第7話

 扉の先には一人の老人が待っていた。

「ほう、残雪、それに」

「ただの通りすがりの死神だ。」

「大した自己紹介なことで。なにを血迷い、出来損ないの息子の手助けを」

 きまぐれ、という他ないだろう。

「そうか。全く、余計なことをしてくれて。おかげで息子を殺すとう無駄な仕事が増えてしまったではないか。どう責任をとってくれる」

「申し訳ないが、今のあたしにはお前を殺すことでしか罪を償えそうにないな」

「はっ。とんだ冗談を。貴様ら二人とも儂の贄となれ!」

 そうと爺さんは手に持つ辞書を開き、戦闘体制に入る。辞書から電撃を飛ばす。三人とも別の方向へ避ける。

「残雪は想定できていたが、まさか貴様らも避けるとは。面倒だ」

「羽禁止」

 そういいつつ、爺さんはポコへ針らしきものを投げる。悲鳴をあげ、ポコが墜落する。

「ハルナ!」

 なにやら様子がおかしい。

「させるか。脚禁止!」

 脚が動かない。針で刺すことで行動を制限するのか。厄介な。

「ポコはこっちで保護した。ハルナ!」

「喰らえ!」

 ぐっ。全身を電気が走ったらしい。気づいた時には身体中を電気が蝕んだ後だった。

「息絶えろ!」

 一言放つと、分厚い辞書を頭めがけて落としてくる。

「ハルナ!」

 残雪が刀を投げて辞書の軌道をそらす。軌道はそれたものの、右腕に直撃した辞書はそのまま右腕をえぐりとる。そして足元に刀が落ちる。右腕が無い。これは最大のピンチである。。しかし最大のチャンスでもある。なぜなら……。体に力を入れ、霊力を集中させる。体の周りを烏の羽が舞い、旋風が巻き起こる。残雪、この刀、借りるぞ。刀、どうみても短剣であるが、を取り、構える。

「流石というべきか、呆れたというべきか」

「流石、と言っておかないと後で蹴られますよ」

 あたしの手には何故刀が握られている。

「そういうことか。まったく、最高の舞台に最高の小道具を用意するじゃないか」

 刀を片手に立ち上がる。あたしの霊力に対してこの短剣は反応し、本来の姿を見せたのだろう。たしかに、彼の言う通り、本来の姿は美しい刀だ。さて、爺さんよ。終局だ。この旋風がある今、あたしには針なんざ小細工、効きはしない。霊力を限界まで注ぎ、ぶっ放す!

「くそっ」

 じいさんの前に辞書から出てくる言葉が集まる。護りを固めたつもりらしい。更にその前に辞書を盾に護りを固めたつもりのようだ。そんな小細工、まとめて消しとばしてやる。刀が放った一撃はすべてを消し飛ばし、じいさんにもかなり深く刺さった。しかしなんとか一命は取り留めたようだ。残念ながらチェックメイトだ。じいさんの首に刀を貫かせた。

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