第5話
次の階段を登った先には一人の女性がいた。
一人か。油断ができない。
「さぁ、始めようか」
機械を起動させつつ女性の方から声をかけてくる。剣を構えるということは何かを仕掛けるということだろう。
「大いなる闇よ!」
ポコが咄嗟に闇を展開させ、辺りを暗くする。ものすごい勢い揺れと共に衝撃波が飛んでくるが、ジャンプで避ける。しかし、残雪には避ける手段が無かったのだろう。場外へ吹き飛ばされた。
「ポコ、残雪の救護に回れ!」
「了解!」
「私から視線を逸らすだなんて、じょーちゃん、いい肝の据わり方だね」
「どうも、これでも伊達に戦場を走り回っていない女だからな」
彼女の赤光りする刀の軌道を側転で避け、ローファーの踵で逸らす。また衝撃波が飛んでくる。冷たそうな衝撃波が飛んでくる。しかし先ほどの衝撃波ほどではないか。しかし、一気に刀の赤みが薄くなったのがわかる。威力ではなく、オーバーヒートを早く治すのが目的の技だろう。このままでは埒があかない。相手の火力に押し切られてそのままゲームセットだろう。こういう時に強靱な体が欲しくなる。ダメージ覚悟のインファイトをした場合、こちらの負けが確定してしまう。避けて隙を見つけるしか未来はない。
カードを散らす。ステップを駆使して彼女の攻撃を避けつつもカードを当てようと試みる。
「避けてちゃいつまでたっても勝ちは近づいてきてくれないよ!」
ここで挑発に乗っては負けだ。寧ろそっちこそ挑発ぶちかましてる余裕はあるのだろうか。挑発の隙ができているはずだ。格のわからない相手に無駄に挑発はするもんじゃない。カードの集中砲火を浴びせつつ、ベースを引き抜き、曲を奏でる。カードと交代に遺士達が現れる。彼女へ攻撃を仕掛ける。すると、そこにオーバーヒートの熱を乗せて衝撃波をぶち込んできやがった。あたしは遠くにいたのでベースを構えて機動力が落ちた今でもなんとか避けられたが遺士達はもろに食らっただろう。さて、どうなっているか。
なんと、キュウビは炎を吸収し、リクザメは素で耐え抜いたではないか。炎を吸い込んだキュウビの普段以上に大きい炎が彼女へ襲いかかる。刀で凌いだのはいいが、オーバーヒートにさらに熱が溜まったのではなかろうか。
流石に限界が近かったらしく、リクザメは次の一撃を加えて崩れてしまった。キュウビは余裕ができたようで普段以上に場に出ている。普段ならそろそろ崩れている頃だ。
「どうやら本当に手慣れた戦士だったようだね。まさか一瞬の隙をついてここまでインファイトしてくるだなんて」
「隙を突いて猛攻撃をしかけないと、どうしてもあたし達は勝てないからな。さて、その刀、大丈夫か?」
「もう無理だろうね。ここまでオーバーヒートした刀も見たことねぇ。そちらのキツネちゃんの業火まで食らっちゃ、流石にやばいよ。」
「そうか。ならキュウビよ、熱であの刀を壊せ!」
最後の一仕事を任されたキュウビがもう一発業火を放つ。本人まとめて燃やし尽くす。黒焦げになりつつ彼女は刀を頼りに立っている。
「でもな、この刀はな、極限までくると、すごいんだぜ」
「そうだろうな。爆発の一つや二つで済めばいいが」
「といいつつ、じゃぁなんでオーバーヒートを加速させた?」
「楽しいが正義、だからだ」
そういつつ、あたしはベースを握り直す。実際、この女に一瞬の隙を突かれて回復されたら困るからだが、な。さて、そろそろだろうか。先ほどの熱波を大きく上回る衝撃波が襲いかかる。すぐに障壁を出す曲を奏でる。指が振動でずれないように気をつける。中にいても衝撃の伝わる衝撃波だ。無茶苦茶というかなんというか。あの刀、これほどの力があったのか。なんとか彼女の断末魔を凌いだ。
辺りを見回すと足元以外は黒焦げだった。強烈な一撃だったことが伺える。近くに見える黒焦げの何かがおそらく彼女の末路だろう。来世でまた会おう。
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