第4話
あれから十分ほど歩き続けたが結局何も出てこなかった。最初の部屋以降、警報装置は何度か出くわしたが、ポコがすべて見つかる前に壊したせいで誰にも気づかれることはなかった。警報装置が壊れたことを伝える装置くらい用意しないのだろうか。
「さて、ここまでは茶番と言って差し支えないだろう。ここからが本番、そして俺の家の真の秘密がある。準備はいいかいいか?」
「さっさと行こう。あたしは延々短距離走をしてるだけで準備も消耗もクソもないからな」
「私が片っ端から警報装置を壊してしまっていますからね」
「随分と余裕なことで。ならば行こうか」
今まで以上に重そうな扉が開く。さて、何が出てくるのだろうか。
「ほう、これは……。だいぶ派手なものが出てきましたね」
「そうだな、ポコ。確かにこれは外部に漏らされたら穏やかではなさそうだ」
平和なこの国には似つかない、巨大な要塞が広がっていた。この町の地下にこんな大きな要塞があったとは、面白い秘密を握っているものだ。
「さぁ行こう」
残雪の一言に続く。どうやらさっきまでの茶番は本当に茶番だったようだ。あの程度の警報装置を抜けられなかったならば、たしかにここで手詰まりだろう。
最初の階段を登ったあたし達を待っていたのは三人の兵士の手厚い歓迎だった。
「きたぞ!」
一人が声をあげる。その一言で敵味方含め全ての者が戦闘体制に入る。
ポコが素早く対応し、先制攻撃をしかける。それに合わせて追い打ちをかけようとするが、ガンナーの銃撃があたしの脚をめがけて放たれていた。相当な時間狙いを定めていたようで、食らってしまった。もう一丁取り出し連射の体制に入っている。どうもこのままではあたしは蜂の巣になりそうだ。そうはさせない。鎌を戻し、ベースを引っこ抜く。足を封じられている以上、ここで攻撃を避けるのは得策とは言えない。やはりというか、なんというか、ものすごい勢いで弾が乱射されている。しかしこの障壁を破れるほどの威力ではなさそうだ。全く刺さる気配がない。足の痺れがとれてくる。不意打ちと追い打ちのはずがとんだ誤算だ。やはり先に遠距離技を持っている奴から倒すべきだったか。狙いを定めていようが残念だが、見えている弾を食らうほどあたしものろまではない。撃ってきた弾を予め出しておいた鎌で弾き飛ばす。そのまま接近し、首を跳ね飛ばす。一人目の始末に成功した。さて、あと一人だが、ポコがなんとか時間を稼いでくれたようだ。そこにカードの支援が入る。あたしの入る余地はなさそうである。さぁ、軽いウォーミングアップだ。次に進もう。
階段を登る。次は二人のようだ。ポコは残雪の支援に回る。そうなると、あたしはこの男とタイマン、ということになる。武器は刀。間合の管理は徹底するべきだろう。先制は譲ることにする。間合を離す。すぐに間合を詰められても良いように鎌を構える。上段の構えをとり、こちらに近づいてくる。予想していたよりずっと動きが遅い。そんな重い刀なのだろうか。たしかに、刀は両手剣と言われればそこまでである。隙だらけだったので、背中にめがけてカードを一発お見舞いしてやる。腰に当てたので脚に支障が出るはずだ。それにしても遅い。そこまで重い刀を使う理由は一体なんだ?
気づく。この見た目で刀が重いということは内部に細工がしてあるとしか思えない。その男はこちらに接近しつつ、刀を叩く。妙な音が響く。おそらく機械を起動した音だろう。となるとここからやばい一撃が加えられるのが定石だろう。刀が振り上げられる。なんとか鎌で受け流したものの、先ほどまでとは威力、速度共に段違いだ。しかしこれがその剣の最大火力とは思えない。振り切った刀をすぐに反転させる。流石に穏やかじゃない。次の振り上げは避けるべきだろう。ギリギリまで攻撃を引きつけ、そして避ける。対象を失った刃先は円を描き、床に襲いかかる。爆音が響き床に砂埃が舞う。視界が戻ってきた頃には大きな穴と決着がついたらしいポコ達の姿が見えた。さぁあたしもそろそろ決着をつけないとな。
刀の色が赤くなっている。どうも一発大技を撃つごとに刀に熱が溜まるみたいだな。攻めるなら今か。我武者羅に鎌を奮う。綺麗に捌くがさて、その重さの刀でどこまでついてくるのだろうか。案外すぐにへたれてしまったようで、一瞬の隙をついて首をいただいた。
二人とも始末した後、ふと疑問に思ったことがあるので残雪に声をかける。
「そういえば残雪、お前の短剣もあの大技を撃った後はしばらく剣に熱が溜まったりするのか?」
「俺の刀か? あぁ、熱がたまるよ。更に俺の刀は霊力の補充も必要だ。その分あいつらが使ってる刀より威力も出るがな。」
「刀? 短剣ではなくて?」
「あぁ、こいつは元々刀だ。俺の手元に渡った時には既にこの大きさだったが。お前らは見てないと思うが霊力が補充できた時は元の刀の姿に戻るみたいなんだ」
「あぁ、あたしらが影に引きこもってた時か」
「そんな大それたものだなんて、驚きです」
「あたし達が知らなかっただけで案外すごいことが起こっていたらしいな」
「みたいですね。驚きです」
話しつつ、先へ進む。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます