恋愛耐性ゼロ

コウダイ

第一章 恋愛嫌いな僕は。

「貴方、私と本気で付き合ってみない?」

彼女はそう言って下を向くと、そっと隣に座った。礼儀正しく折られたスカートから白く透き通った太ももが見える。くっ、僕としたことが不覚にもドキッとしてしまった。

「嫌なら別にいいわよ?」

そうは言うもののその表情は何故か悲しげだった。いつもなら軽く追い払うのだが今日はなぜか胸の奥が苦しくなった。

「本当の恋なんていらないんですよ」

こうして蒼空はまた胸を締め付ける気持ちに嘘を吐いたのだ。



言ってしまえば僕、蒼空は超がつくほどの凡人である。学校の成績は中の中、友達も多くもなく少なくもない。運動が出来ないかと言うとそうでもない。ならば音痴であるかと言われてもそうでもないのだ。出来るわけでもなく出来ないわけでもない。それが織宮蒼空である。

しかし、蒼空にはどうしても好くことの出来ないものがあった。それが恋愛である。蒼空がまだ幼い頃、色恋沙汰が大好きだった母親に振り回されたのがきっかけだったが、蒼空が中学2年になった頃、恋愛を拒絶するのに決定的な出来事が起こったのだ。

それはある日の放課後のことだった。特にやる事のない生徒は教室にのこって友達とだべるのが常であった。蒼空もそんな奴らの1人だった。その日もいつものメンバーでだべっていた蒼空は突然、1人の女子に呼び出されたのだ。正直なところ、この時の蒼空はアホだったので「なんで呼び出されたんだろう?」「何か悪いことでもしたかな?」と、呑気なことを考えていた。しかし一緒にだべっていた友達は違ったようで、ひそひそと何かを囁いていたのはよく覚えている。もちろんその頃のアホな蒼空は何も気にしていなかったのだが。

蒼空は呼び出した女子の待つ屋上に行った。しかしよく良く考えてみると、呼びたした女子はクラスで1番可愛いと評判の子だったのだ。この時蒼空はやっと理解した。蒼空はこの呼び出しが愛の告白であると。それを理解していなかったがためにのこのことやって来てしまったのだと。恋愛をあまり好きでないだけとは言え、この時は凄く嫌そうな顔をしていたことだろう。蒼空は女子の告白に「無理」と即答。しかも嫌そうな顔で。それ以来、一緒にだべっていた友達は蒼空と距離を置くようになり、女子からは白い目を向けられ続けた。ああいうのはやんわりと断るべきなのだろけど、アホな蒼空には分からなかったのだ。理不尽なクラスメイトだなぁと思っていたまである。兎に角、これが恋愛を拒絶する主たる理由であり、蒼空の空気を読む力を強くしようとした原因だ。今では空気を読む達人なんて呼ばれちゃうレベル。


そんな僕に彼女が出来たのは高校2年になったある日のことだった。

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