第7話

 螺旋階段を登りきった。そのまま入り口の扉を抜け、先ほどまでいた仕立屋まで戻ってきた。ここからポコちゃんは道がわからないらしいので私が案内をする。たしか裏にある小さな扉からこの仕立屋に入ったと、思う。そのことを彼に伝える。扉の前まで向かおうとするが、その時、背後から妙な気配を感じる。確認をすると中央の机に刺さっていた裁断鋏、私を机の上まで導いたそれ、が抜け落ち宙を舞い、こちらに刃を向けていた。

「これは穏やかではなさそうですね」

 ポコちゃんが余裕の表情で呟く。

「しっかり捕まっていてください。全部避けます。大丈夫、ハルナと違って私は全部避けられますから」

 まるでハルナちゃんが鋏に刺されたかのような言い方をしつつポコちゃんはいう。しかし今度は旋風の時以上に揺れるだろう。しっかり捕まり落ちないようにする。

 裁断鋏がこちらにめがけて飛び込んでくる。とても見てから避けられる速度ではないが、そこは彼が烏だからなのか、それとも人外だからなのか、綺麗に避けつつ地面すれすれを高速で飛ぶ。そのままの速度を保ち、垂直に飛び上がる。天井付近まで行くと一回転しつつ高度を保ちつつ滑空をする。最後に地面すれすれまで、まるで狩りをする鷹のごとく飛び込んだ。そのまま地面すれすれを飛び続ける。その途中で裁断鋏は在庫が尽きたらしい。刺さった裁断鋏はしばらく動きそうになかった。

「今のうちに行きましょう。次も被弾しない保証もありませんからね」

 減速しつつポコちゃんは言った。

「そ、そうね」

 こちらは大型のジェットコースターをシートベルト無しで体験したような気分なので、しばらく休憩したかったが、このままぼんやり休んでいてはもう一度体験することになりそうだ。彼の提案に乗り、小さな扉の近くまで進む。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る