第7話

 通路を抜け、長い下り階段を抜けた先は、何かの施設だった。

「これは……。研究室のようですね」

 ポコが呟く。この施設が研究室だというのだろうか。

 先を行くハルナに続く。研究室の最奥についた。そこには広場と、いくつかの本棚があった。ハルナが本棚に近づき、中身を確認する。

「あった。これだ。これを頂きにきたんだ」

 ハルナが呟く。それは?

「あぁ、これはな」

「私が説明してあげましょう?」

 ハルナの声に対して、奥からお義母様の声が遮る。全くどいつもこいつも人の話を遮るんだから、とハルナがぼやく。

「ラナン、貴女には失望したわ。まさかそんな通りすがりの女の発言程度で心を取り戻してしまうだなんて。もう少し単純な女だと思って居たのに。まぁいいでしょう。いまさらどうこう言った所でもう貴女はこの屋敷から出て行こうとするんでしょう? でも、その本を持って出て行こうとするのであれば、残念ながらここで殺すしかないわ」

「そんなに、その本は大事なものなのでしょうか?」

「えぇ、そんなに大事なものよ。だって私の生涯二百年の研究に関わる研究レポートなんですもの」

「二百年?」

 思わず変な声が出る。パッと見、私のお義母様は二十代前半の年と言われてもわからない美しい外見をしている。実際は四十歳前後という話を聞いている。その若さの秘訣は健康的な生活だといつか豪語していた気がするのだが。

「健康? 食生活? そんなもので若さが保てたら誰も苦労しないわ、ラナン。そんなもの建前よ。本当は、この二百年、自分で作った体に自分の魂を入れていたの。そう、それがこの二百年、私が研究していた魔法よ。私は人の魂を体から出し入れする魔法を研究をし、それを実際にできる環境を整えたの。永遠の若さを手に入れるために。そしてここ百年は自分で肉体を作る技術も完成させ、この体が老い始める前に新しい体に魂を入れている、というわけ」

「では、ハルナも永遠の若さを手に入れるためにこの研究を盗み出すつもりで?」

 横にいるハルナに尋ねる。

「バカ言え、そんなもんじゃない。どうせあたしは不老不死だ。いかんせん、死神だしな。この世界では死した肉体を毛嫌いする、平たくいうと私みたいな死神の体を毛嫌いする慣習がある。だから、その女が研究していた魔法に目をつけた。その女の魔法を使えば、あたしは肉体を取り替え、穢れのない状態でこの世界をうろつけるからな。そこでこの部屋に入る手段を探していたというさっきの話に繋がる」

「でもこの魔法は世界の秩序を乱すわ。だから私以外に知られてしまうと、大事になり、いずれ禁止されてしまう。神父あたりが黙っていないでしょう? だって本来死ぬはずだった魂を、死ぬことなくこの世に留め続ける技術なんだもの。だから私だけのものにしたいの。そうだわ、そこの死神さん、私のために肉体をくださらない? そうすれば私はこんなにも苦労をせず、不老不死を得られるわ。貴女、それなりにいい体にいい顔をしてるじゃない? それなのに不老不死だなんて、ずるいにもほどがあるわ」

「悪いがこの体はあたしのものだ。お前の玩具として譲る気は毛頭無い」

「そう、それは残念ね。ならば、ここで殺しちゃおうかしら」

 そういうと、お義母様は、何か魔法を唱え始める。

「貴女たちがこちらに向かっていると夫から聞いていたからその間に今の体に変えておいたの。こちらの方が戦いやすくってね」

 そういいつつも彼女の体は少しずつ発火を始める。服ごと燃やす。そのまま、身体が露わになりつつ、こちらに近づいてくる。

「どう? このまま貴女達も燃やし尽くしてあげる」

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