第2話 茶道と着物
周囲からの目線を
サンリオにも魔物がいたが、私の目の前にも魔物がいるのだ。まぁ…彼氏だけど。
無事に私達はSTARBUCKS☆COFFEEに到着した。そして、長い行列を無言のまま進み、
何を悩んでるのよ。どうせ抹茶フラペチーノを頼むんでしょ。頼むから早くしてー。さっきから、後ろのカップルの視線が怖いんだって。無言のカップルだが、言いたいことはわかる。
「なぜ、この男は着物なのか?」と。
あ。ちなみに、私達も入店してから無言です。この入店時無言スキルを使い、他人の振りをして助かった場面が何度かある。ただし、店内がそれなりに広くないといけないという縛りがあるが…。
目の前の彼氏がメニュー表への睨みを緩める気配は一向にない。
そういえば以前、
少女漫画であれば、「ごめんっ!!!」と謝り、周りを気にせず強引に
だが、現実はそうはいかなかった。
私が声を
暫くして戻ってきた彼の手には、
無料情報誌タウンワーク、
ワンランク上のお茶として、発売されたばかりの
そして真っ黒いものがあった。
「仕事は見つけた。喉も潤せた。あとは着物だけだ」
着物既に着てるやん。という突っ込みは入れずに私は質問した。
「その黒いの何?」
「このタウンワークって本に書いてたのよ。恥ずかしくないビジネスマンの必須アイテムって。見てこれ、コンビニで売ってた」
それは、ネクタイだった。
コンビニでネクタイ買う奴なんていねぇよ!馬鹿っ!!!とコンビニに行く
死ぬ時に
マイナスな思い出として。
神様。死ぬときに私はこの着物を来た男がコンビニからネクタイを買ってきた場面を見るんですね。
私が何をしたのでしょうか。
ねぇ。神様、答えてよ。
それから私は彼に期待はしなくなった。
それも神様も黙る程に。
もはや私に救いはない。
ふと、横を見ると前に並んでいた子供が目を輝かせ、
「おかあさん!見て。見て。おさむらいさん!」
少し目の前が真っ暗になった。
うん。僕、違うんだよ。こいつは
だが、目の前の子供に、そう思われても仕方ない。
着物=
そんなこと思ってると小声で、その子の母親が「見ないのっ!」と言ってるのが聞こえた。
私は決めた。早く帰ろうと。
私の心は既に折れかけていた。そして、次の出来事で完全に折れた。
店内に声が響き渡った。
「茶を
へっ!?
てか、なにしてんのっ!?
私の彼氏は出来上がったコーヒーが置かれる丸い台のところで、両手をつき、頭を下げていた。
そして、その時。
私は着物ジャーナル9月号"茶道と着物"のある一文を思い出し声に出した。
「お茶が出たら手をついて軽く一礼」
いや、ここですんなあぁ!!!!!
そして、差し出されていたのは今軽く一礼している馬鹿を
うん。もうね。全てが違う。
暫くして、一番奥の
私は一瞬、
「本来なら、あの丸い椅子に正座して礼をするのがベストだったが、あそこまで高いと着物では上がれないな」
「上がるな。あれはコーヒー置くところだって」
「加えて、あの店員。自然と俺の方にメデュウサの顔を向けた。奴はできる」
「はいはい」
「よし。飲んだら次行くよ」
「待て。焦るな。
それ
ふー。昨日、遅くまで仕事して寝不足だったから眠い。そして誕生日なのに全然、心が休まらない。
私はコーヒーで体が少し温まったのもあり、うとうとしていた。
暫くして、遠くから二度目の
「茶を
戻ってきた彼は隣の席の人に、
「お先にいかがですか」と一言伝えた。
茶道の心を忘れない彼に私は、くすっと笑った。
今。AM10:46。
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