第3話

 彼が案内してくれたのは裏路地だった。

「ここに何かあるのですか?」

 ポコが疑問に持つのも無理はない。何かあるにしては、あまりに静かだ。

「あぁ、ただの裏路地に見えるだろう? ここのマンホールが……」

 そういいつつ彼はマンホールを鍵を使って開ける。なるほど、よくある話だな。

「さぁ、行こうか」

 残雪がマンホールに飛び込むのであたしたちもそれに続く。

「こういうときにスカートの処理には困るな」

「体術に関して、足技が中心の貴女が何を言うんです」

「まぁな。そろそろスパッツでも履くべきか?」

「履いた方が気まずい雰囲気になることが減るかと思いますよ、私は。ところで残雪、貴方はなにゆえタバコに火をつけないのです?」

「これか? たまたまだよ。火をつける余裕がなかったというか、なんというか。吸っていいなら吸うが」

「別にいいんじゃないでしょうか。ハルナ、どうなんです?」

「あたしは臭いも気にならないし、まぁ勝手にしてくれとしか」

 雑談に花が咲き始めたところではあるが、目の前に見える扉が入り口だろうか。

「そうだな。ここからが俺の家の敷地だ。準備はいいか?」

「あたしはいつでも大丈夫だ」

「私もいつでもいけます」

 残雪の問いかけに返事をする。さて、ここからが本番のようだが。残雪が扉を開ける。彼が通路を駆け抜ける。それに続く。

「早いな。陸上部でもやってたのか?」

最初の部屋というだけあって特に見つかることはなかった。まぁ、時間の問題だろう。

「高校生をしていた間は帰宅部だったよ。もっとも、学年最速の女の座は最後まで譲らなかったがな。今となっては何年前の話かしっかりは覚えてない」

「化物か、お前は。この調子なら順調に強行突破できそうだ」

なんだ? 見つからなければどうということはないだろう。

「まぁそのうちわかる」

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