックルバズーカをお見舞いするぞ!』


 再び鉄拳の発射態勢を取るギャオキング。さっきは外れたけど、今度は当たるかもしれない。子供たちが困惑して顔を見合わせる。夢想童子を相手に戦うなんて、考えたこともなかった者も少なからずいるのだ。


「戦うぞ」


 静かに、しかしはっきりと、ナゴミが決断する。


「あたしたちはみんなで幸せになるために、子供の国を作ったんだ。邪魔するヤツは許さない。子供の国を壊そうとするなら、大人でも夢想童子でもブッ潰してやる」

「……うむ。そうじゃの、子供の国を守る神として手を貸してやらんでもない」

「王様も大臣も戦うの?」

「う~ん、どうしよう……」

「オレ、やるよ! 子供の国が無くなったら困る子が、きっとまだたくさんいるもん!」

「……それなら、ぼくも!」

「アタシも!」

「良し! みんなで力を合わせて、悪い夢想童子を追い返してオムライスを食べよう!」

「「おお~っ!」」


 子供の国の夢想童子が、次々に飛び立っていく。ナゴミがそれを見送るだけで追いかけようとしないのを、姫佳璃は不思議そうに見詰めていた。

「ナゴミは行かぬのか?」

「あたしが子供の国を壊すなら、もっと夢想童子の仲間を増やしてからにする。どうしてあの人数で来たんだろう。なんか変だ」

「……? どういうことじゃ?」

「多分なんかズルイことするつもりなんだ。昔、そういうことしてくる青い服のヤツらに追いかけられたことがある。逃げられたって思ったら前にいたり、何もしないって言って捕まえようとしたり……大変だった」


 言葉の意味が分からず虚空を睨み、やがて姫佳璃は鷹揚に頷いた。神である自分が分からないことなどないはずなので、そういう時は分かったと思っておくのが当然なのだ。


「良かろう、ならばあの者らは我に任せるが良い。その方はここに控えておれ」

「ん。分かった」


 小さく頷くナゴミに軽く手を振り、姫佳璃はスカイツリーを飛び立っていった。





「あの大きいのは任せて!」


 変身しないまま飛び出した男の子がブレスレッドを掲げる。放たれた眩い閃光が彼の体を包み、膨らみ、巨大化し、ギャオキングに引けを取らない巨人となって完成する。


『ゴアッ!』


 神秘の世界から僕らのためにやってきた、伝説超人リュウトラマンである。名前の示す通り竜と虎の力を持ち、悪の伝説魔獣たちを倒す(という設定)のだ!


『ゴカァ!』


 必殺雷光蹴りが炸裂! ギャオキングの鋼の巨体が隅田川に沈む。護岸が崩れて、沿岸の道路が水浸しになり、ズズンと鈍い音と共に大地が震えた。


『そのくらいでギャオキングがやられるもんかーっ!』


 目から破壊光線を放って巨大ロボが反撃。不意を打たれて尻餅をつくリュウトラマン。アスファルトの路面がボゴッとへこみ、その衝撃で下水が破断し、周囲の家々の窓ガラスがパリパリと割れまくった。


『ゴォア!』

『ギャオキ~ング、GO!』


 起き上がった二大巨人が激突する。大地が砕けて建物が崩れて街が壊れていく。歩いて動くだけでとにかく迷惑な二人である。お前らいったい何しに出て来た。


 そのギャオキングの角に乗っていた女の子と男の子は、ギャオキングがリュウトラマンに蹴り倒された瞬間ふわりと跳躍していた。女の子がさっと手を振ると、二人の着地点である隅田川の川面に無数の蓮が咲いていく。

 その蓮の葉の上に降り立つと、二人は迫る子供の国の夢想童子たちを睨み据えた。


「……二十二人。一人で三人くらいを相手にすることになりますか」

「大丈夫! しょうお姉ちゃんはボクが守るよ」


 大身槍を肩に担いでウインクする。本人は最高に決まったと思っていたが、残念ながら女の子――しょうは全然見ていなかった。


 この少年、高橋しょうという名である。先祖に凄い侍がいたと聞かされて憧れて憧れて憧れまくり、夢想玩具を手にして自身がイメージするその侍の姿に変身できるようになった。

 以後、その力であちこちの城の天守閣へと勝手に登り、「日本の全部のお城に登ったら天下統一!」と自分ルールを設定して遊んでいた。で、話を聞いてやってきたしょうにそれはもうコテンパンにやられたのだった。


 年上とはいえ、女の子に負けるなんて! と、こっそり泣きそうになっていたところ、しょうに優しく手を握られて、「もう悪戯いたずらをしてはダメですよ?」と諭されて、なんて綺麗なお姉さんだろうとか本物の仏様みたいだとか……まぁ、要するに初恋だった。


 夢想童子の特集番組でしょうの出ているところだけ見ていたり、結婚したらどちらの名前もタカハシショウになっちゃうなぁど~しよ~と布団の中で夢想したりするくらいには好きである。だがしょうには結婚したい(笑)と願うほど好きなお相手がいることは知らない。

 仏教においては、これを求不得苦ぐふとくくと呼ぶ。まったくもって諸行は無常である。


「行くぞ、みんな! ここがボクたちの岩屋城、しょうお姉ちゃんに指一本触れさせるな!」

「「オオオオオオオオオオオオオ!」」


 どこからともなく現れる、総勢七百六十三体の武者人形。鎧の下は藁人形で、顔にへのへのもへじと書かれた紙が貼りついている。しかしその外見のお手軽さに反して、全員が翔に魂までも捧げる最強のもののふたち(という設定)なのだ!


「撃てぇえーッ!」


 武者人形たちによる一斉射撃! 火縄銃の構造なんて知らないのでマシンガンみたいに連射式だったりビームを撃ったりしているが気にしてはいけない。

 先制攻撃を食らった子供の国側の夢想童子たちが一瞬怯み、しかしすぐ反撃に転ずる。銃弾爆弾誘導弾、矢とビームと攻撃魔法と、さらには瓦礫に謎の召喚獣に紙飛行機まで、とにかくいろいろ飛んできた。


「権現! 金剛力士!」


 しょうの呼び出した仁王の一睨みで、その全てが弾き返される。武者人形たちによる牽制と堅牢無比な金剛力士の防御結界を駆使して、じわりじわりと隅田川を下っていった。


 飛び道具では分が悪いと見てか、子供の国の夢想童子たちが一気に距離を詰めて来る。予想通りではあるが、思っていたより動きが速い。


 金剛力士は“仏敵が門から侵入することを防ぐ”存在であるため、門以外……この場合は横や背後からの攻撃は防げない。これだけの数に回り込まれると非常に危険だ。

 ついに五人の夢想童子たちが、しょうと翔の前に肉薄する。


「チャイルドレッド!」

「チャイルドレッド!」

「チャイルドレッド!」

「チャイルドブルー!」

「チャイルドピンク!」

「「五人そろって! 子供の国の守護戦隊、チャイルドレンジャー!」」


 ポージングと共に背後で爆発。次の瞬間、赤い強化服を着た三人が仲違いを始めた。


「だからレッドはボクだって言ってるだろおおお!?」

「オレの方が似合う! お前はグリーンでもやってればいいんだ!」

「僕が一番上手くレッドをやれるんだああああ!」

「あ、あのさ~。戦ってるところだし、程々にしようよゥ。ね?」

「「うるせえデブ! お前なんかイエローがお似合いだ!」」

「ケンカするなあああ! どーして男子ってこんなのばっかりなのよおおおお!?」

しょうお姉ちゃんに近づくな! 行くぞ、武者人形!」


 武者人形たちの一隊を引き連れて、大身槍を振るって翔が突撃。チャイルドレンジャーとの白兵戦を開始する。残った武者人形たちが自主判断で射撃を続けるが、数が減った分だけ弾幕も薄くなる。続々と新手の夢想童子が接近してきた。


 さすがにいったん退がろうとしょうが身構えたその瞬間、網膜を灼く閃光と身も竦む轟音が鳴り響く。水平に走る雷が迫る夢想童子たちを薙ぎ払い、黒い巨塊がしょうの視界を遮った。


「ガォオアアッ!」

「うわ! 何これ、ゾウ!? クジラ!?」

「ク、クマだ! すごく大きい!」


 ちょっとした一軒家ほどのサイズの大きな大きな熊である。吼えて唸って夢想童子たちを威嚇するその背には、巨獣を馬の如く御す少年と彼に寄り添う女の子の姿があった。


「白沢くん!」

「悪い、遅れた。恋歌が迷子になっちゃってさ」


 巨熊の上の男の子が手短に謝罪してくる。和服に似た装束、腰に弓と宝刀、背に矢筒。アイヌの伝説に謳われる少年神、アイヌラックルの出で立ちである。目に力があり、挙動には元気と活力が溢れていて、幼いながらも精悍さを感じさせる風貌の持ち主だった。


しょうお姉ちゃ~ん」


 着物姿の女の子が、熊の背の上からヒラリと舞い降りる。駆け寄ってしょうの手をギュッと握って、嬉しくて仕方が無いとばかりに飛び跳ねながら報告してきた。


「あんねあんね、すごくおっきいワンちゃんがいたん! モフモフさせてもらってん」

「それが遅刻の原因ですか……」


 白沢大吾と石原いしはら恋歌れんか。二人とも虹色童子隊の一員で、しょうの戦友である。大吾が九歳、恋歌が四歳で、仲間内では最年長と最年少。長男で下は妹ばかりという大吾は年下の子の扱いに慣れており、一人で行動するには幼すぎる恋歌の面倒を見ることが多かった。

 しょうの近くに飛び降りつつ、大吾が子供の国の夢想童子たちへと巨熊を突撃させる。


「突っ込めキムンカムイ! ……他のみんなは?」

「まだ来てません。十時になったら攻撃開始の約束なのに」

「あっちゃんたち遅刻してるん? いけない子やねぇ」

「いや、あのな恋歌。オレたちも普通に遅刻してるんだぞ?」


 と。


「カイザァァァキィィィィィック!」


 駆け抜ける一陣の風。天空から斜めに突き立ったそれが地を削り砕きながら突き進み、巨熊と戦っていた子供の国の夢想童子たちを(巨熊ごと)まとめて吹き飛ばした。


 粉塵の中から現れるは、いかにも変身ヒーローといった格好の男の子。かなり大柄で、大吾よりも上背がある。ゆらりと残心の構えを取る姿には、風格さえ漂っていた。


「待たせたな! マスクド・カイザー・テンペスト、風雲切り裂き即刻参上!」

「ああっ!? おい、オレのカムイまで一緒に蹴るな! バチが当たるぞ!?」

「え~? いいじゃん別に、いくらでも呼び出せるんだし」

「こら、猛! 白沢くんも! ケンカなんかしてる場合じゃないでしょ?」


 背後から甲高い声。振り返れば、騎士の姿をした女の子がそこにいた。


「あっちゃんや!」

「……ちょっと恋歌、なんであたしを呼ぶ時に“お姉ちゃん”ってつけないのよ? これでもしょうと同じ三年生なのよ? 誕生日だってあたしの方が――」

「そりゃだって姉ちゃんちっちゃいじゃん。一年生でも姉ちゃんより背が小さい子なんてほとんどいないぜ?」

「うるさい! あたしが背ちっちゃいんじゃない、他のみんなが大きいのよ! 特に猛、弟のくせにあたしの背を抜くな! 食べ過ぎよ、さっきも急いでるのに買い食いして!」

「いやぁ、だっておなか空いちゃって。ご飯食べないと力出ないしさ」

「それが遅刻の原因ですか……」

「お前ら、委員会の人たちに怒られてもオレは知らないからな」


 五十嵐晶と五十嵐猛。かつて東京で暴れていた怪獣型夢想童子を相手に、日本で初めて夢想童子同士の超常決戦を繰り広げた姉弟である。しょう智実アップルが戦った日付も同じではあるのだが、開戦も決着もこの姉弟の怪獣退治の方が早い。


 姉の晶は剣道で、弟の猛は空手。どちらも武道を学んでおり、その経験を活かして日本各地で暴れる夢想童子を征してきた。なお、晶は背が小さいことをコンプレックスにしており、七歳児としては破格の体格を持つ猛はそれに見合う大食漢だったりもする。


「これで全員そろったな! オレと晶と猛は突っ込んで、高橋と一緒に暴れるぞ。天國は後ろで援護、恋歌はその手伝いだ。相手の数がいつもよりずっと多いから気合入れろよ」

「いつもの戦い方ね、オッケー。正義の剣で子供の国なんてぶっ壊してやるんだから!」

「大ちゃん大ちゃん、天音お姉ちゃんはどうするん? あのままでいいん?」


 巨大ヒーローと激戦を繰り広げている巨大ロボを指差して恋歌が問う。興奮しているのか元からそのつもりが無いのか、どちらも街の被害などガン無視である。地を踏み締めるたび路面が砕け、攻撃が炸裂するたびに余波で周囲の建物に亀裂が走る。


 御国みくに天音あまね。学年はしょうより一つ下の小学二年生で、巨大ロボ『天空勇者ギャオキング』を駆る歴戦の夢想童子である。その力で幾人もの暴れる夢想童子を撃退しつつ、同時に被害も拡大してきた。


「放っときましょう。ああやって戦わせる分には、あの子相当強いし」

「僕も姉ちゃんに賛成。天音さんってこっちの言うこと全然聞いてくんないもんね」

「うん……じゃあ、そういうことにしとこうか」

「いいのかなぁ……」


 今回の作戦において、1班はもっとも過酷な任務を与えられている。最悪の場合、七人で二十七人もの夢想童子たちを一度に、かつ長時間抑えなければならないのだ。


 だからこそ、最強の札が用意されていた。


 この七人は、ここ数週間日本のあちこちへと呼び出されては暴れる夢想童子を制圧してきた歴戦の猛者。お互いの能力も、戦法も、性格までも熟知した戦友同士。

 虹色童子隊――その名は飾りでもなければ誇張でもない。彼らは夢想童子としての戦闘経験を、世界でもっとも積んでいる七人なのだ。


「よし、行くぞっ! 後の指示は頼むぞ、名参謀!」

「任せてください、みんなも気をつけて!」

「大ちゃん、気張ってや~」


 叫んで大吾が突撃、晶と猛がそれに続く。武者人形たちと一緒に奮戦していた翔と合流して、押し寄せる子供の国の夢想童子たちと激突する。


「あっちゃん、出過ぎです! 翔くんは少し下がって休んでください!」


 四人に守られつつ、恋歌と一緒に飛び道具で彼らを援護し、状況に応じて指示を出す。

 普段のまとめ役は最年長の大吾だが、戦う時に指揮を振るうのはしょうの役目である。知力だけでなく冷静さも必要な仕事であり、それを一番兼ね備えているのが彼女だったのだ。


(ひーちゃん、絶対に助けてあげます。もう少しだけ待っていてください!)


 怒りと後悔、悲しみと憎悪。自制できないほど燃え盛る心とは裏腹に頭は冴え、意志のまま手足は動く。圧倒的な数の差を、個々の経験と巧みな戦術で補填する。


 短期間で激しい戦闘を繰り返した幼い子供たちは今、戦士として開花を始めていた。



   ○   ○   ○



「白沢さん、ウチの娘がようけ世話になっとります。これはつまらんものですが……」

「千枚漬けですか、これは結構なものをいただきまして……今度燻製を送りますよ」


 隅田川を遡り、ちょっと距離の離れた荒川区。その区役所の一室に、一様に不安そうな顔をした大人たちの姿があった。今回の作戦に参加した夢想童子の家族たちだ。


「行け、猛! そこよ、回し蹴り!」

「いいぞ、晶! 武道の精神を忘れるな!」

「ああ、またわやにしよった! 後で謝るんはウチらじゃぞ、がんぼも大概にせんか!」


 備え付けのテレビを見て盛り上がっている者、ハラハラする者、親同士で交流する者。過ごし方はそれぞれだが、ここにいる全員が真剣に案じていた。


「大丈夫じゃろか。しょうちゃんみたくしっかりした子たちが一緒でも、翔はまだ五歳じゃ」

「信じて待つより他にありますまい。仏説摩訶般若波羅蜜多心経……」


 この作戦の成否を。子供の国の行く末を。何より、己自身より大切な我が子の無事を。


 夢想童子たちによる超常の激闘……働き者のマスコミの手により、スカイツリー周辺のそんな映像が、どこか遠いところの出来事のようにテレビの画面に映されていた。


『ご覧ください! 皆様、ご覧ください! ただいま、史上初の夢想童子同士の集団戦が繰り広げられています! 武装蜂起した子供の国に対して、虹色童子隊、そして夢想玩具規制委員会の呼び掛けに応じて集まった全国の子供たちが力を合わ……ああーっ!? 今、今、水上バスが持ち上げられ、投げ飛ばされましたぁーっ! なんとすさまじい! 墨田区はどうなってしまうのでしょうか!?』

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