第8話

 公園でハシブトガラスに襲われていたのはなんと尾羽だった。ハルナが鎌を投げつけて、距離をとらせる。できた間にハルナと私で割り込む。

「尾羽、無事ですか!?」

「ドクトル! お前……。死神と出遭えたんだな」

「えぇ、瀕死の所を拾ってもらえました。話は後です。とりあえず今は逃げてください」

 わかった、と一言だけいうと尾羽は飛んで逃げていく。獲物を逃したハシブトガラスはこちらに牙を剥ける。この牙を見る限り、やはりこの烏は普通ではない。

「お前の力なのか、あたしにも烏同士の会話がわかるようになったよ。今なら烏とも会話ができるかもわからんな」

「今度練習でもしましょう。その必要もないかもしれませんがね」

 貴女はそういうことを努力せずしれっとできてしまいそうだ。さて、戦闘態勢に入る。ハルナが鎌を構える。ハシブトガラスは声なき声の叫びをあげると、仲間が集まりだした。合計3匹。さきほど私の命を奪ったと思われる個体も混じっている。

「さぁポコ、初の戦闘だ。お手並み拝見と行こうか」

 左手に持った逆手持ちの鎌をくるくる回しながらハルナがこちらに声をかけてくる。

「私なりにやれることをやるまでです」

 ハルナから距離をとって飛び、指示を待つ。ハルナの動き方を見ないと私もどう動いていいのかわからないし、そもそも元々頭でっかちな烏なのだ。そんなにできることも多くない。

 ハルナが超高速で接敵する。順手に鎌を持ち替え、薙ぎ払う。すべて避けられてしまう。そこに私が追い打ちをかけようとしたが、こちらも綺麗に避けられてしまう。

「ポコ! お前が牽制を入れてくれ! こっちで本命の攻撃を仕掛ける!」

「わかりました! 空から何かやってみます!」

 高く飛び上がり、ハルナとハシブトガラス達を上から見下ろす。ハルナが鎌をしまい、金属バットに持ち替える。あちらの方が小回りがきくのかもしれない。

ハルナが軽い一撃を一匹目に当てたところを空から襲撃する。

「ハルナ! 今です!」

「あぁ、わかってる!」

 フルスイングをハシブトガラスに当てると、そのままフェンスに直撃し、墜落して、動きを止めた。あと二匹。

 ハルナが金属バットを影しまい、何を取り出すのかと思ったら、次はベースを取り出す。今度は右利きに構える。一体この人は何利きなのだろうか。

 ベースでなにやら音楽を奏でると、公園の地面からいろいろな動物が五匹出てくる。この動物を使役して戦おうといいうのだろうか。彼らの動向も確認しつつ、ハルナの動きも追う。ハルナはどうやら演奏中は動かないらしい。つまりハルナに近づこうとするやつ以外は放っておいていいだろう。そうすると、他の召喚された面々の方だが。

 九尾が一匹、そして鮫が一匹、鳥が一匹、雪女? が一匹。最後のは自信がないが、おそらく他はあっているだろう。一番機敏な動きをするのは雪女、次に鮫が続いて九尾、最後が鳥、といった具合だ。雪女はすでにハシブトガラスに一撃を加えているので、私は見てるだけでもいいかもしれない。

 上空を回りつつ、動物達が戦うっているのを眺める。すると、九尾の方がハシブトガラスの一匹の最後のあがきを受けようとしているところだった。あのままでは危険かもしれない。間に割って入ろうと、飛び込むが、その心配もいらなかったようだ。私が近づいた時には、すでに鳥が割り込み、攻撃を庇っていた。これで気づいたが、どうもこの鳥、動きが鈍いと思ったら全身鎧でできているようだ。つまりこの面々の中では壁役を担っているのだろう。ハシブトガラスの攻撃を受けたところでびくともせず、応援に駆けつけた鮫に殴られて、ハシブトガラスは力尽きた。最後の一匹も雪女が氷漬けにしたらしく、カラスたちは綺麗に全滅していた。ハルナが演奏をやめると同時に動物たちは土に還る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る