第8話

「ありがとう、ハルナ」

 あたしは気まぐれで来ただけだ。礼をもらうほどのことじゃない。

「十分助かった。俺一人じゃ無理だったよ。そうだ、これ、やるよ」

そういい、彼は刀をあたしによこす。

「もう俺にはいらないからな。魂喰、大事にしてくれよ。お前にはこれから先、必要になると思うんだ」

「たまくらい? 漢字は……。魂に喰らう? すごい読み方だな。ありがとう。貰っておくよ」

「見ていた限りだと普段はそのサイズでハルナがピンチになるか、衝撃波を放つと本来の姿になるようですね。あの姿はかなり美しかったです」

「たしかに。並の刀とは違う存在感があったな」

「ま、そんなわけだ、俺は帰るよ。まさか親父と決別できるとは思ってなかったから嫁さんも喜ぶよ」

「ははっ。そうだな。これでハッピーエンドか?」

「そうですね」

三人で笑う。

 残雪のじゃぁなの一言でそれぞれあるべき場所へ帰る。



 風が、なびいた気がした。

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Re: 錆逝く貴方に託した意志を けねでぃ @kenedyism

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