第6話
十数分したあたりで二人が帰ってきた。
「熱くて乗れませんでしたよね。冷えたので来ましたが」
「寧ろ無事で何よりだ。下に落ちたのが不幸中の幸いだったか。少し休憩してあたしも落ち着いたよ。次へ行こうか」
階段を登った先に待っていたのはたいそう大きい壁に挟まれた通路であった。ここを抜けなければ先には進めない、ということだろうか。
「これは流石に参りますね。文字通り要塞の様です」
「さぁ、ここが山場だ。行こう」
「そうだな。行こう」
三人で駆け出す。
最初に現れたのは戦車の大軍だった。ここを生身で通り抜けようとしてるというだけで笑えてくる。砲台から弾が飛んでくる。
「ポコ!」
彼を襲おうとする弾を撃ち落とす。
「そこだ!」
残雪が砲台を破壊する。これでこの戦車はお荷物だ。お荷物の後ろからマシンガンタイプの戦車が二台来る。
「走り抜けるぞ!」
三人で駆け抜ける。
「ポコ!」
「えぇ、大丈夫です!」
ポコを上へ飛ばさせ、安全圏へ誘導する。こちらは下から追いかける形になる。鉛の雨を避けつつ、落としつつ走る。カードを展開しつつ前へ進む。銃口にカードが直撃する。ようやく雨が落ち着いた。
落ち着いた一瞬の隙を見、ポコが奇襲を仕掛ける。遂にもう片方のマシンガンも大破した。
「次だ!」
残雪の掛け声で前を見る。先の疲れを感じさせない声にこちらも鼓舞される。戦車を超えた先にはガトリング砲台が三台待ち構えている。さて、どう突破するか。
「わたしが囮になります!」
ポコが空に躍り出る。空は彼の庭だ。まぁ、大丈夫だろう。空中で鮮やかにスコールを避ける。しばらく見ていたいが、そんなことをしていてはいつやられるかわからない。さっさと破壊するべきだろう。ガトリング砲の下へ走る。一台がこちらに気づき照準を変える。
「あっちは俺に任せろ! ハルナはポコの方に!」
残雪が向きを変え砲台を破壊しにいく。こちらはそのまま砲台へ向かう。金属バットに持ち替え、そのまま砲塔を殴り飛ばし、へし曲げる。砲台の爆破音を確認する。見事に砲台は破壊され、残雪も破壊を終えたところだった。
「これで終わりか? そうやすやす終わるとは思えないんだがな」
残雪が一言漏らす。確かにこれで終わるとは思えないが、しばらく先にはドアが見える。こういう場合、最後の足掻きがあるのが関の山、というものなわけで。最後のガトリング砲が顔をみせる。
「ポコ! あたしの影に入れ!」
「了解。後は任せました」
「お前……。まさか、全弾撃ち落とすつもりか?」
「それ以外にないだろ! わかったならさっさと構えてあのガトリング砲に衝撃波を飛ばす準備をしろ」
彼は刀に霊気を込める。金属バットを戻し、鎌に持ち替え、残雪の前に出る。ここで彼の霊力チャージまでの、そして衝撃波が溜まるまでの時間を稼がなければならない。
迫り来る弾丸を鎌で撃ち落とす! 撃ち落とす! 撃ち落とす! 撃ち落とす! 撃ち落とす! 撃ち落とす! 撃ち落とす! 撃ち落とす! 撃ち落とす! 撃ち落とす! 撃ち落とす! 撃ち落とす! 撃ち落とす! 撃ち落とす! 撃ち落とす! 撃ち落とす!
どれだけ経っただろうか。顔をのぞかせた五つのガトリング砲のすべてが弾切れになったその一瞬を残雪は見逃さなかった。飛び跳ね、衝撃波を放つ。慌てて頭を下げる。頭の上を衝撃波が通り過ぎる。衝撃波はすべてのガトリング砲を吹き飛ばした。ようやく片付いた。これで先に進むことができる。
「無茶苦茶のわりに、うまく行ったな」
「流石ですね。経験から出されるその結論、本当に強くなりましたね」
適当に返事をしつつ、扉を開ける。さて、大きな山も過ぎ、この先はどうなっているのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます